第12話)罪人≠悪人 

 狂気の夜を幾日過ぎた頃だろうか。もう二度と動く事のない優矢を見ていくうちに、そうさせてしまったのは誰なのかという事を考え、徐々に徐々にではあるが、遂には後悔の念に囚われていった奈美は、取り憑かれたかのように独白を始めるのであった。


 お願いですから。


 どうか、

 教えてください。


 アタシは今もユウヤを愛してます。心の底から愛してます。例えこの想いがどれだけ罪な事であろうと、ユウヤだけは失いたくないんです。失いたくなかったんです! 勿論そんな事は既にご承知の事ですよね。やっぱり、異常だとお思いなのですか? そうですよね………アタシもそれは自覚してました。はい。異常なくらいにユウヤを愛してるんです。


 ホ、ホントです!


 信じてください!


 ホントなんです!


 こんな事になってしまうに至ったキッカケは、ユウヤとの事を思い描きながら自身を慰めてた姿を、ユウヤに見られてしまったあの日。アタシは羞恥の思いよりも絶望を感じました。こんな汚らしい事をしながら、淫らな事をしながら、妄想の中で自分にどんな事をさせてるんだと、オレは弟なのにと、ユウヤはアタシを嫌悪するに決まってると、そういった様々な思考が即座に脳内を駆け巡りました。だから当然、アタシは凄い取り乱しました。


 言うべきか。


 告げるしかないのか。


 でもユウヤは、


 けれどユウヤは、


 そんなどうしようもないアタシを優しく受け止め、更には受け入れてくれたんです。きっとユウヤは、誰よりも優しいからでしょう。越えてはならない線を越えたアタシ達は、その線を越えたままそこに留まり続け、毎日のように何度も何度も求め合いました。


 アタシにとってそれは、

 何よりも特別な事だったんです。


 愛してるよとユウヤが言ってくれる毎日。愛してるよとユウヤに言える毎日。アタシ達はまるで、仲睦まじい恋人のように………ううん。アタシ達は夫婦でした。


 パパとママみたいに、

 運命の赤い糸で結ばれてたんです。


 ユウヤのお嫁さんになれたアタシは、この幸せが永遠に続きますようにと神様に祈りました。祈り続けました。それがお気に障ったのでしょうか。目障りだとお思いになったのでしょうか。耳障りだとお思いになったのでしょうか。だから罰をお与えになったんですか?


 アタシの全てであるユウヤが、

 アタシから離れてくという厳罰を。


 アタシにとって死刑宣告と言ってもイイその罰を跳ね返そうと、アタシはユウヤにしがみつき、ユウヤの優しさを最大限に利用し、ユウヤを誘導しました。


 アタシの膣内(なか)で

 イッて………と。


 すると、いつもなら必ずと言ってもイイくらいに拒む筈のユウヤが、そうしてくれたんです! しかも、何度もそうしてくれたんです! そしてその後、腕枕までしてくれたんです!


 嬉しかった。

 幸せでした。


 そのどれもが久しぶりでした。まだ愛してくれてるのかもと安堵しました。そして、計画どおりに赤ちゃんを身籠る事もできました。アタシはあの時、勝利に歓喜しました。身震いしました。今にして思えば、それは狂喜と言えるくらいの喜びようだったと思います。けれど、そうなるのは当然なんです。だってアタシは、ユウヤを愛してるんですから。


 でも、それが………っ。

 狙いだったんですよね?


 喜ばせておいて地獄に落とす。そういう事だったんですね? 狂喜してたアタシから、まずは赤ちゃんを奪い取ってみたんですよね。絶望したアタシは死を選びました。当たり前ですよそんなの。酷いですよそんなの。


 でも、でも、

 ユウヤが救ってくれたんです!


 ユウヤは、ユウヤは、

 アタシを選んでくれたんです!


 アタシは再び狂喜しました。

 それも、狙いだったんですよね?


 それこそが狙いだったんですか? 天国から地獄へと叩き落とす。まさに、天国から地獄に叩き落とされました。考えてみれば当たり前ですよね。だってアタシ達は、逆らい続けてきたんですから。ユウヤはきっと、そんな毎日に疲れたんでしょう。だから逆らうのを止めたんだと思います。


 全てアタシのせいです。だから、従ってしまったユウヤを、屈してしまったユウヤを、アタシを棄てたユウヤを、アタシはそれでも怨んでなんかいません。憎んでなんかいません。だって、もっと強く、深く愛してもらえるようにアタシが努力してればそうはならなかった筈ですもん。ユウヤは誰よりも優しい人ですから。


 ユウヤを誰にも渡したくなかったアタシは、死を選ぶという選択肢を捨てて絶望と闘おうと思いました。ユウヤはもうアタシを愛してはくれないかもしれないけれど、でも、再び抗ってくれたらその時は………。


 神様も根負けして、

 許してくれるかもしれない。


 そう思い込む事に………ううん。念じる事にしました。アタシには、ユウヤに愛された記憶があります。それがあればある程、想いは大きくなっていきます。記憶は大切な想い出となります。それはつまり、ユウヤを何より大切な存在だと認識するには充分な事が沢山あったという事です。離れたくなんかありません。手放したくなんかありません。そうなるのは当たり前の事だったんです。


 はい。何年も耐えましたよ。こんなアタシでも、すぐに許してもらえるなんて希望的観測は持ち合わせてませんでしたから。機会を待つしかなかった。それしかなかった。だから、アタシは耐えました。耐え続けました。ユウヤを愛してるというこの想いが弱まるなんて事、あるワケないんです。アタシは耐えるしかなかったんです。ユウヤを愛する事がどうしてイケナイ事なのか………アタシには判りませんでしたから。


 憐れだと、思いましたか?

 愚か。だと、思いますか?


 けれど、

 だから許してくれたんですよね?


 そうですよね?

 そうだったんですよね?


 やっと、漸く許してもらえたのに。

 最初で最後のチャンスだったのに。


 それなのにアタシは、取り返しのつかない過ちを犯してしまいました。バカな事をしてしまいました。きっとアタシ、もう随分前にオカシクなってたんです。だって、長すぎましたから。それに気づいたのは、実行してしまってから随分と経った後でした。


 どうか、教えてください。


 ユウヤはアタシを、

 許してくれるでしょうか………。


 お願いします。

 どうか、教えてください。


 神様………。


 どうか、

 どうかアタシに………。


 ………。


 ………。


 あの狂気の夜からどれくらいの時間が流れたのだろうか。ベッドの上でピクリともせず、優矢は考え事をしていた。そのすぐ傍には奈美が居り、床にペタンと座った状態で絡ませた腕をベッドに乗せて、その上にチョコンと頭を置いて俯いている。パッと見た限りまるでそれは、授業中に机に伏せて居眠りをしている学生のようでもあった。


 二人が今そのようにしてすごしているこの部屋は、奈美がそうした途端に時間の進みがストップしてしまったかのようにとても穏やかになり、沈黙が続き、静粛のみに支配されたかのような、何やら薄ら寒い空気感さえ漂っている空間へと変化していった。


 アネキ。


 ベッドの上で優矢は今、この予想外の事態に激しく動揺しつつも、早くなんとかしなければならないと思い悩み、更にはこの期に及んでもまだ手遅れではないと思い込み、先程から一途に考え事を続けているのだった。


「………」あの時のアネキは、はたして本気で死ぬつもりだったのだろうか。あの時のアネキは、オレを本気で殺すつもりだったのだろうか。あの時のアネキがその心と脳で思い、考えてた事、それは何だったのだろう。


 一体、アネキは。


 激しく否定したい今のこの有り様について、優矢は更に踏み込んで考えを巡らせてみる。


「………」はたしてオレは、正解を選ぶ事が出来たのだろうか。ならば、その正解とは何なのだろうか。例えば、正解とはどちらかが、またはアネキとオレの両方が生きてるという事で、不正解とはどちらかが、またはアネキとオレの両方が死んでるという事なのだろうか。それとも、生きてるとか死んでるとかいう究極の出来事を推し量るには、正解とか不正解という二極論だけでは不可能なのだろうか。


 もしも、そうであるのなら。


 あの日あの時に限らず、それ等の相反する二つの選択肢があるという事に気づかないまま、知らないまま、思いもしないまま、何度も何度も選び続けてきたという事になる。そして、そのようにして進んできた結果………今こうしてアネキとオレは、此処でこんな事態に陥ってしまってる。


 つまり………。


 選択肢というモノをYESかNOかの二つに絞って提示するのはいつだってアネキで、そのどちらか一つを選ぶのはいつだってオレで、オレが選んだ選択肢に対してアネキがまた更に選択肢を提示し、その度に選択肢をその二つに絞って提示し続けてしまった結果………このような悲劇が、バッドエンディングと呼ぶべきこんな事態が巻き起こってしまった。


 と、いう事なのだろうか。


「………」いいや。もしかして、これこそが悩む必要のないハッピーエンディングなのだろうか。けれど、もしもそうであるのなら、どちらにせよオレの人生はまるでメビウスの輪を歩き続けてるかのような、アネキの掌の上に居るような、生きてても死んでても、それこそ死んでからも、ずっとアネキからは逃れられないという事で、そういう意味で言えば、生きてるとか死んでるという事は正解でも不正解でもないのだろう。


「………」だって、アネキから逃れたいと思った事なんてただの一度だってないのだから。


 生きてても、

 死んでても。


 どっちでもイイ………の、かな。


 詰まりながら、破綻しかけながら、そのように考えてはみたものの、こんな事を幾ら考えてみても優矢には永遠に判らない。その都度どちらか一方を選ぶ事しか出来ないのだから、もう一方を選んだ場合はどうなるかなんて経験する事は不可能なのだ。更にそれが連続で続けば続く程に組み合わせは複雑になり、もう一つの未来はもう一つでありながら幾つにも増え、その一つずつを考えていたら時間が………いいや、命が幾つあってもまだ足りないだろう。それに、もう一つの未来に繋がる答えなんて奈美は絶対に教えない筈だし、進んだ先は優矢と同じである限り、どちらが正解だったのかは奈美にも判らないのだ。進んだ先にあった現実と進んだ先にあると思っていた未来が如実に違っていたという事態は、残念ながら往々にして起こりうる。つまり今のこの状況も、言ってみればそういう事なのだ。


 ならばと優矢は、今こうして此処に居る自分自身ははたして幸せなのだろうかという事について考えてみようとした。


 しかし、考えるまでもなくその答えはすぐに出た。奈美はすぐ傍に居る。奈美の傍に居るのだから、不幸せなワケがないのだ。だから幸せに決まっている。


 筈だった。


 筈だったのに優矢は今、この有り様について激しく動揺している。それは何故かと言うと、奈美が考えていたであろう正解を選んだ自身が、つい先程完全に完璧に完膚なきまでに跡形もなく崩れ去ってしまったからであった。


 とはいえ、そもそもつい先程までは生死に関わるような選択肢があった事なんて優矢には知りようがなく、そしてそれは今もまだ………いや、今はもう確かめようがなく、だからこそ優矢はこのあまりにも予想外で突然な事態に激しく動揺しているのだ。


 例えばあまりにも唐突と言えばあまりにも唐突すぎて、つい先程まで自身が死んでしまっているという事にさえ気づかないままでいたくらいに。


 此処まで考えてみて、優矢は漸くある事に気がついた。奈美にとっての正解や不正解が何であったのかを知ろうといくら思考を続けてみても、優矢が選んだ答えには奈美が選ばなければならない選択肢があり、奈美もその都度選び続けなければならなかったのだという事に。もしも選択肢というモノがあったとして、その都度その選択肢が提示され続けてきたとすれば、選び続けてきたのは優矢だけではなかったのだという事に。


 何かがなんとなく見えてきたような気がした優矢は、それならばとこの問題についての結論を急ごうと試みた。


 奈美が傍に居るという事が幸せ以外の何物でもないのであれば、今この状況も間違いなく幸せであると考えるべきで、悩む必要は何もないのではないか。つまりこれで良かったのだ。きっと。


 が、しかし。


 スッキリするワケがなかった。シックリくるワケもなかった。動揺は収まる気配を少しも見せず、逆に激しさを増していく。


 それはそうだ。それでは何一つ解決した事にはならないのだから。時間がないというのに、一刻を争うような事態なのに、早くなんとかしなければならないのに、優矢はその身を起こす事が出来ないのだ。ピクリとさえ動く気配もなく、動かす自信もない。


 それならばと、優矢は考える角度を変える事にした。奈美が求めていたであろう答えと一つでも違っていた場合、優矢がどうなってしまうのかという事を優矢は知らない。もう知りようがない。奈美が求めていたであろう答えと全て一致していた場合のそれも、同様に知る由もない。しかし、それでも良いのかと問われれば、奈美が傍に居るのだから幸せであると答えられる。


 ならば、

 何がスッキリしないのか。


 そして、

 何がシックリこないのか。


 それは。


 奈美が何を選んで後悔し、反省し、その後に絶望まで行きついてしまったのかという点だった。


 優矢にとって一番に大切なのは、自身の事なんかではなく奈美そのものなのだから。優矢はそれをずっと考えていたのだ。自分の現状ではなく、奈美の実状を。何がダメでこうなったのかを。この取り返しのつかない事態を引き起こしたのは、きっと自分のせいなのだと。奈美のせいである筈がない、と。


 ここから暫くは、

 つい先程起こった一部始終である。


「ねぇ、ユウヤ………怒ってる? ううん、怒ってるに決まってるよね。怨んでるに決まってる! 憎んでるに決まってるもん!」

 奈美のその声は悲痛に満ち、その表情は苦痛に歪んでいた。あきらかにやつれてもいた。


「こんな酷い事したんだもん! 許してくれるワケないよね? だよね………でも、でも、でもね、ユウヤ! お願いだから聞いて! 愛してるのよぉー! ユウヤだけなのよぉー! 今までだってそうだよ! 今だって、これからだってそう! ずっとずっと愛してる! 愛してるのぉー!」

 悲痛に満ち溢れたその声が、部屋に鋭く響き渡る。


「ゴメンなさい………ユウヤ、ゴメンなさい! ゴメンなさい! ゴメンなさいユウヤぁ! ゴメンなさい………ゴメンなさい………ねぇ、ユウヤぁ………許して、許してください………お願いだから、許して。ユウヤ、許して! 許してください! お願い、ユウヤぁー! お願、い、します………ユウヤぁー」

 その声は激しく震え、瞳が涙で覆われ尽くすと、その涙は遂に溢れ、頬を伝って流れ落ちていく。


「ゴメンなさい、ユウヤ………」

 止め処なく。


「ゴメンなさい、ユウヤ」

 何度も。


「ゴメンなさい、ユウヤ」

 何度も。


 奈美が何度も何度も言うゴメンなさいという言葉を、優矢はこれまで何度も何度も聴いてきた。昨日もそうだったし、一昨日もその前もずっとずっとそうだった。何故そんなにも謝るのだろうかと、優矢はもう何日も疑問に感じてきた。その意味が、理由が判らなかった。が、しかし。どうする事も出来なかった。


 優矢の願い………それは、奈美が幸せであるという事。そして、もう二度と奈美を傷つけないという事。奈美が幸せであるのなら、優矢は自分自身が生きていても死んでいてもどちらでも良いとさえ思っている。奈美が幸せでないのなら、死んでも死にきれない………いいや、死んでいても死ねないのだ。


 それなのに。


 それなのに、である。


「ねぇ、ユウヤ? アタシがそっちに行ったらさ、そしたらユウヤ、そしたらさ、アタシと会ってくれる? アタシの顔なんて見たくもないかな………うん。やっぱそうだよね。それは判ってるよ。判ってるの。だって、こんな事したんだもんね………でも、でもね、アタシはユウヤに会いたい。ユウヤに会いたいの。ユウヤに会いたいよぉー」

 悲しみに打ちひしがれていく奈美は、絶望という暗闇を自ら膨らませ、その暗闇に自らを閉じ込めていった。自分自身ではもう制御できなくなるくらいに。


「ユウヤが許してくれるまで、何度も謝るから! 何度でも謝るから! 謝ります! ねぇ、ユウヤ! アタシを叩いてもイイよ! 殴ってもイイ! 蹴ったって構わない! だから、だから、ユウヤお願い! お願いだからユウヤ………お願いします! お願いだから、会ってください。お願い、ユウヤぁ………ねぇ、ユウヤぁ………ひんっ! ユウ、ヤぁ………アタシを、嫌いにならないでぇえええー!」

 嗚咽を含んで泣き叫ぶその姿はあまりにも痛々しく、まるで生きる希望の何もかもを一切合切失ってしまったかのように………いいや、そのとおり生きている意味すらなくしてしまったようだった。奈美に残っているのはもはや絶望のみであった。


「神様、どうかアタシをユウヤに会わせてください………お願いします」

 殆ど聞こえないくらいまでに力を失くした奈美のその声が、この部屋を僅かに震わせたその直後、奈美は自ら身体の一部を深く強く鋭く突き裂いた。小さな音が部屋に漏れた途端に、その音とはあまりにも対照的な勢いで、優矢が包まっている以前は確かに白かったが今はもう赤いといえるシーツに、新たな朱色が沁み渡っていったのだった。


 ………、


 ………、


 これが、

 つい先程起きた事の一部始終だ。


 アネキ!!


 だから優矢は、

 激しく動揺しているのだ。


「………」どうして、どうしてこんな事をしたんだよ………後悔なんてしなくてイイのに、する必要なんてないのに、反省なんてしなくてイイのに、絶望なんて抱かなくてイイのに、どうして!


 アネキ、どうしてだよぉー!!


「………」はたしてオレは、何を間違えたんだろうか? アネキは何を間違えたと思ってしまったんだろうか? 感じてしまったんだろうか? 何処で間違えたんだろうか?


 間違えたのはオレなのか?

 それとも、アネキなのか?


 いいや、オレなのだろう。


 優矢は皮肉にもこの時、必死になって考えた。しかし、残念ながらもう手遅れだ。致命的な傷なのだから。先に死んでしまっている優矢には、これから死にゆく奈美を助ける事は出来ない。死なないでと叫ぶ事も、誰かを呼ぶ事も出来ず、愛しい人のすぐ傍でただ横たわっている事しか出来ないのだ。


 しかし、優矢は漸く気づいた。今、奈美の為に自分が出来る事は何も見当たらないが、この先なら。この後ならば出来る事がある、と。その為には、今はただ祈り続ける事しかない、と。


 神様どうか、

 アネキに会わせてください!


「………」そして会う事が叶ったら、アネキに何度も謝ろう。誤解させてしまってゴメンなさいと。オレは怨んでなんかないよと。憎んでなんかないよと。怒ってなんかないよと。オレは、アナキがそれで幸せならそれで良かったんだよと。アネキが幸せなら、オレ自身の事なんてどうでもイイんだから。


 だから、神様。

 どうかアネキに会わせてください。


 アネキに。


 はたから見れば、優矢はただ横たわっているだけだった。しかし、祈り続けていた。頸部を斬り裂いて蹲っている、奈美のすぐ傍で………。




       第12話 罪人≠悪人  完

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