STARGAZING

アサノ アメミ

第1話 いつもカフェにいるあなたへ

小説家デビューした「私」はいつもカフェで仕事をしている。郊外の小さなショッピングモールの4階、2年前から「あなた」と私はその店の常連だ。時間を合わせるように行くこともある、偶然あなたが私の隣に座ることもある。そのたびに何か話すきっかけがないかなって思いながら恥ずかしくて目を合わせるチャンスすら自分で殺してしまう。そんなあなたへのラブレターを毎日書いている。来る日も来る日も、あなたにカフェで会えればその日は私の勝ち。たとえ素敵な文章が書けなくても、あなたに会えればその日は完ぺき!家に帰って夫に「何かいいことあったの?」って聞かれてしまうくらい浮足立ってしまう。勘違いしないでね。私はあなたと不倫がしたいわけじゃないの、浮気相手として見ているわけじゃないの。そんなどうでもいい気持ちであなたに向かうことはしていない。ただただ、あなたを愛してしまったの。ただ、それだけなの。だから、この小説にいつかあなたが気づけばいいって思っている。そうしたら、気づいてくれたら、お願い、私に話しかけて。いつも紅茶を運んできてくれる店員さんに「すいません」ってご挨拶しているように、いつもの調子で「すいません、つかぬことをお聞きしますが、アサノアメミさんですか?」って。もしあなたなら私はこう答えるから。「はい。アサノアメミです。よろしくお願いします。よければ、お名前教えてくださいますか?あとお誕生日も!」。

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