=短編=世界の破壊者・闇乃 影司

MrR

闇乃 影司は世界の破壊者である。


 ヒーローロードの物語は無数に存在している。


 これはその中のとある世界。


 闇乃 影司の物語。 

 




 とある作品で人類悪と言う言葉がある。


 その人類悪と言う言葉は正しくこの少年、闇乃 影司がそれを体現している。


 



 闇乃 影司。


 長く切れ長の赤い瞳。


 美しく整った顔立ち。


 純白の長いポニーテール。


 白肌。


 完成された美少女のような体付きをした男の娘。


 この世にただ一人存在するスーパーパワーを持ったヴィラン。


 能力は悪魔の如き容姿になる変身能力。


 変身することにより、超常的な身体能力、様々な超能力、電子的なハッキング能力などを持つ。


 その力で世界中の紛争地帯や治安が悪い地域を渡り歩き、次々と破壊と死を撒き散らす。


 その戦いの余波で世界経済は混乱。

 

 とある国が核兵器をも撃ち込んだがそれでも死なず、世界が彼に与えたコードネームはデビルだった。


   


 

『ハッキリと言っておきましょう。コードネーム、デビルを殺すのは現代科学では不可能です』


 科学者の一人が言った。


 金髪の青年、天村 志郎。


 若き天才科学者である彼は世界中の重鎮がいる前でコードネーム、デビル――闇乃 影司の遺伝子情報を公開した。


『正直まだデーター不足ですが、元々彼が核兵器以上の火力に対抗できたのは日本国の自衛隊が行った人体実験に埋め込まれた鉱物にあります』


 それを聞いて日本から出席した総理大臣が渋い顔をし、世界中の国のトップが非難の目を日本に向けた。


 今、世界を騒がせているデビルこと闇乃 影司は自衛隊が闇乃 影司の体内に埋め込んだ地球外鉱物が原因である。





 それは政府主導――悪魔の実験と言っても差し支えない物である。


 地球外鉱物は適合すれば世界中の軍事パワーバランスをひっくり返す程の強大な力を持つ。


 だがその適合に耐えきれる人間は僅かであり、適合出来なければ死ぬ。


 だから次々と被験者を実験で破棄しては次の被験者を選んで、鉱物の適合に耐えきれなかった人間を破棄していった。


 そして最終的に適合したのが闇乃 影司だった。


 闇乃 影司は適合して暴走を開始。


 施設の職員を焼け野原にして国会議事堂周辺を更地にし、東京を廃墟に変えた。


 駆けつけた警察も自衛隊も米軍も相応の被害が出た。

 

 これだけ書くと闇乃 影司が悪いように見えるが、米軍による攻撃の巻き添えによる被害も多数ある。


 そもそもこの悪魔のような人体実験も米国も絡んでおり、それを日本に独り占めさせないようにその成果を横取りしようとしたと言う背景もあった。


 まあだからと言って闇乃 影司が国会議事堂や防衛省を襲撃したのは事実であるのだが――


 

 誤算だったのは闇乃 影司が強すぎたことだ。

 

 米軍も大国のプライドゆえか退くに退けなくなり、さらには他の国の工作員までもが動いた。


 その結果、日本の首都圏は焼け野原になった。



 その後、闇乃 影司は太平洋を渡ってホワイトハウスを襲撃し、核兵器を日本に撃ち込むと脅迫すると言う最悪の手段を使うがそれでも止まらずに破壊活動を開始。


 結果、アメリカの一部が核の炎に焼かれただけに終わり、その後はノウノウとアフリカ大陸にいたが国連軍を動かして現地住民を巻き込んでの攻撃を開始したが結果は国連軍の全滅に終わった。


 その後も闇乃 影司の行動は苛烈さを増していき、悪の独裁国家を次々と滅ぼしていき、紛争地帯の武力介入を行い、現在ユーラシア大陸で二つの大国相手に戦争している状態だった。


 核兵器も何発か撃ち込まれたがそれでも生きていた。





 天村 志郎は闇乃 影司がなぜ現代兵器で殺害不可能なのかを世界中の首脳陣が集まる中で説明した。


『彼が不死身である理由は彼の細胞はとにかく頑丈であり、この細胞はどんな環境下にも瞬時に適応します。-273℃だろうと太陽に放り込もうとこの細胞は生き続け、仮に専用の毒物を作ったとしても短期間で抗体を作られてしまいます――彼の細胞に地球上に存在するありとあらゆる毒物、劇物、物質を投与しましたが効果は出ませんでした』


 絶句して――そして理解した。 


 だが核兵器でも死なないような奴だ。


 核兵器の爆発の温度や衝撃、放射能に晒されても死なない。


 どんな過酷な環境下でも生存し、それ以上に有効的な物質が存在せず、あったとしても短期間で抗体を作られて活動を再開する?


 この説明が真実だとすれば仮に人類が滅びても奴は生き続けることになる。


『仮に倒すとなると、核兵器以上の攻撃力――それこそ地球に致命的なダメージを与えるレベルの武器を彼の細胞がそれに応じてパワーアップする前に叩き込む必要があります』


 その一言はさらなる絶望だった。

 

 だが某国の大使は顔面を蒼白にさせながらこう尋ねた。


『まってください。パワーアップするとはどう言うことです?』


 彼のその一言はさらなる波紋を呼び起こすことになった。


『そのままの意味です。奴は――分かり易く言えば強い敵と戦えば戦う程、それに応じて短期間でパワーアップするのです。例え彼に友好的な兵器を開発しても短時間のウチに決着をつけなければ無力と化してしまうのです』


『その――話が真実だとして、仮に友好的な兵器を作り、それをぶつけて倒せるまでのタイムリミットは?』


『希望的な観測で三分あればいいところでしょう。』


 即答だった。

  

 同時にそれは死刑宣告だった。

 

『そこでブラックホール爆弾です』


 同時に天村 志郎はとんでもない兵器を持ち出してきた。



☆  


 

 ブラックホール爆弾はユーラシア大陸に文字通りの大穴を開ける程の破壊力だった。


 投下後、しばらくは奴が消え去った事に人類社会は安堵したが喉元過ぎればなんとやらで「やり過ぎだ!!」とユーラシア大陸の人々は結束し、ユーラシア大戦――事実上の第三次世界大戦が起きた。


 闇乃 影司を倒すまでに核兵器やブラックホール爆弾で地球環境――ユーラシア大陸の大部分に致命的にダメージを与え、人類の生存圏が大幅に縮小したのだ。   


 そして更に悪いことは重なる。

 


 闇乃 影司の復活、パワーアップと言う最悪なシナリオである。



 ブラックホール爆弾の影響でより凄まじい戦闘力を得て、より苛烈さを増して帰ってきた闇乃 影司は人類社会を滅ぼす勢いでユーラシア大陸の国々を消し去り、日本に上陸。


 沖縄~中部地方を焼け野原にしてついに因縁の関東にまで上陸を許した。


 世界中の軍隊はもとより日本の自衛隊も必死に抵抗したが核兵器もブラックホール爆弾も通用しない化け物にどう戦えと言うのだろうか。


 やがて闇乃 影司は東京に居座り、世界中に自分の分身体を差し向けて人類の抹殺を目論むようになる。


 世界は闇乃 影司の手で終わりを告げようとしていた――

 




 世界中に放たれた闇乃 影司の分身体は信じられない程に強く、一体一体が核爆弾に耐えられるレベルの戦闘能力を有していた。


 例え地球の寿命を早めてしまうと分かっていても、例え通用しないと分かっていても人類社会はブラックホール爆弾や核兵器の使用を止められなかった。


 事実、分身体にはブラックホール爆弾は通用したからだ。


 だが同時にそんなとんでも兵器を使用し続ければ地球人類は滅んでしまう。

 

 人類が滅亡するか、地球が滅ぶか――どちらにしろ人類に残された時間は僅か。


 そんな時だった。


「誰だキサマは?」


「わかっているくせに言うんだな。もう一人の俺」


 廃墟と化した東京の市街地――神々しさを感じさせる神殿の中で玉座に居座る闇乃 影司に相対するようにもう一人の闇乃 影司が相対した。

 

「ブラックホール爆弾の影響で俺の細胞が枝分かれしてこんな化け物が誕生するとはな・・・・・・」


「化け物はお前も同じだろう。自分の復讐や衝動でどれだけの人間を殺した?」


「そう言うお前はなんだ? 正義面して俺の悪行を批判できる立場か?」


 そう言うと玉座に座る闇乃 影司は高笑いした。


「お前は心の奥底で、何処かで人間でありたいと願い続けていた。どこかで人間に見切りをつけられないでいた。だが俺は違う。俺は俺の望むままに生きる。地球を、そして次は宇宙――いや、その段階をすっ飛ばして平行世界とかもいいかもしれんな」


「だから殺しに来た」


 それを聞いて玉座にいた影司は察した。


「キサマ、何処に行方を眩ましていたか知らんが――平行世界の自分の記憶を受け取ったのか? 垣間見たのか? それとも平行世界にでもいったのか?」


「両方だよ。そしてケジメをつけにきた――まさか志郎の奴がブラックホール爆弾とか作り出すとは想定外だったがな――まあともかく、お前を殺しにきた」


「やってみろ!!」


 そして両者は変身して激突した。


 玉座にいたもう一人の闇乃 影司は両肩や頭部に水晶のような突起物が生え、恐竜のような尻尾を生やしている。


 この世界本来の影司は今迄通りの悪魔のような姿だ。


 両者は激しく激突。


 戦いの余波で、ただの殴り合いだけで神殿が崩壊し、周辺の廃墟となった建物がドンドン崩れ落ちていく。




『ぐはぁっ!?』


 激しい戦いの末に、もう一人の影司は月――地球の約九周半以上の距離を一瞬にして通過して月面に叩き付けられ、大きなクレーターをつくる。


『な、なにがどうなってやがるんだ!? 俺はあいつ以上の存在の筈――あの化け物――俺を月に――』


『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』


『なにぃ!?』


 地球の重力を振り切り、約九周半以上の距離を僅かな短時間で駆け抜けて殴りかかってくる。


『ぐおぁ!?』


 鳩尾に一発。

 さらにアッパカットを顎に叩き込んでさらに吹き飛ばす。


『終わりだ!!』


 そして目映い閃光とともに――地球を複数纏めて吹き飛ばす程のエネルギーの本流がもう一人の闇乃 影司に襲い掛かった。


『ば、ばかなぁああああああああああああああああああああああああああああああ!?』


 もう一人の闇乃 影司は細胞単位で消滅。


 エネルギーの本流は火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星――そして太陽系をも外れていく――

 

 同時に本体を失ったせいなのか世界中に散らばっていた分身体も消滅していく。


『さて。本番はここからだな』


 闇乃 影司に地球に戻った。



☆  



 世界は未だに問題を抱えながらも一先ずは平和になった。


 核汚染やブラックホール爆弾によって穢された大地は全ては元通りと言うわけではないが――それでもお花畑広がる幻想の楽園が広がる大地となった。


 闇乃 影司はしぶとく生きていた天村 志郎にアルゼンチンバックブリーカーをかました後、その存在を目にした人はいない。


 彼の足跡は途絶えはしたがまるで一つの宗教のように人々から長く語り継がれるのであった。



 END 

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