夏のアメジスト 特別編

PREラッシュ(活動休止中)

紅い月

もし私が高丘琥珀ではなく『コハク』だとしたら‥?この華奢で折れそうな身体は彼女コハクなのだ。

コハクは確かに私の中に潜んでいる。

長い髪、キリッとした細い眉、凛とした瞳、

白い肩、乳房までもがコハクそのものだ。

私は羽織っていたYシャツを床に落とすとコハクはほくそ笑む。

『アキラ君は忠実に私のものよ。貴女に彼は重すぎる』

『なんで‥?』

『伊集院アキラは貴女の彼氏よね。前々から気づいてたの』

『そうなんだ‥。でも、アキラ君は貴女には絶対渡さない』


伊集院アキラ君と初体験をしたのは3日前である。

「琥珀、怖いのか‥?」

アキラ君は私を気遣いながら優しく聞く。

「うん。なんか‥怖くて」

アキラ君は私の髪に頬に瞼に優しくキスをしながらブラウスの中に手を入れる。

「アキラ君、待って」

私はアキラ君の手を止めた。

目の前にはベッドがある。

私は靴と靴下を脱いで素足になる。制服のネクタイを外してブラウスのボタンを外す。

スカートのファスナーも躊躇わずに外した。

ブラジャーもショーツも脱ぐと私は素っ裸になった。

男の人の前で裸になるなんて凄く恥ずかしいのだがアキラ君は愛しているので大丈夫だった。

「綺麗だ‥」

アキラ君は裸の私を見てそう呟いた。

アキラ君も服を脱いで裸になる。

アキラ君はゆっくりと私の身体をベッドに倒す。

彼は私の首や鎖骨や乳房に口づけする。

激しい痛みも愛撫も愛しい。

アキラ君の全てが愛しい。

朝が来ると裸のままの自分が死ぬほど恥ずかしい。

起きたアキラ君は私の髪を優しく撫でながらキスした。

「琥珀、昨日マジで可愛かった」

「見てたんだ‥」

「見ました」

学校に行く準備をする為に私達は急いで着替えた。




「初体験?!琥珀、マジでやったの?」

私の友人である野中凛子が初体験の事を聞いて仰天する。

高校生で初体験をするなんて別に珍しくないのかもしれない。

芸能人の初体験なんて中学生からなんてのもあるらしい。

私の身体からコハクが消えた。

コハクが本当にアキラ君を狙っていたのかはよく分からない。

凛子は紙パックの牛乳を飲みながら私に聞く。

「伊集院も童貞だったんだ。てか、あいつ何気に女知ってると思った‥」

「凛子、本当は良い人だよ」

「見た目は不良じゃん〜。琥珀、騙されすぎでしょ」

「凛子は好きな人いる?」

「いたら琥珀に教えるよ!!」

私と凛子は互いに笑いながら話した。

私はようやく本来の自分に戻れた。

アキラ君は私を愛してくれている。

それだけで十分だ。

他に何も要らないのだから。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏のアメジスト 特別編 PREラッシュ(活動休止中) @adana21

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ