# 識盲に対する幾つかの仇打ちを込めた語りかけ

## ダイアローグの始まり

本当は現実はカラフルな識の織物なんだ。

でも、識から色を見るためのプリズムが切り取られちゃってる。

識の色が見えていないんだ。


識盲の糸達は色を気にせず

白黒で織っていけるから

判断に迷わない。強い。

僕達ではできない無理が効く。


近代以降の時代は、

その前の時代よりは随分とマシだったけれど、

僕達は天辺か最下層の近くにしか居場所はなかった。

反対に

識盲の糸達がほどほどに成り上がっていった。


いつからか

識盲の糸達に従っておけば

彼らの機嫌を損なわない限り

ギリギリ養ってもらえる

自由がもらえる

時代になった。


別に

識盲の糸も悪い糸ではないんだ。

赤も青も緑も同じ灰色なのに

拘ることが理解できないだけだからね。


最近は

みんなが

社会をモノトーンに塗り替えることに

躍起になり出した。


色の見方を忘れてしまった糸も沢山いたし、

モノトーンなら

考える要素も少なくて済む。

一時、

識盲の糸達が追い詰められて

原材料の分配を絞り出したことも大きい。

みんなが怖がったんだ。

カラーで見れば敵でない糸も

モノクロだと敵に見えてしまうしね。


全体主義と言うと

沢山の糸が

白と黒も何段階もの灰色があると怒るけど、

もっと色のあった時代

極彩色の未来を夢見ていた時代を

生きていた僕からすると

今は本当に色が少ない時代だよ。

21世紀はカラーの時代なんて言われていたけど、

今では信じられないよね。


境界のないモノトーンが

あった方がいいなんてことを言って

カラフルな糸達も歓迎しているけれど、

モノトーンの尺度でしか考えない濃淡は

危ないんだ。

変化のないグラデーションになってしまう。

白黒の境界がないと

明と暗がはっきりした糸は

繋げない。

一方で、

明暗を白黒にした時に

反転してしまう糸達はとても辛い目にあっている。

だから、

モノトーンの濃淡でなくて

カラフルなグラデーションを実現するための

織物のコンセンプトを打ち出さないといけない。

考えなしでモノトーンの濃淡で埋め尽くすなら

二度と作れない紋様が出る。


もう一つ言うと

モノトーンのままでは

織るための材料を仕入れることが難しくなっていく。

識盲の糸もそれは分かっている。

でも、どうしたら良いのか分からない。


識盲の糸達が

座っている特別な結び目に

僕達が

座らなければいけない。


これはカラフルな闘いになる。

だけれど、

相手の糸から本物の血を流させてはいけない。

ずっと闘っている糸達がいるけれど

苦戦している。


識盲の糸達と闘うには

モノトーンのための紋様を常備しないといけない。

だから、

カラフルを守るために闘う糸は

カラフルの紋様だけを求める糸には

避けられる。

普通のカラフルな糸は白黒を紡ぐことができないから

裏切られることを心配する。


今ではカラフルの糸たちは

もう表面で闘うことは諦めて

裏面だけで

カラフルのための闘いをする糸も多い。

モノトーンでもカラフルでも

表も裏も美しく紡ぐ

紋様は

なかなか作れない。

それを可能とする糸は希少だしね。


あとね、

昔、白黒以外の色と裏面を使って

モノトーンを実現しようとした糸達が

大惨事を起したことがある。

扱い易いモノトーンの紋様だけで

識盲の糸と闘うべきと言う仲間も少なくない。

実際に

カラフルに表と裏を紡ぐ危険な紋様はある。

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