第27話 大団円2
一瞬だった。火野将兵は振り向いたと思っ
たら彩木瞳の後ろに立っていた。そして。
静かに瞳が火野の腕の中に倒れこんだ。
「おい、何をした?あんたでも、その娘に手
荒なことをするなら黙ってられないぞ。」
「大丈夫だよ、気を失っているだけだ。彼女
に話を聞かせるわけにはいかないからね。」
「どういう意味だ?」
「それをこれから説明するんだよ。火野君、
君からどうぞ。」
扇型に広がった人たちの要のあたりに立っ
て火野将兵が語りだす。
「では、僕から話しましょう。と言っても僕
もそれほど詳しい訳ではありません。ただ、
セラエノ大図書館で見つけたナコト写本より
古くルルイエ異本ですら、そこからの引用を
多用していると思われる、ある写本を見つけ
たのです。その本は名前すら付いておらず決
して触れてはいけない禁断の魔導書でした。
僕とマーク=シュリュズベリィでその本を
解読しようとしたのですが、ほとんどの部分
が失われているか、痛みがひどく読めない所
が多すぎました。人ではない、しかし人に非
常に近い何かの皮で装丁されていたその本は
手に取るだけで精神が持っていかれるような
感覚になる本でした。」
皆が火野の話に聞き入っている。気が付く
と話に出て来たマークとマリア=ディレーシ
アも来ている。
「一旦その本の解読は諦め、他の魔導書に目
を通している時でした。アルケタイプのロン
グウッドと名乗る生命体がセラエノ大図書館
に現れたのです。彼、もしくは彼女はヴーア
ミタドレスの崩壊した地下洞窟から逃げて来
た、と言っていました。安住の地を捜してい
る途中で立ち寄ったのだと。
そして、そのロングウッドが、先ほどの写
本の解読を手伝ってくれたのです。お陰で失
われているところ以外は、ある程度解読でき
ました。その中に記載されていたこと、それ
がこれからお話しする主題になります。」
「火野さん、話が長いよ。まだ前段だろ?結
論を言ってくれないか。」
「まあ、物事には順序と言うものがあるんだ
から、急かさないでくれよ。僕が話す内容が
僕の妄想ではない、ということを説明してい
る途中なんだから。」
火野の話は続く。
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