第21話 瑠奈と春奈の帰り道
「でー?実際のところ進先輩と何もなかったの?」
学校帰り、瑠奈と春奈は並んで歩いていた。
「本当になかったよ。それに、ただの通話だし。」
まだ昨日の夜について聞いてくる春奈に少し疲れてくる。
本当の本当に何もなかったのだから。
「ふーん。告白しないの?」
「ぶっ!?」
突然の爆弾につい吹き出してしまう。
「進先輩、まだ学校での評判とかは知らないけれど、少なくとも私たち一年生の間では評価高いよ?」
「───わかってる。」
そう、進は容姿もいいし、運動神経も抜群だし、頭も良い。正直なところ高スペックおばけなのである。
そんな彼が人気がないわけないし、確かに性格はキツいし、怖いこともあるけど、実は優しいところもすごくある。だからこそ彼を狙う女子は何人かはいるだろう。
一年間、離ればなれだった間に盗られなかっただけ奇跡だ。
「私の隣の席の城本さん、進先輩のこと狙ってるよ。」
「えっ!?」
城本さんとは、瑠奈たちのクラスで、瑠奈と春奈のインパクトで薄れていたが、凄い美人で、そして明らかなギャル。
何人の男と遊んできた?って感じ。
すでに彼女の周りには取り巻きもできて一つの派閥を完成させていた。
もちろんルックスの良さと、春奈に彼氏がいて、瑠奈も進先輩と仲が良いとわかった時点で、男子の人気は彼女に向きつつあった。
彼女の性格からして、これ以上の屈辱もないだろうが・・・。
「私の勝手な想像だけど、彼女、先輩ととっとと既成事実作っちゃうかもよ?」
「・・・うん。」
冗談じゃなく有り得る。見た目からの勝手な想像ではあるけれど、彼女はしそう。
「ただ、彼女、あの見た目で入試の点数良かったらしいよ。」
「そうなの!?」
「うん。何でも中学でも成績優秀だったって。」
「それって・・・。」
「私たちと同じ生徒会役員になるかもしれないってこと。ライバルだよ!」
「うっうん!」
春奈の目がメラメラと燃えている。
わ、私だって!
城本 亜依菜、彼女には負けられない!
────────────────────
「あれ?一之瀬さんと軽井沢さん?」
「「!?」」
噂をすればなんとやら。
後ろから一人で追い付いてきたのは
城本 亜依菜その人だった。
「お一人で?」
春奈は後ろを振り返りながら取り巻きがいないのを確認する。
「うん。正直、あんだけ人がいると肩身が狭くって。」
そういう彼女は長い金髪とギャルらしいメイクで綺麗に整えられているが、もとの容姿の良さがよくわかる。
「あっ!ところで、進先輩は一緒じゃないの?」
「っ!」
「あぁ、進先輩は生徒会の仕事で居残りだそうですよ。」
「ふーん。じゃあ私も残っておけば良かったかなぁ。」
瑠奈は押し黙ってしまっている。
「城本さんは、進先輩のこと好きなんですか?」
「っ!?」
春奈が特大の爆弾質問を投げ込む。
「うん好きだよ!」
彼女は何も躊躇うことなく答える。
「ねぇ、私のこと城本さんじゃなくて普通に亜依菜って呼んでよ!」
「え、えぇ。じゃあ私のことも呼び捨てで呼んでください。」
「うん!春奈!」
「───。」
「瑠奈もいい?」
亜依菜が先程から押し黙ってしまっている瑠奈を覗きこむ。亜依菜の方が少し長身
で、覗きこむようにしても少し顔が近い。
「うっうん!よろしくね亜依菜!」
「うん!よろしく瑠奈!」
ここにライバル関係が成立した。
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