第10話 姉と着替え

 二人はタオルを巻き、脱衣所にいた。


「まったく、姉さんがあんなに浸からせるから、のぼせるところだったよ」

「もしのぼせたら、私が流斗を運んであげるわよ」

「それは勘弁してもらいたいな」


 今までのぎこちなさは消え、まるで本当の姉弟のようであった。

 ただ、普通の姉弟と違うところがあるとすれば、


「でも、なんで一緒に出るんだ? 俺が着替えた後に姉さんが出てくればいいだろ」

「私たちは姉弟でしょう? そんなに照れなくてもいいじゃない」


 遥がそのままバスタオルを解き、着替え始める。流斗は慌てて後ろを向いた。

 いくら姉弟になったとはいえ、こればっかりは慣れそうにない。

 背後で遥の衣擦れの音を聞きながら、脱衣所に置いてあった服に手早く着替える。


「この服……一体、誰のだ?」


 着替えた服は上下揃った青いジャージで、なぜか凄く良い匂いがした。


「それ、私のジャージよ。サイズはどう?」


 ジャージのサイズは、ズボンの丈が少し余っていた。

 どうやら彼女のほうが自分より足が長いようだ。


(姉のスタイルが良過ぎる……)


 しかしそれよりも、流斗は遥の発言のほうが気になった。


「えっ? これ姉さんの服なの?」

「そう言ったじゃない」


(どうりで良い匂いがするわけだ)


 流斗は遥の服を着ているということに、なんとも言えない悦楽を覚える。


「それにしても、いくら年下だからって、女の私より背が小さいなんて、流斗は本当に可愛いわね~」

「身長のことは言わないでくれ。最近あんまり伸びなくて気にしてるんだ」

「大丈夫よ。これからこの家でいっぱいご飯を食べて、いっぱい寝れば、そのうちおっきくなるって。うん、私よりもおっきくなる」


「そうかな?」

「まあ、私は流斗が小さいままでもいいけどね。そのほうが、お互いの目が合って気持ちが伝わりやすいでしょ」


 遥が目の前にずいっと近づいてくる。

 互いの目が合い、流斗は気恥ずかしさを感じて、思わず遥から顔を逸らした。


「ふふっ、照れてる~照れてる~」


 こちらの頬を、遥がつんつんと突っついてくる。

 むず痒かったが、遥が楽しそうに笑っているのを見て、流斗の顔も自然とほころんだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あとがき。

 1000PV突破しました。

 ありがとうございます _(._.)_

 カクヨムでPVを伸ばすのはとても難しいのでありがたいことです。

 六年半使っているノーパソが逝きそう……

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