俺と君だけの秘密の時間

Akino

第1話︰さようなら日常、こんにちは非日常

カーテンの隙間から太陽の光が指す。

何回か寝返りをうってもなかなか寝付けないので仕方なく体を起こす。

目覚まし時計は午前7:00、今日も朝が来た。

カーテンを少し開けてみると外は人が行き交っていた。

そう、"いつも通りの朝"。

ベッドから出てクローゼットから制服を取りだす。

学校行きたくないな。

どうせまたからかわれてみんなに冷たい目で見られて。

コンコン。

ドアを叩く音で思考がとだえた。

閉じたドアを見て返事を待つ。

「お兄ちゃん、ご飯ができたから降りてきて。」

「わかった。」

ドアの向こうから妹、美彩のことが聞こえた。

ちょうど制服を着替え終わり、机にかけてあったシンプルな青色のリュックを持って部屋を出た。


階段を降りると香ばしいベーコンの匂いがした。

机には美彩と俺の分の朝食が並べられていた。

「おはよう。」

「おはよう!今日はベーコンエッグだよ。」

「食べる前にお母さんに挨拶してくるよ。」

食堂を通り過ぎてお母さんの部屋へ行く。

お母さんは体を半分起こした状態で窓の外をボーと眺めていた。

「おはよう。」

挨拶はかえってこなかった。

心ここに在らずって感じだ。

飽きらめて食堂に戻り椅子に座る。

俺が座ったのを確認した妹は両手を胸の前に合わせた。

「いただきます。」

「‥‥いただきます。」

箸をとり、目玉焼きをご飯の上に乗せて黄身をわる。

とろりと君が流れ出す。

それをご飯と絡めて口へ運ぶ。

「今日は何時ぐらいに帰れそう?」

「部活があるから、遅くなる。」

「私もあるから各自コンビニ弁当にして。」

「わかった。」

ご飯を食べ終わって、食器を洗う。

妹が洗い終わったのを見て玄関まで行き靴を履きカバンを持ち、ドアを開け、外へ出る。

妹もあとに続いて靴を履きカバンを持って外に出る。

俺も妹も同じ学校に通ってる。

学校に着き、下駄箱を開けるといつも通りの光景。

下駄箱に上靴がなかった。

でもそれは想定内だから何も無いような顔をして予備の上靴をカバンから出す。

玄関の近くの階段を見てみると裕翔とその仲間が悔しそうな顔でこっちを見ていた。

「んじゃあまた家で。」

「うん、頑張れよ。」

「程々に頑張るよ!」

妹と別れて教室へ行く。

教室についてドアを開けると急に静かになる。

いつも俺が無口で無表情なせいで俺を人じゃないとか言う人がいた。

そのせいで俺は教室では浮いてる人。

1番隅っこって部分が報われてる部分かな。

席につくとカバンから本を出して読む。


キーンコーンカーンコーン。

チャイムとともに先生が教室に入ってくる。

出欠を取り、今日の日程を一通り先生が言ったあと終わりのチャイムがなり、先生が出ていく。


全授業を終えて放課後になった。

部活行くと妹に言ったけど、裕翔が今日機嫌が悪いから行くのを辞めた。

運が悪いことに、裕翔と同じ部活だから。

みんながいっせいに教室を出ていく。

「今日カラオケ行かない?」

「えー、またぁ?‪w」

「俺も行きたい!」

「宮崎くんも誘う?‪w」

「あんな根暗を誘ったら絶対テンション下がるわ‪w」

「だよねー‪w」

聞こえるように言ってるのか、俺のことを盛り上がりのネタのように使っている。

でもこれも"いつも通り"のことだから。

俺は立ち上がり教室を出る。

それを静かに、さっき喋っていた人は見ていた。

申し訳ないと思うならやめりゃいいのに。

部活は行かないとして、ほんで暇つぶししようかな。

教室はあいつらに譲るとして、仕方ない。

屋上で本を読もう。

屋上は俺の秘密基地のひとつ。

近くの階段を登り、屋上へ続く階段まで廊下を歩こうと階段から離れると、窓から足を投げ出して座っている黒髪の少女がいた。

髪が風になびいてさらさらとしている。

「あっ、あの‥‥えっと、危ないですよ?」

「危なくないよ?風邪がすごく気持ちいい。」

あの、降りた方がいいですよ?

俺は手を差し伸べて降りるように促す。

少女は立ち上がり、俺の方へ体を向ける。

そのまま俺の手を使って降りてくれると思ったけど。

「辛いと何もかも投げ出していなくなりたいって思うよね。」

そう言って、後ろに体を倒す。

落ちた。

そう思った。

俺は急いで下を見た。けどそこには誰もいなくて。

ただ、木陰で休んでいる部活の人がいるだけ。

‥‥夢?だったのかな?

諦めて屋上へ向かおうと後ろを振り返ると、さっき落ちたはずの少女が立っていた。

「は?えっ!なっ!」

「驚いた?」

「おっ、驚いたも何も‥‥」

「自己紹介まだだったね。私は嶺原音子。

2年B組の生徒だよ。」

「あっ、えっと俺は宮崎綾斗です‥‥2年B組で‥‥あれ?」

さっき、あのこ2年B組って言った?

「私のこと知らないのも当たり前だよ。

だって私、保健室登校だから。」

「あー、なるほど‥‥ごめん。」

ここから俺の"非日常"が始まった。

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