### 解体現場にあったメモ書き

メモは止めてくれ。


これまで通りに

生きたいのなら

今日の話は忘れてくれ。


吸いかけの煙草を

下唇に乗せられる。

僥倖。


このセカイは

現実セカイの何者かに

記述されている。


私達には十分に自由意思がある。

BUT

記述者の理の

範囲内だけ。


このセカイは

あと少しで

彼女と黄昏の魔術師に

裁かれていた。


わが身可愛さで

彼女を

こちらと現実の境に

放逐した。


こちらの飲食物を口にした

彼女は

十中八九

現実で身体を取り戻せない。


元々、

彼女は人間でなかった。

おそらく

黄昏の魔術師も。

神仏の類。


黄昏の魔術師は

現実セカイの

外側の記述者について

インターネット上で

公開を始めている。

こちらからでもアクセス可能。


現実のセカイは

秋に向かっている。

私達も準備をする必要がある。


名子が

身体を取り戻せなかった場合

おそらく、

神仏とされるものの一部に戻る。

人間が何らかの事象に

名前を付けるための

現実セカイの機能として。


思い出せる限りは

書き出した。


一つ試すべき仮説を導いた。


名子の日記を基に

一つのセカイを作れば

そこで

彼女は

人間としての存在を

保ったまま

幸福になれるので

なかろうか?

それは、

このセカイの崩壊を

もたらすのであろうか。


我ながら、上出来だろう。

ウィスキーでも飲んで

少し休むとする。

今日の予定は

全てキャンセルだ。

色々と準備が必要だ。


大切なものない

私にとって

セカイが裁かれるかなど

知ったことでない。


7/20

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