第26話私の思いを手紙で

-ベース応募者きたよ 2人

悟くんから連絡が来たのは、昨日の夜。2人とも男の子らしい。どんな子かな、なんて思いながらクラスに向かった。

クラスでは悟くんがベランダから手招きしている。

「1人は隣のクラスの男の子、もう一人は下級生だよ。僕と明日香ちゃんがバンドを組んでいた時のこと知っているみたい。やめとく?」

 その男の子たちは明日香さんたちとバンドをやっていない。新しいバンドを作れるかもしれない。今度こそ、私たちのバンドで。

「昼休みに話してみようよ。仲良くやれるようなら、一緒にやりたいな。それでこれ、明日香さんにも渡すんだけど」

 手紙を悟くんに手渡した。私はメールより手紙のほうが気持ちを伝えやすい。ずとバンドをやりたいこと、いけるところまで挑戦してみたいこと、書き連ねた。バンドを続けるためにはベースも不可欠なことも。

 たまたまクラスに明日香さんが来ていたから、手紙を渡した。

「ラブレターかよ。白い封筒に英字プリントのシール。スマホあんだろうが」

 彼女は茶化してから席で雑誌を読み始めた。まだ私にはよく分からないバンドの雑誌。

 昼休みにベースが決まる。やっとここまできた。始めは1人でメンバーを探していた。明日香さんがドラムをやって、悟くんを紹介してくれた。メンバーの山をこえて、今度はベースが決まる。

 悟くんたちがプロを目指していたように、今度は私もプロを目指したい。おこがましいけど。私なんかがプロになれるわけがないけど。でも高校生活はあと1年はある。それまでに必死で練習すれば、路上ライブを行えばファンもついてCDも出せるかもしれない。全部願望だけど。

 手紙を読んだのか、悟くんと目が合った。微笑みかけてくれて、彼は文庫本を読み始めた。もうすぐ朝のHRが始まる。

 人は考え方が違う。だから、個性がある。どんな関係でバンドができるかは分からないけど、だから出会ったことが思い出になる。

 実は明日香さんとバンドを組もうと思った時は不安だった。授業もあまり出ない、ほとんど話したこともないクラスメイト。でも今は違う。彼女は頭が良くて、人の考えを読むのがうまくて、自分にとげをまとうことで自身を守っている。そんな彼女を、信頼という絆で関係を持ちたい。絆を、悟くんや新メンバーともつなぎたい。そして、まずはクリスマスバンドを成功させる。今のところ2人いるベースの候補者と会うのが、すごく楽しみ。

 HRが始まった。午前中の授業は身が入らないかもしれない。

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