### 必要な性描写として冒頭前戯

ベッドの上で向かい合って

キスをする。

髪が撫でられる。

耳たぶを唇で挟まれる。

頭を撫でられる。

頭が撫で続けられる。


この人は

頭を撫でるのが好きなようだ。

わたしも好きかも知れない。


唇と舌の柔らかい部分を

食むようなキスが

お互いの好みであることも

確認された。


お互いの好きが

一緒のものかを

一つ一つ確かめていく作業が続く。

重なる部分が増えていく。


彼に頭を

撫でられるのが

どんどん

好きになっていく。


お互いの中に

共有するものが増えていく。


お返しに

胸の柔らかい感触で

嬉しくなれるように

首の後ろに手を回して

程よく抱き掴まる。


女と違う

堅い男の体から

伸びた長い腕の先で

嬉しいことが嬉しいことかを

柔らかに

確かめられる。


本当の

お父さんを見つけたようで

このまま

眠ってしまいたくなる。


ドキドキした気持ちの

やり場は

どうしたらいいのだろう。

耳たぶの上を

温もりに濡れた

舌先が

休みなく徘徊するから、

お腹の下も

温かい液体を滲ませ

隙間を埋める物を待っている。


切なく

彼の目の中を視ると、

頭を愛撫していた大きな手が

首筋を下り

肩に少し触れて

背中の真ん中で止まった。

彼は

露な欲求のモーメントで

隙間なく

わたしを

抱きしめる。

これでは

おっぱい自慢の柔らかさが

無意味になる。

触れ合いを堪能するには

少し強過ぎる。


ちょっとだけ

テンポの違うドキドキが

調和に至ると

そんなことは

どうでもよくなった。


頭を撫でてと

彼が言うから

幼な子の相手を

するように

それに応える。

彼は、

満足げな

はにかんだ笑顔を見せて、

指先の盛り上がったところで

開きだした粘膜を守る襞の外側の境界面に

不規則な渦を描いて

わたしの股を濡らす液体の

粘度がどれ程かを

確かめている。


その内に

口内の粘膜が

彼の舌に

弾力性を確かめられ始める。

お返しとばかりに

同じことをすると

二人の舌が絡み合った。

頭の中に

残留する酸素を

奪い尽くし合うように

長いキスをする。

彼の唇と舌への

回答だけを考える。

呼吸の欲求が煩わしい。


彼の指は

内側に移動した後、

手前の辺りに発見された良いところにて

往復を繰り返している。


休めている頭の代わりに

お腹が

好意を表明したがり

適度に体内の成分が配合された粘液を

この時とばかりに

溢れ出させる。


この幸福に

包まれたまま

イッてしまうのは

どれほどの至福であろうか。

目をつぶって

生殖のための内臓の

感覚に

全人格を委ねる。


わたしの唇と唾液を

貪ることを中断した

彼の摂食器官が、

わたしの

両脚の付け根にある

体液を噴出させる肉の

地域から

水分を吸いさらう営みを

始める。


喜び溢れる

性器の前方に

蜜だけで種の生存を成立させる

劣等生物と同系の

愛しき相手を感じて、

想定とは違う

イキ方をしてしまった。

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