015:精神寄生生命体と話してみよう。


 はぁぁ、疲れたぁぁ。

 無事帰宅ー。

 普通に4時間くらい歩いた……。

 小さいって大変だね。

 そして良かったー、マイホームが無事で。

 ぺたぺたと歩いて窓の鍵を閉めて、カーテンの上の方を咥えて閉める。

 戸締りは大切。


 テーブルの上に移動して、お腹をくっつけてリラックス。

 はぁ〜、冷たくて気持ちぃ〜。


 …………。


 ……あのー、まだいます?


 《はい、居ます》


 いたよ〜。

 そう、今まで聴こえていたアナウンス。

 あろうことか意志をもって話しかけてきた。

 ファンタジーすぎワロタ。

 もう嫌だ。

 次から次へと訳分からんことが起こる……。


 なんか外に居る時に、このアナウンス君が話しかけてきたのよ。

 大型アップデートがどうたら〜って。

 どんどん説明しようとするもんだから、ちょっと黙れっ! って強めに言っちゃったの。

 そしたらピタッと黙った。


 でも仕方ないでしょ。

 だって外は危ないもん。

 こんな意味不明な声に構ってられない。

 急にモンスターが溢れてきたっぽいし。

 帰り道怖かった〜。

 話しながらのんびり帰れるわけないって。


 …………。

 

 えー、やっぱりまだ居ます?


 《はい、居ます》


 いたよ〜。

 えっと、一安心したし、いろいろ聴いてみようかな。

 んー、どうしよ、そうだなー、じゃあまず───君は何?


 《ワタシは───“精神寄生生命体”という言葉が最も近い生物です。現在、個体名『ユウナ』のアストラル体に“寄生”しています》


 …………。


 …………。


 …………。


「キシシシィィィィイイイイイイイイ!!!」


 ぎゃぁぁぁあああああああああああ!!!

 

 な、何!? 寄生って何!?

 予想外すぎるんですけど!!

 寄生虫みたいなもんだよね!!

 うわぁぁぁああああ!! 

 最悪だぁぁあああ!!

 私の脳を乗っとるつもりだな!!


 《いえ、ワタシにそんな能力はありません。できるのは精神に多少干渉するくらいです》

 

 ……それもそうか。

 できるならとっくにやってそうだし……。

 ぬわー。

 もう嫌や……。

 ファンタジーかと思いきやSFも混じってきた……。

 

 はぁ……とか言いつつ、なんか割とあっさりあきらめついてるというね。

 実害あんま無いし別にいいか〜とか思ってる。

 ほんとタフになったわ。

 こちとらトカゲにされてんだから、今更精神寄生生命体の1匹や2匹で驚かんわっ!

 とか思ってる男前すぎる私。


 ……ちなみに、私から離れる予定って……ある?


 《ありません。既に寄生は完全なものです。ゆえにユウナが死ぬまで離れません》


 ……何そのプロポーズちっくな言葉ぁぁ。

 できれば精神寄生生命体以外に言われたかったぁぁ。

 しれっと呼び捨てにしてくるあたりも、私的にはグッドポイントだわー。

 でも声的には女っぽいけど……女?


 《ワタシに性別はありません》


 へ、へぇー。

 いや、なんとくそうかなとは思ってました、はい。

 あのさ、今まで私に何か言ってたのって君だよね?


 《はい。これまでは寄生作業に重きを置いていたため、送られてきた最低限の情報しか伝えられていませんでした。ですが現在は寄生作業が完了したため、本格的なサポートが可能です》

 

 寄生作業……。

 そういえばアストラル体? ってのに寄生されてるんだよね私。

 全然意味わからんし、そんな感じしないけど。

 ……あ、私が変になっちゃったのって君のせいなの!?


 《変、というのがどのような状態をさす言葉なのか、ユウナの知識の中からでは判断ができません》


 バカにしてんのか!!

 ほらあれだよ。

 私が人間を攻撃したいって思ったり……その、魔物を食べたいって思ったり。


 《そのことでしたか。それでしたら多少イジりました。ワタシは死にたくありませんので》


 なーんだ、君のせいだったんだ〜。

 謎が一つ解けてスッキリ〜……じゃないわ!!

 何やってんのよ!!

 人の心を勝手にイジんなっての!!


 《ユウナに断りなくイジったことは謝罪します》


 謝られたら何も言えなくなるタイプなんですけど……私。

 そのおかげで今生き残れてるってところも絶対あるから……尚更ね。

 

 《今も尚ワタシに絶えず流れ込んでくるこの“不調和の波”、ユウナの持つ“感情”というのはとても興味深く、未だ理解不能な点が多々あります。以前共生関係を築いていた生命体には無かったものなので、ワタシにとって全てが新鮮で面白い。ですが、現在の状況においては障害となる点の方が多かった。特に恐怖や生物を殺めることへの忌避感というものは、ワタシとユウナの生存率を著しく下げる。だから少しだけイジったのです。生き残る為に》


 なんか本当にSFっぽい話になってきた……。

 でもやっぱりそうなのか。

 私が変わっちゃったのは君のせいか。

 まあ、それならそれでいいやーって思っちゃうのも君のせいなのかな。

 ……いや、なんとなくそれは元からな気がする……。

 てか、薄々そうじゃないかなーって思ってたけど……君はエイリアンなの?


 《はい。その言葉が最適だとは言えませんが、ユウナからすればワタシはエイリアンです》


 ふ、ふーん……。

 最初の隕石っぽいのって君だったのかな……。

 いきなりトカゲにされたと思ったら東京がファンタジーになって、魔物が溢れ始めて、つぎはエイリアンね。

 はぁ。

 私の日常一気に変わりすぎ。


 …………。


 そういえば、私をトカゲに変えたのも……君?

 だったらマジでぶん殴りたいんだけど。


 《違います》


 え、違うの?

 てっきりエイリアンにやられたんだと思って、勝手に納得してたよ。

 じゃあ誰だよ黒幕。

 ……あ、そういえばさっき『送られてきた情報』って言ってなかった?


 《はい、言いました》


 誰よそれ。

 誰よ情報送ってきてんの。

 絶対ソイツ黒幕でしょ。

 気になりすぎるわ。


 《…………》


 ……は、え、何?

 話しづらかったりすんの?


 《いえ、それを説明するには少しだけワタシの話をしなくてはなりません》


 まじ? 普通に聴きたいんだけど。

 エイリアンの話なんてめっちゃ楽しそうじゃん。

 それに私聞き上手だから大丈夫。

 友達のクソどうでもいい恋愛相談とか、嫌味かコラ? って思いながらも笑顔を絶やすことなく聞いてきたから。

 ドンッと私に話しなさい!


 《分かりました。では聴いてください。ワタシの以前いた星が滅びたときの話を》


 …………。


 予想の何倍も重い話だったよ。

 

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