第3話「蹂躙せよ!」

 私が滅ぼす!!!

 人類であるだけという理由で、死に絶えるがいい──!


 タタタタタッ!!


 軽快に駆けるエミリア。

 目指すは半壊した水門───。そして、その上の見張り台だ。


 走りつつ、サッと腰をかがめて門番の装備から片手剣ショートソードを二本拝借すると、そのまま水門の壁を蹴る。


 装甲艦の砲撃と体当たりでひしゃげたそれは足掛かりに十分だ。


 ダンッ!

 ダンッ、ダンッ!!


 蹴り抜かんばかりに踏み込むと、エミリアは跳躍し上へ上へ!!


 傍から見れば垂直の壁を上っているようにも見える。

 そして、あっという間に水門の壁を上り切ると、バサバサバサー!! とマントをはためかせ、瑞々しい肢体を見せつけるが如く空を舞う。


 そして、二手に構えた片手剣のもと、驚愕している門番の眼前に迫り───。


「一回鳴らせば十分だ!」


 一手で未だ激しくカンカンと鳴らす警戒鐘を吊るす紐を断ち切り、さらに一手で門番の喉を掻き切る。

 ビューと血が噴き出す前に、門番の上に鐘が落下し、出血を覆い隠した。


 ガランガラン! と、激しい音共に鐘と一緒に地面に落ちていく門番。


 エミリアはその体を踏み台としてさらに一跳躍。


 

 バサバサバサッッ!!



 蝙蝠がはばたくように、黒いマントを翻し、褐色の肌を太陽のもとに晒して水門の上空に遷移する。


 そのまま、クルンと曲芸の様に体を翻すと、人間たちの街───リリムダが良く見えた。


「いい眺め…………」


 エミリアの視界に映る街。

 その中心をまっすぐに貫き南へ流れていく川の先───。


 それは、川と並行に走る街道と、遥か遠くにみえる人の国の景色。


 あぁ、そこか。

 そこにあるのだな?


 その先に、その道と川の果てに人間どもの都──帝国の首都があるというのだな……!


 バサバサとマントが風を切る。

 

 跳躍の最高点に達した後は、落下するのみ。

 エミリアは無重力と自由落下を楽しみつつ、徐々に遠くに景色を眺めた。


 光景が流れるように下へ下へと下がり、視界は再びリリムダの街。


 そこには、右往左往する人間がウジャウジャといる。


 うふふふふふふふふふふ。


 たくさんいるわね───。


 自警団が、慌てて装備を引っ掴んで事務所に駆け込む。

 ……かと思えば隊列を組んで、右へ左へ───。

 何が起こっているのか、分かっていないのだろう。


 バカな連中。

 何か起こっている……?


「───私が怒っている!!」


 クルリと空中で姿勢を変えたエミリア。

 彼女は最後に街の外の景色を視界に収めた。


 あれは───。


 ほう?

 街の外には帝国軍の駐屯地か───……ふむ、一個中隊もいないな?


 まぁいい。


 ──────……スタンッ!!


 エミリアは全てを視界に収めたあと、水門の半ばに強引に船体を突っ込んでいた装甲艦の上に着地した。


 膝と腰を使って衝撃を逃がすと、血を吸った剣を左右の川に投げ捨てる。



 こんなもの必要ない。



 すぅぅ……。


聞けリッスン! アメリカ軍マイフォース!!」

傾注アテンション!!!


 ガガガン!!


 装甲艦の中から姿を出したアメリカ海兵隊が、船上で不動の姿勢。

私は命令するアイ オーダー──────」


 ザッ!


 一斉に敬礼を受けたエミリアは、もう容赦などしない。


「───市内をランオーバー蹂躙しろッ《 ザ シティ 》! 焼けバーニング破壊しろデストロイ全部殺せぇぇえジェノサァァァイド!」


 人類は敵だ!!!!!


了解アィコピー! 閣下マム!!』


 最大船速!!


 両舷砲戦用意!!


 陸戦準備!!








 蹂躙せよ!!!







『タリホォォォオ!!!』

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