いつの間にかレズ

就活大変

第1話 ひなたとひかげ

朝起きて、カーテンを開ける。朝日が部屋に差し込んできて、気持ちいい。


「今日もがんばりますかぁ〜」


女子校に入り、特に何かがあったわけでもなく、そのまま1年が経った。遅刻をすることも無く、風邪で学校を休んだこともない。


いたって、ごく普通の女子高生。


「今日体育あるのかぁ……」


運動は苦手ではない。むしろ運動神経はかなり良い。しかし、体を動かすことはあまり好きでない。


「今日くらいは、サボろっかな……」


体育の授業をサボることにした。うちの学校は校則とか諸々のことが緩いので、サボる人も多い。


顔を洗い、歯を磨き、無理やり眠気を吹き飛ばす。


肩まで伸ばした少し青みがかった髪を櫛でとかし、制服にきがえる。


「朝ごはんは……いっか」


父は単身赴任、母は仕事柄か、深夜に帰ってきては仮眠をとってまたすぐに家を出る。


基本的にはいつも家に1人なのだ。


「今日バイトか……めんどくさいな」


普段、 特にやることもないのでなんとなくバイトをしているが、お金にあまり執着とかはないので辞めてもいい。


「私このままでいいのかなぁ」


いつもこんな感じでゆるゆるふわふわしている。めんどくさがりなのだ。名が体を表していない。



「到着~からのボイコット〜」


2階の教室を無視し、そのまま3階を駆け上がる。

屋上への扉は鍵がかかっていて、誰も入ることが出来ない。


しかし、扉の前は少しだけ広い空間となっており、居眠りするのに最適なのだ。


「誰もいないよね…」


午前なのに薄暗い雰囲気の場所なので、あまり人も近づかないはずだ。




………誰かいる。


「……………ん」


寝てる?誰だろう……って、あれ、同じクラスの……名前は確か……


「ひかげ……だっけ」


ピクっ…と彼女の体が反応し、閉じていた目蓋があがる。


「あっ………」


彼女は体を起こし、こちらをじっと見つめる。


モデルのように整った顔と身体、スラッとした足。


「おはよう……ございます。あの………綺麗……ですね……」


思わず口に出してしまった。慌てて口をふさぐ。


きょとん、とした顔が愛らしい。


「ひなた………だっけ?」


凛々しくて透き通った声。名前を呼ばれて思わず緊張してしまう。


「名前、知ってたんだ……」


「同じクラスだもん……分かるよ」


彼女はあまり授業に出ない、というより不登校気味だと聞いていたが……


「いつも……ここにいるの?」


「うん。落ち着くんだ」


確かにさっきまで気持ち良さそうに眠っていた。妖精の森のお姫様みたいだった。


「…………一緒に寝る?」


「えっ!?」


不意に言われて驚く。どうやらまだ眠いらしい。

お昼寝……にしてはまだ全然早いけど、なんだかここにいるだけで不思議と寝入ってしまいそうな気がする。


「それじゃあ……寝ようかな」


彼女の隣に横たわり、目を閉じる。なんだか変な気分だ。


「すぅ………すぅ……」


後ろから、吐息が聞こえてくる。寝つきが良いのだろう。



ひかげ……変わった人なんだな……マイペースというか、飄々としているようだ。




春。桜舞い散る暖かい季節。この時から、私とひかげの物語は始まった。





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