騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」
PENGUIN
多重万能能力の神速剣士
第1話 お前はもう死んでいる。(まだ死んでいない)
「お前はもう、死んでいる」
3
2
1
───
僕の通う、このラミリスタ剣魔学園に突如、魔人が現れた。
魔人は恐ろしく強い生き物で人類の敵だ。その魔人を倒すのが騎士団や魔術師団の国が運営する軍だ。或いは民間の冒険者ギルドに雇われているハンター達。さらにはその魔人…ひいては魔人を束ねる魔王を倒す存在、異世界からの勇者。彼ら彼女らが魔人を倒す。
騎士団や魔術師団に入隊するためには○○剣術学園とか××魔法学園とかそれら総合してある△△剣魔学園を卒業しなければならない。正しくは卒業証明書とその後の入隊試験で合格しなければ入隊できないが…。
冒険者ギルドは軍に入れない訳ありだとか学園の落ちこぼれだとかそもそも学園に入学できなかったものとか、まぁ、そういった者達の吹き溜まりってが世間の認識だ。
ただ、活躍次第で英雄ともてはやされ、憧れの的になってる人達もいるし、その英雄みたいになりたいという理由でハンターになる人もいる。
そして軍は国が運営しているため『公務員』だ。公務員は給料安定してるし、軍と言っても命に危険が及ぶ任務はそんな多くないし、そんな任務はベテランの強い人がやるもんだから軍に入れば将来安泰だ。
軍に入って最初にやることは街の巡回とか、門番とかって良く聞くし。
だからみんなこぞって学園に入学する。この国の奴隷やスラム街に住んでいる人以外は大体、とりあえずどっかしらの学園に入学しているはずだ。たまに奴隷やスラム街の人間も学園にいるくらいだし、この国の8割~9割は学園に通っていると思う。
…で、もう一度言おう。
僕の通う、このラミリスタ剣魔学園に突如、魔人が現れた。
そう、騎士の卵、魔術師の卵の学園に通う僕達を殺しに。魔人が校庭で学園のみんなを殺し回っている。校庭ってことは最初の標的は実技演習授業中の生徒か?ってか、先生は?…ああ、生徒庇って倒れてらぁ。って、倒れちゃダメでしょせんせー!
僕は窓越しに他のクラスの人達が殺されているのを横目で見ながら廊下を駆ける。
走っている最中にみんなとぶつかり合う。転んで怪我をしている人もいるが、僕も誰も彼もが自分の命惜しさにただ逃げる。
「っが、っあで!」
僕は顔面を肘打ちされたり、蹴っ飛ばされたりして宙を舞い、廊下の床に頭から落ち、僕の意識も堕ちる。
どうやら意識を失っていたようだ。周りに僕と同じように何人か寝転がっている人達がいる。窓の外を見るとこの学園に通う異世界からの勇者とあの魔人が戦っていた。やはり勇者ってのはカッコいい。勝てるかわからない相手に挑むその姿、みんなが逃げる隙を一人で作っている。
何やら勇者と魔人が会話しているがどうやらここからでは内容が聞こえない。
「あ、危ない!」
魔人の攻撃が気絶している生徒や先生に向かって黒いファイアボールが放たれる。僕は思わず叫んでしまった。
が、流石は勇者。黒いファイアボールをその身で受ける。庇われた人達は無事だが、勇者が重症だ。
あ、また会話を始めた。おそらく会話はこうだろう。
---
「ほう、流石は勇者。そんな者共捨て置けば良いのに」
「そんなこと出来るわけないだろ!俺はなんたって、勇者だからな!」
「ふん、難儀なやつだ。ならばそいつらと共に逝け!ダークフレア!」
「ぐあああーーー!」
「ふっふっふ、ふふふ、ふはははは!そんな者共を庇うから死ぬのだ」
---
みたいな会話をしていただろう。
「…え、勇者死んだ?」
勇者ああぁァァーーーー!!!死んじゃダメだぁー!
カッコいい死に方したけど、まだ、僕まだ校舎にいるから!せめて僕を逃がしてから死んでくれええぇぇー!
あ、魔人と目が合った。
さっき大声出したから気づかれたんだ。やらかした。魔人が飛んでこっち来る。こっち見んな。こっち来んな。
後ろを見ると気絶した生徒がいる。僕は足がすくんで動けない。そんな状況把握している内に魔人が僕の目の前に到着した。
「ほう、私が来たパニックの最中で頭を打って気絶した。と、いった所か」
こちらの事情をわかってくれたみたいだ。だが、魔人にはそんなの関係ないようだ。
「こうまとまってくれていると丁度いい。殺しやすいからナァ!」
魔力を溜め始めた。どうやら僕達をまとめて殺せるよう範囲魔法を放つようだ。
仕方ない。
使うか。
僕は騎士になるため、騎士団に入隊するため、『公務員』になるためこの学園に通っている。
僕の剣は『日本刀』という昔来た異世界からの勇者が考案した武器だ。見た目が美しく、どの武器よりも段違いで切れ味が良い。だが、耐久性がない。そんなピーキーな武器。
僕の能力もとてもピーキーで、カッコいい。だから僕はこいつに親近感を覚え、こいつを使おうと思った。
僕は腰を落とし、帯剣している剣に手を添える。このポーズは居合斬りの構えって言うらしい。
左手の親指で
「お前はもう、死んでいる」
3
「な、なにを」
2
「言っている」
1
「頭でもおか…---」
カチンッ。
僕はタイミングを合わせて刀身を鞘に納める。まるで『神速の速さ』で抜刀し、鞘に納めたかのようなタイミングで。
「しヴぁくカアァァーーーッ!!!」
魔人は全身から血を吹き出した。窓ガラスに大量の血が付着し、僕は返り血を浴びずに済む。そして魔人は死んで地に伏せた。
その姿はあたかも窓ガラスを一切傷付けずに目にも止まらぬ早さで居合い斬りをしたかのような動きにみえる。
僕のことを見ていた人がいないか辺りを見渡す。最近転校してきた女子生徒と目が合う。
あれ?さっきまで気絶してたよね?僕、確認したんだけどな。起きるタイミング悪いなぁ。誰にも知られたくないんだけどこの能力。
「あ、あの…」
声を発して何かを言おうとした女子生徒が急に眠る。この能力は彼女の能力か。今回は助かった。悪い夢でも見たとでも思っていてくれ。
「ありがとうございます。助かりました、リザさん」
「今回はギリギリ私が間に合ったから良いものを、前回みたいにお前の能力を他の人に知られたらどうするんだ」
「すみません、リザさん。重々わかってはいるんですよ、これでも」
「お前の力なら他にやりようがあっただろ」
「え、えぇーと…」
「…まぁ、いい。今回の私のフォローはここまでだ。これ以上私の世話を焼かせるな」
言いたいことだけ言って、リザは霧になって消える。
今回みたいに彼女のフォローがある場合は良いが、ない場合は自分でフォローしなくちゃならない。そのため、僕は能力を使うときは『剣で斬り伏せた』ように使用するのが癖になっていた。
僕はある組織に所属している。そしてその組織で『
僕、この能力一つしかないし、万能じゃないし、神速剣士とか言われても剣使わないんだけどなぁ。
だけど仕方ない。僕にはある夢がある。それは…。
『僕はとっととこの組織を抜けて公務員になる』
という夢が。
僕はお金がないから組織で学費や生活費を稼がないと学園に通えない。だから卒業するまでは組織に居続けないと卒業出来ない。卒業出来ないと公務員になれない。
く、あと3年の辛抱だ。組織にはこの能力一つしか使えないのを隠し通さなきゃいけないし、一般人には能力が使えること自体隠さなきゃだし…。
なんてピーキーで個性的な能力を使えるようになってしまったんだ僕。
そう、僕の能力は…。
『「お前はもう、死んでいる」と僕に言われた相手は3秒後に死ぬ』という能力だ。
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