第12話 明日香さんの学力の秘密
「今日のHRは以上!また明日」
先生の言葉を聞いてみんな立ち上がった。部活に出たり遊んだりするのだろう。私と明日香さん、悟くんは楽譜を見に行く予定だ。このメンツにも慣れてきた。
「やっぱ学校はたりーな」
どこからともなくやってきた明日香さん。屋上で寝ていたのだろうか。聞いたところによると、授業の参加率はあまりよくないのに、成績は平均よりいいらしい。効率のいい勉強法を知っているのかな。
「明日香さん勉強ってどうやってるの?」
思い切って聞いてみた。遠慮することがかえって怒らせると分かったから。
「俺は高卒認定試験で全科目とったから、基礎部分はできてんだよ。この学校じゃそれだけじゃ足りねーけどな。妹のこと考えると、素直にいい子ちゃんできねぇんだよ。あいつがいたら、こんな服装にもならないでお前みたいなカッコしてたかもな」
「それは想像つかないな~」
しっかり返事をしてくれて、適当に過ごしているわけじゃないと確信した。妹さんのこと、あまり知らないけどショックだったのだろう。高卒認定試験もよく分からないけど、勉強をしなかったら全科目は難しい。もしかしたら、不真面目になるために真面目にがんばったのかな。そのがんばりがばれないように。不器用な人だ。
先生に書類運びを手伝わされていた悟くんが戻ってきた。
「じゃあ田口先生のとこ行こ!」
3人並んで生物室へ行った。
ガラガラ
「田口先生、部費の回収に来ました。楽譜買います」
「まだやる気だったのか。てっきり人間関係ですぐ廃部だと思っていたぞ」
「わりーな、俺らうまくいってるぜ」
このメンバーでやっていくと伝えていたけど、続くとは思っていなかったみたい。明日香さんがいつもの口調で反論すると、案の定顔を渋くして、
「石川、態度と口調を直しなさい」
態度はそっけなかったけど、ちゃんと予算をくれた。田口先生が部内用に作ってくれた一時資金。これからは自分たちで部費を賄っていく。
「先生ありがとうございます。これからもどうぞよろしく。私たち仲良くやってるんで」
ウィンクを送って、ショッピングモールに向かった。
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