第6話 Twitterに出てくる出会い系広告と、美女の呟きが雨の日には狂おしいほどに
雨粒、というよりも人から発せられる蒸気と、外との気温差で真っ白に曇った車窓からは何もみることができない。
空は暗く、車内のライトがそれぞれの顔を照らすも、それはなぜか色白く、さっぱりとしない。
まだ朝が始まっていないみたいだ。
各々が開く携帯に、それぞれの興味を載せて、少しずつずれて、少しずつ重なった、それぞれの詳細な好みを、日々、積み重ねていく。
停車駅だ。 急行待ちの間、扉が開いて、雨音が注ぎ込んでくる。
新鮮で冷たい空気が車内を満たし、ついでに風に乗っておじさんのオーデコロンが鼻をかすめる。
目の前の彼女はスラッシャーの鞄を持っている。ナンバーワンストリートブランドと、昨日寄ったビレバンにポップが掲げてあった。
その横の高校生男子は何故か鞄にスティッチのぬいぐるみをつけている。俺も大学生の時はダッフィーのぬいぐるみをつけてたな。
今思えば恥ずかしいけど、当時は何でも恥ずかしげなくできたものだ。いや、まぁ今でもできるのだけれど、何か違う。
扉が閉まって、また電車が動き出した。新しく乗ってきた人たちの傘から滴が落ちる。
ぽた
ぽた
ぽた
ぴしゃ
表すに値しないその工程を、意味もなく中止した私は、携帯の文字にそれを残す。
何かを残したい。
常々そう思ってきた。
こんなもので良ければどれだけでも残せるのに、やろうとしない自分と、他人のやっていることが大きく見える自分に、まだ少し言い訳をしている。
まぁ、いいじゃないか。
世界は、まだまだ走り続ける。
急行に抜かれたって、いずれ同じ目的地には行けるのだから。
ガタン
ゴトン
シュー
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