第13話 君の笑顔はショートケーキ

 前に行ったゲーセンの近くに、商業ビルがある。カフェや洋服、楽器屋さんなどが入っていてとても便利だ。楽譜を見ているとレモン・スカッシュの楽譜は3種類。「雨を浴びたら」「君の笑顔はショートケーキ」「大好き!」とある。

「どれがいいと思う?」

「俺は『君の笑顔はショートケーキ』が好きだな。おまえは?」

「僕は『大好き!』がいいな。かわいいよね」

2人の意見を聞いて、まず「君の笑顔はショートケーキ」と「大好き!」を買って練習する。どちらともチャーミングで女の子のかわいらしい思いを詰め込まれている曲。

「じゃあスタバによろうか」

 私はフラペチーノ、明日香さんはアイスソイラテ、そして悟くんがアイスコーヒー。ちなみに明日香さんはケーキも頼んでいた。

「ケーキおいしい?」

「甘い物好きなんだよ。文句あんのか」

「ううん、かわいいな、って思った」

 まだ「さん」づけだけど、明日香さんをからかってみたりできるようになった。ここで悟くんがスマホに入れていたプレイリストで「君の笑顔はショートケーキ」を聞かせてくれた。私と明日香さんが片方ずつイヤホンをつける。

ーかわいい かわいい

ー甘い気持ち

ー君の笑顔はショートケーキ

ー甘い甘い ハートを食べて

「「かわいい」」

 思わず明日香さんとハモる。強面の明日香さんがこの曲を気に入るのが不思議だけど、事実ケーキも食べているから女の子らしいことが好きなのかもしれない。今食べているのはアップルパイ、

「ねえ、ショートケーキも好き?」

「うるせぇ」

 答えないのは照れ隠しだと思った。

「『君の笑顔はショートケーキ』はレモン・スカッシュのデビューから2作目の曲なんだよ。僕が『大好き!』が好きなのは同年代の女の子たちの、ちょっと照れるような思いがつまっているから。デビュー曲だしね」

 レモン・スカッシュ歴の浅い私にとって、悟くんの解説はためになる。私と明日香さんの独断により、最優先で練習するのは「君の笑顔はショートケーキ」だ。私も明日香さんと一緒で、ショートケーキが好きだし、何より曲が気に入った。

「明日までに曲を頭に入れとくよ」

「俺もリズム練習しとくぜ」

「僕はギター新調しようかな」

 そういいながら、それぞれの家に帰っていった。

「また明日」

 みんなでにぎりこぶしを重ねてから。

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