044 大きな鳥と問題の人々
鼻息荒く答えていると、オレの周囲に影ができた。
雨雲かな? って思って見上げると、大きな鳥がすぐそこまで来てて――。
「わぁぁ!」
「ぴゃぅ」
コナスが慌ててオレのポケットにインした。そのまま、オレたちは大きな鳥に掴まれて、あっという間に飛び上がってしまった!
落とされたら怖いって思ったけど、がっちり掴まれてるし、それなのに痛くない。
あれれって顔を上げたら、大きな鳥が喋った。
「落ち着いているじゃないか」
「ぴゃ!」
「ぴゃぅ!」
コナス叫ばないで! オレまで声が上がったじゃない。
「ははは。驚いたか。俺はカザトリ、リア様の使い魔の一人だ」
「……わぁ! せんぱい! ムイちゃん、せんぱいにあうのはじめて!」
「そうかそうか。だが、あまり動くなよ。落としてしまう」
「ぴっ」
「はは。今度は小さいのは鳴かないんだな。主より落ち着いているようだ」
「せんぱいはコナスのことしってるの?」
「知っているとも。リア様の使い魔のほとんどが、お前を見に行ったからな」
「そうなんだー。ぜんぜんしらなかった! あっ、あのね、ムイちゃんはムイちゃんなの!」
「そうだったな。ムイちゃん、よろしくな」
「うん!」
ルシ以外で初めて出会った使い魔先輩は、すごくいい人(鳥)だった。
でもなんでオレを掴んで飛んでるんだろ。
その考えに辿り着いた時、オレは地面に降ろされていた。
「あ、リスト兄ちゃんのおやしきだ」
「そうだ。ここなら待ち合わせにちょうどいい」
待ち合わせって誰と?
オレが体を傾けていると、お屋敷からリスト兄ちゃんが出てきた。あと秘書のルソー。メイドさんたちも一緒。それから引きずられている誰か。引きずっているのは、げっ、ラウだ。
「ムイちゃん、大丈夫だったかい?」
「リスト兄ちゃーん!」
走ってくるリスト兄ちゃんにオレも走っていってドンッと抱き着いた。そしたら抱き上げてくれて、無事かどうかチェックされる。
え、どうしたの。
オレが目を丸くしてリスト兄ちゃんを見ると、ホッとした顔してる。
「なにか、あったの?」
「ムイちゃんがギルドに戻ってこないとフランから連絡があったんだ」
「え? でも、ムイちゃんたち、ひとさがしのいらいをうけてたんだよ? フランししょーのしりあいのぼうけんちゃしゃん……んんっ。えっと、ししょーとわかれて、ムイちゃんたちでさがしてたもん」
「……なんだって?」
リスト兄ちゃんが思いっきり笑いを堪えようとしてて堪えきれずにブフッと吹き出した。
オレは目を細ーくして睨んだ。
リスト兄ちゃん、わざとらしい顔でゴホンと咳して誤魔化した! んもう!
「さっきいっしょにいたの、フランししょーのなかまだもん。タックせんぱい。だから、せんぱいからみるとー、ムイちゃんゆうかいされたかんじ!」
リスト兄ちゃん、バッと振り返ってラウを見た。それからカザトリ先輩を見て「あああー」と変な声。
何かいろいろ、いっぱいいっぱい?
オレはポンとリスト兄ちゃんの肩を叩いた。どんまい。
それと、ラウに引きずられてる人を見る。
「たぶん、しょあくのこんげん?」
「おー、当たってるぞ。さすがだな、ムイちゃん」
「ラウににてるの。だから下のきょうだい?」
「待て。何故、他のは『リスト兄ちゃん』『フラン師匠』って呼んでるくせに、俺だけ呼び捨てなんだ」
「ラウはラウでいいとおもう」
「はぁ!?」
ラウはぶつぶつ文句を言いながら、引きずってきた白いコートの人を立たせる。
やっぱり似てるー。でもラウより線が細い感じ。猫背だし。
「このひと、赤ちゃんをジーッとみてたへんたいさん!」
「おうおう、そうだ。ほれみろ、お前のやってることは他人が見ると『変』なんだよ」
「わたしは変態じゃない。研究者だ」
そう言うと、リア婆ちゃんの息子らしい自称研究者さんはオレをギロッと睨んだ。
「こんな、こんな貧相な子供が
またマザコンだー。手を替え品を替え、兄弟たちはマザコンが過ぎる。ラウはちょっと違う気もするけど、拗らせてる可能性もあるので評価は保留。
もちろんマザコンは悪くないよ。オレもリア婆ちゃん大好きだもん! えへへ。
ただ変態さんにまでなるのはちょっとね?
「納得できないって言われて、へらへら笑うような子供だぞ。兄さん、なんとか言ってくれ」
「俺は別に。可愛いじゃないか。ころっとしてて。そうだ、獣姿になってみろよ」
「い・や」
「……お前ねぇ」
ラウには「ムイちゃん」を連呼しません。なんか危険な気配がするのだ。この人やっぱり拗らせタイプかもしれない。
オレは危険を回避する男。ふふん。
「やめないか、二人とも。とりあえず、カザトリよ。君はもう一度飛んでくれ。フランの仲間という冒険者に事情を話して連れてくるように」
「あの大男は運べないぞ」
「案内で構わない」
「では、行ってこよう。ただし、これはムイちゃんのためだ。リア様の息子とはいえ、あなたの命令で飛ぶのではない」
「分かっているとも」
な、なんか、いろいろあるっぽい?
オレはドキドキしながら二人のやり取りを黙って聞いていた。
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