ラジオ

エリー.ファー

ラジオ

 はーい。

 こんにちは。

 私でーす。

 私でーすじゃあ伝わんないか。

 当たり前か、そりゃ。

 はーい、どうもこんにちは、ミカちゃんです。

 どんな人のお耳にも平等に幸せを届けます、みんなのアイドルミカちゃんでーす。

 なんつってー。

 ねぇ、本当に始まりましたよ、このミカチャンネル。

 ねぇ、まさかラジオをする日が来るなんて私思ったこともなかったですよ。だってさ、だってさ、どう考えたってラジオなんかできるような立場じゃないじゃん。

 私。

 一応、アイドルだけど。

 どうよ、そのレベルって。

 相当低かったからね。

 そりゃあさ、今の私はたぶん、日本一っていうか地球一だけど。

 違うじゃない。

 そういう次元じゃないじゃない、このラジオって。

 まぁ、なんていうか愚痴に近いっていうか、もうなんとも言えないんだけどさ。

 こうやって始まっても、お手紙はないわけですよ。私の元には。

 何の話もないし、こうさ、膨らませてくれるリスナーもいないよ、悲しいなぁ。どうにかして盛り上げようと思って、私、こんな企画を用意してきました。

 さてさて。

 私の好きな食べ物特集。

 いえーい。

 いえーーーーーい。

 声を張るくらいしかもうやることがないっていうね。私はもう寂しくて、ちょっと吐きそうだけど、うん、頑張れ、私。

 という訳で、第三位。

 とんかつ。

 意外でしょ。

 この細い体でありながら中々カロリーの高い食べ物を食べてるんだよねぇ、私は。

 キャベツの千切りとか一切つけないからね、ただの肉と衣を口の中にぶち込んで、消化するってだけだから。あの、なんていうのかな、野菜って、本来、人間の食べるものじゃないって、私、思ってるからさ。

 あれは、正直、ただの草。

 うん。

 私は野菜は絶対食べないって心に決めてるんで、もう、食べませーん。お母さんごめんなさーい。こんな娘でー。

 では、第二位。

 麦チョコ。

 完璧でしょ。

 完璧なお菓子でしょ。

 これ以上完璧なお菓子は存在しないっていうくらい完璧なお菓子でしょ。

 だってさぁ、麦チョコの麦の部分って、もうチョコなくたって美味しいじゃん。それに、チョコ付けてるんだよ、間違いないじゃん。絶対に。

 私は、もうね、一生麦チョコ信者なんだろうなって思ってるし、それで満足してるからね。

 本当に好きなんだよね。麦チョコ。

 一日一袋は食べたくなるくらいに好きだなぁ。

 私のファンだったら当然のごとく知ってることなのかもしれないなぁ。ブログとかにもちょこちょこ出てるし。あ、いや、今のちょこちょこと、麦チョコはかけてないよ。かけてないからね。あ、いやいや、今のかけてないっていうのも、チョコをかけてるとか、そういうかけてるかけてないっていう言葉にかけてるわけじゃないから。

 おっと、また言っちゃったけれども。

 いやぁ、ねぇ。

 第一位の発表の前にですね。

 まぁ、このラジオを聴いている方にご報告があります。

 私こと、アイドルのミキちゃんはですね。

 皆さんもご存知の通り、滅亡した地球でラジオをしております。私以外に生きていた研究者の人と話をしたところ、地球には私とその研究者の人しか生きていないことが分かりましてですね、今、こうやってラジオを使って呼びかけてます。

 それで、ですね。

 その。

 昨晩。

 その研究者の人が亡くなりまして。

 もう。

 地球には私一人になりました。

 あの。

 宇宙の人でもいいし、もうなんだっていいので、ラジオにお便りをお願いします。

 それでは。

 はい。

 ね。

 大事なお知らせでしたぁ。本当に今のは、聞き逃しちゃ駄目だぞ。絶対にお便りをよろしくね。もちろん、あれだよ、ファックスとかないんだから、なんとか連絡してくれればそれでいいからね。

 はい。

 それじゃあ。

 ミキちゃんの好きな食べ物。

 第一位の発表です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラジオ エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ