たらいまわしの勇者様(笑)
PKT
第一世界
第1話 チェンジで
※作者からの諸注意
この作品は、実在する企業、団体、宗教、国家、州、自治体、近所の知り合いや、ネットゲーム仲間などの実在する人物、あるいはチートやハーレム、俺TUEEEEEEEEE、その他既存の作品とは一切関係ありません。
・・・ありませんったら、ありません(キリッ
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓以下本編↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
俺がこの異世界”マルハジ”へと召喚されてから、早くも二週間が経過した。
毎日、朝早くからギルドの依頼を受け、モンスターのねぐらへと足を運んでは、襲ってくる種々雑多なバケモノやゲテモノを斬り倒し、時には魔法で焼き、凍らせる。
強敵と戦っては、パーティーメンバーと協力してどうにかこれを下し、命を拾ったことに安堵する。
美人のパーティーメンバーと、眺めの良い丘でランチを堪能し、小休止。
その後、日が落ちるまでは王都周囲の集落を哨戒し、街を狙うモンスターの集団を見つけては、これを駆除する。
夜は、やはりパーティーメンバーを連れて酒場へと繰り出し、戦闘面の稚拙さをいじられて赤面したり、突出癖を指摘されては反省したり。
そんな経験を糧にして、自身の血肉としていく。
元の世界にいた頃より、百倍は充実した毎日だった。
今日は、国王から直々の呼び出しを受けている。なんでも、緊急の招集らしい。
謁見の間へと向かう廊下を歩きながら、内容について想像を巡らせる。
勅命をもらって、近隣の村のピンチを救いに行くのだろうか。
近衛の騎士を鼓舞するべく、模擬戦でもさせられるのだろうか。
それとも、いよいよ敵の魔軍が総攻撃を開始してきたなどという凶報だろうか・・・。
いずれにせよ、覚悟は決まっている。
どんな敵だろうと、向かってくるなら、信頼するパーティーメンバーと共に叩き潰すだけのことだ。
はにかみやなギルドの受付嬢や、いつもサービスしてくれる酒場のマスター。
何かと気の利く宿屋の主人に、上手い飯を出してくれる女将さん。
たった二週間だが、守りたい者、守る理由なら充分すぎるほどにできた。
知らず、握りこんでいた拳を開いて、小さく深呼吸。
近衛が謁見の間へと続く、凝った装飾の施された無駄に大きな扉を、左右から二人がかりで開く。
奥に見えるのは、玉座と茶色のカイゼル髭を蓄えた国王、アーレ=ワット=ナンデ5世。
そして、そこへと至るワインレッドの赤絨毯の左には、背を伸ばして屹立するパーティーメンバーの姿。
右には、大臣たちなどの国の屋台骨の他、俺を召喚した神官までいる。
王宮内の主要な役職の人間までがこの場にいる事実に、緊張感がさらに増す。
余程の一大事に違いない。
パーティーメンバーまで呼ばれているという事は、やはり何かしらの勅命が下るのだろうか。
まあ、それを今考えても仕方がない。すぐに答えは示されるのだ。
心の準備なら、とうにできている。
今度は、思いを込めるように、あるいは覚悟を決めるように、意図して拳を強く握る。
赤絨毯を進み、玉座の手前で片膝をついて挨拶を行う。
「国王陛下、不肖ツボミただいま馳せ参じました」
勇者だからと言って、無礼な態度を取るつもりはない。かつては社会人だったのだ、目上への礼儀くらいは心得ている。
国王は、俺の言葉にゆっくりと頷くと、前置きもなく話を切り出した。
彼が、言葉を飾ったり、無駄話をすることを嫌っているのは既に知っている。
召喚された当日の歓迎の席で、本人からそう聞かされていた。
「早速、本題に入るが」
冷汗が、一筋頬を伝う。
膝とともに床につけている拳が、微かに震える。
しかし、目だけは国王から逸らしはしない。
自分なりの覚悟を伝えるためだ。
たとえ、無謀な戦に臨むことになろうと、退くことも、ましてや逃げることもしない。
だから、遠慮なく胸の内を明かしてほしいと。
どんな命令でも下してくれればいいと。
そこに罪悪感や、まして遠慮などは無粋だと。
そう、目線で伝えたかった。
はたして、俺の心が伝わったのか、国王も瞳の中に合った躊躇の欠片を残さず捨て去った。
まったくいつも通りの厳格さで、その一言を紡いだ。
「もうお前いいわ、チェンジで」
・・・・・・・・・・・・はい?
予想外の台詞に、俺の覚悟は一瞬にして崩れ去った。
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