第4話「リリムダ炎上!」
最大船速!!
両舷砲戦用意!!
陸戦準備!!
蹂躙せよ!!!
『タリホォォォオ!!!』
「蹂躙、蹂躙、蹂躙!! リリムダの街を蹂躙せよ!!」
『『『
───ずざぁぁぁぁああああ!!!!!
水門を抜け出した装甲艦。
街を貫く大河の両脇には当然リリムダの街がある。
便宜上、西リリムダ、東リリムダと呼ばれているが街の住人は単に住んでいる家を中心に「対岸」などと呼び合っている────うん。
すごく、どうでもいい──。
要するに、装甲艦に備えた両舷の6~7インチ砲も滑空砲も、海兵隊が船内から引っ張り出してきたガトリング砲も──────たっっっっっっっっっっぷりと撃ち放題という事だ!!
この街の人類は全て射程距離。
老若男女、瀕死から胎児にいたるまで。
全て。
全てだ!!
容赦などしない!!
すぅぅ……。
「
ズドン!!!
ズドン、ズドン、ズドン、ズドン!!
ズドンズドンズドンズドンズドンズドン!
ズドドドドドドドドドドドドドン!!!
両舷、砲戦開始ッッ!!
ひゅるるうるるるるるるう………………ぅぅるるる───ドォォン!!
ドォン、ボォン、ドォンズドォォォォオオンン!!!
「ぎゃぁあああ!!」
「な、なんだ? うぎゃああ!!」
「「「ひぎゃぁぁあああ!!」」」
うららかな昼下がり───。
リリムダの街は地獄と化した。
燃え上がる家屋。
吹き飛ばされる人々。
木っ端みじんに消えた大量の資材!!
「あはははははははははははははははは!」
あはははははははははははははははは!!
人類が燃えてるよー!
人類が燃えてるよー!
人類が燃えてるよー♪
「あはははははははははははははははは!」
見ろッ!
街がゴミのようだ!!
「
エミリアが
ズドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!
人類よ、燃えてあれと。
次々に砲撃が放たれる。
「もっと撃って! もっと撃って! もっと、もっと、もっと撃って! もっと!!」
連射!!
連続射撃!!
装甲艦の中では、砲が後座するたびに船内の砲員が駆けずり回り、練達の腕を見せ再装填!
砲撃位置に戻して、即発射!
狙い?
目標?
照準?
知るか。
関係あるか。
全部だ!!
全部が目標だ!!
丁寧に隅々まで余すところなく目標だ!!
この世にいる人類すべてが目標だ!!!!
いや、この世が全て目標だ!!!!!!!
「あはははははははははははははははは!」
街中で爆発音が上がり、全てが燃え堕ちていく。
急速に拡大した街は家々が密集しており、また建築資材も街の至る所にある。
消火しようにも、エミリアの装甲艦が水源たる川を下っていくのだ。
近寄れるはずもない。
そも街の人間には、何が起こっているのかすら知れない。
まさか、魔族がたった一人で乗り込んでくるなんて思わない。
アメリカ軍に攻撃されるなんて思わない!
だから、死ぬ。
愚かにも、呆気なく、なにも知ることもなく───。
そして、装甲艦はノッタリとした速度で川を下り、両舷から討ち放題。
タップリと火薬の詰まった榴弾は着弾と同時に地面にめり込み、家を砕き、人々を押しつぶし、そして信管を炸裂させる。
ドカーーーーーーーーーーーーーン!!!
もう、街は無茶苦茶だ。
魔族を売り買いし、魔族を食い物にし、魔族を滅ぼして肥え太った街。
エミリアの目には、これほど醜悪な街もないだろう。
「
あははははははははははははははははははははははは!!
リリムダの街が燃えていく。
装甲艦の動きに合わせて、街が横に横にと滅びていく。
ああああ、胸がすく思いだ───。
「あ、あそこだ!!」
「か、構えぇぇぇ!」
おや?
反撃かしら?
エミリアの耳を打つ、人間どもの声。
見れば、街を繋ぐ橋の上に武装した自警団ども。
手に手に弓を構えている。
ふむ……?
橋の上で迎え撃とうと言うのか?
っていうか、
「橋───邪魔ねぇ」
ス───。
エミリアは面倒くさそうに橋を指さすと、言った。
「
『
ゴンゴンゴンゴンゴン…………。
装甲艦の前方砲───9インチライフル砲がやや高めに仰角を取る。
「───
ズドォォォオオオオオオオオン!!
両舷の砲とは比べ物にならないくらいの、高威力!!
ひゅるるるるるるる…………るる───。
目に見えるほどの、遅い弾道がデッカイ砲弾を運んでいく──────。
そして、着弾!!!!
「に、逃げ───」
チュドーーーーーーーーーーーーーン!!
街を繋ぐ大きく長い橋───。
それが、たった一発でぶっっっ飛んだ!!
冗談でなく、橋全体がブルリと震え、直撃しなかった橋の上の自警団を振り落とす。
「「「ぎゃぁぁぁあああ!!」」」
そして、振動が収まる前にバラバラ、ガラガラーと橋が崩れ落ちていく。
「あははははははははははははははは!!」
あはははははははははははははははは!!
「
「
エミリアは装甲艦上でクルクルと回る。
空を仰いでクルクルとクルクルと───。
あはははははははははははは!!
あーーーーっはっはっはっは!!
そして、告げる───。
「ほらほら、水の中にいても安心できないわよー……撃ちなさい」
橋から落ちて、辛うじて助かった連中もエミリアは見逃さない。
プカプカ浮いてあわよくばエミリアをやり過ごそうと───。
「見逃さないから、ね?」
………………だって、見逃してくれなかったでしょ?
私達を。
魔族を───。
そして、ダークエルフたちを!!
なら……。
ならば、見逃す道理はない!
城の前に積み上げられた、頭と、
「───等しく死ねッ」
死ねッ!
人類は死ねッ!!
「
ドガン、ドカン!!
仰角低め───俯角を取った滑空砲がたっぷりに榴弾を溺者に向け放たれる。
直撃はしなくとも──────。
ドブゥゥゥゥン……!
くぐもった爆発音が水中で響き、水面がスライムの様に盛り上がった。
その中に真っ赤な泡がたくさん生まれる。
水中の爆発は地上の比ではない程、威力があるのだ。
爆発と水圧で圧死した自警団の生き残りは、ほとんどが死に絶えた。
そこに、
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン!!
スタッカートの様なけたたましい射撃音。
船上に仮設したガトリング砲が、左右の溺者目掛けて撃ちまくる。
そうして、生き残りはガトリング砲が丁寧に仕留めていくのだ。
馬鹿め!!
人類であると理由言うだけで、お前らは死ぬのだ!
それ以上でも、それ以下でもない!!
ただ、死ねッ!
死んで死んで、死んじまえぇぇぇえ!!
エミリアの声なき慟哭。
だれにも聞かれぬまま川の水面に消えていく。
そのまま、エミリアは万遍なく街を滅ぼしながら、川を下った。
途中遭った橋をすべて叩き落とし、都合5本の橋は全部が川に消えた……。
そして、ついに殺戮も終演。
この街が終わりに近づく。
街としても、街を通過という意味でも───……。
そう、
エミリアの視線の先の街はあとわずか。
「き、来たぞ!!」
「固めろ!! 固めろぉぉお!!」
「全員集まれ、はやく!!」
おや?
あれはあれは、なるほどなるほど、これはこれは!
街の南側。
北から入ったなら南は出口。
そして出口の水門を固めるリリムダの皆さま───。
水路に家財を投げ込み、丸太を浮かべて障害としているのだろう。
確かに普通の川船なら、丸太同士が当たれば船体が傷む可能性はある。
普通の船ならね───。
さらに、水門上に弓兵をならべて陸にも多数の兵が詰めている。
ふむ。最終防衛ラインと言ったとこかしら。
「おあいにく様。最終もなにも、もう守るべきものは───もう、そこだけよ!」
そうだ。エミリアが通過した後の街は滅びた。
リリムダは今日をもって壊滅───そして、その門は私にとってタダ邪魔なだけ。
「……いいわ。相手になってあげる」
マントをはためかせ、装甲艦の船上に仁王立ちするエミリア。
ちょうど、9インチ砲も弾切れだと言う。
一度補給させるために召喚を解くか、あるいは開頭して両舷の砲を使う手もあるが───。
……いえ、
この方が私らしい。
すぅぅ、
「───
『
ズザザザン!!
ズザザザザザアアアアアア!!
石炭が内燃機関にくべられ船速が上がる!
ガラガラガラガラ!!
海兵がクランクを回し、水中から鎖がせり上がる。
すると、水面下にあった突撃用のトンガリ───
ザッパァァァ……。
水面下の
ギラリと輝く凶悪な
だが、目標は船じゃない!!
水門だ!!
水量調整用の水門ではないため、リリムダの水門は水に触れるか触れないかの、水面ギリギリの位置にあるのだ。
だから、衝角もそこに当てるため高めに調整。
あとはブチ当てるだけ!!
「く、くるぞ!!!」
「見ろッ!! 船の上に魔族がいる!!」
「奴だ!! 奴が街を焼いたんだ!!」
「「「奴を殺せぇぇええ!!」」」
ギリリリ……。
一斉に引き絞られる弓。
リリムダの全戦力があつまり、凄まじい数の兵だ。
なかにはただの避難民もいるのだろうが、弓を持てば立派な民兵だ。
猟の経験者もいることだろうし、とりあえず弓兵の数だけはやたらと多い。
ふ…………。
私を殺す──────?
ハッ!!
「───やってみろッ!!!」
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