日常短編集
逢内晶(あいうちあき)
AM 8:04
携帯の画面にひびが入った。
目覚まし代わりにアラームを設定していたので、止めるときに寝ぼけて落としたのだ。
AM 8:04
画面には現在時刻が表示されている。
ちょうど「8」を中心にひびが入り、「8」を判別に苦労するものの機能に支障はないらしい。
ショップに行って修理してもらう必要があるだろうけど、今日はあいにくの雨。
私の家からショップまでは徒歩15分かかる。
せっかくの休日に雨の中を往復30分も歩いてまで修理しようという気は起きない。
ま、明日学校で話のネタにはなるか。
ポジティブに考えると、案外どうでもよくなった。
そんなことより、夜更かし後の体は睡眠を求めている。
アラームを1時間後にセットして、再びベッドへもぐりこんだ。
2時間後、私は傘をさしてショップへと歩いていた。
カバンの中には2度も床にたたきつけられ、無残にも画面に無数のヒビが入った携帯が横たわっている。
睡眠不足の気だるさと学習能力のない自分へのやるせなさが相まって足取りは重い。
あれ?
どうしてこんなに眠いのだろう?
原因は昨日の夜更かしだ。
でも、面白いテレビがあったわけではないし、もちろん勉強していたわけでもない。
「ははっ」
思わず声に出して笑ってしまった。
昨日買ったばかりの新しい携帯と格闘していたのだ。
古い携帯はもう使えないけど、捨てるのはもったいなかったのでアラーム用に使うことにしたのだった。
そのことをすっかり忘れてここまで歩いてきてしまった。
ショップはもう目の前。
相変わらず雨は降り続いており、睡眠不足の気だるさもある。
でも、足取りは少しだけ軽くなった気がする。
ここまで来たんだからちょっとブラブラしていこうかな。
ショップに背を向け、足元の水たまりをジャンプして跳び越えた。
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