03 勇者 vs 聖女 Round 2
勇者と聖女の旅は続く。
聖女は様々なものに興味を示し、
日の在る内に次の町に着かなかった。
そんな二人きりの夜営にて。
二人で火を囲んでいる。
私は緊張を隠し、ゆったりと構えていた。
大人の余裕というやつを演出しているのだ。
「勇者様。あの子を助けられて良かったですね。」
「あ、ああ、そうだな。
アリシアが見つけなかったら危ない所だった。」
「でも魔物からあの子を助けたのは勇者様ですよ?
凄いのは勇者様です。」
微笑むアリシアは焚き火に照らされ
幻想的に美しい。
助けた子供の父親は町の有力者だった。
父親は大変喜び、謝礼を寄越そうとしたが、
アリシアは頑として受け入れ無かった。
それでは気が済まない父親は
魔法のテントの貸与でアリシアを納得させた。
ただし貸与が無期限であることをアリシアは知らない。
父親がこっそり私だけに言ったからだ。
魔法のテントは
ワンタッチで設置、回収ができるので大変便利だ。
しかも組み立てテントより広く、くつろげる。
旅に夜営は付き物。
野宿よりテントの方が遥かに疲労の回復を図れる。
結果として効率が良い旅が出来るというものだ。
急がば回れという諺があるが、
アリシアのお節介が
良い形で結果になったものだと思う。
「さあ、明日も早い、もう寝よう。」
「はい、勇者様。」
まさかこんな事になるとは。
私達は今、同じテントで寝ている。
密室?で2人きりだ。
アリシアは既に寝息を立てている。
安心してくれているのだろう。
嬉しいような、悲しいような複雑な気分だ。
私はというと
悶々として寝れないでいた。
アリシアを見ないように背を向けている。
私は勇者である以前に騎士だ。
騎士は己を律してこそ騎士。
信頼してくれているアリシアに
不埒な事を考えるなど言語道断。
こうなった経緯を思い返えす。
私は外で寝るつもりだったのだが、
アリシアが一緒に寝ようといい出した。
『聖女の結界』
聖女のスキルの一つで、
解除するまで敵の攻撃を防ぐ。
また聖なる気を放出し、魔物を遠ざける。
このスキルを使えば見張り要らずだ。
更に私の『勇者の守り』を重ねれば
そうそう結界を破られる事も無い。
つまりは、起きている必要がない。
こともあろうか
アリシアから一緒にテントで休んだほうが
合理的と言われてしまったのだ。
しかしこれはなんだ!?
欲望を抑える鍛錬か!
そうだ、鍛錬だ。これは修行なのだ。
いずれはなんとも思わなくなるだろう。
それもイヤだな。そんな朴念仁には成りたくない。
そして、いずれも何も今は免疫がない。
問題は今である。
寝よう。寝る努力をしよう。
よし、そうと決まれば早速寝よう。
寝れん!
寝息が悩ましい。
「ん、…… んん。」
寝言か?
なんか色っぽく聞こえるな。
ますます意識は背後のアリシアに向かってしまう。
どんな夢をみているのだろうか?
「ゆ……しゃさ……」
私か? 私の夢を!?
なんか嬉しい。
その事実だけでも一緒に寝た甲斐が在るというもの。
「そんな……おおきす………す。 ……ぁん………はいりきら………」
な、な、な、なんの夢だ!?
どんな夢を見ているのだ!
夢の中に入れたら…
しかし勇者のスキルにそんなものはない!当然だ。
「……すごく…………いです。」
律しろ、私は騎士だ!騎士なのだ!
アリシアは私を兄の様に慕ってくれているだけなのだ!
ぐぅ、それはそれで嬉し悲しい。
「もぅ…………いっしょに……」
おおお!?
ヤバい勃ってしまった。
「ごめんなさい……ゆうしゃさ……」
なにが起きた!(夢の中で)
気になる!非常に気になる!
私は結局寝れなかったので
こっそりテントから抜け出し夜風で体を冷ますと
そのまま外で横になった。
もっと早くにこうすれば良かったのだ。
アリシアは寝てしまっているのだから
抜け出しても気づかれない。
後ろ髪引かれる思いもあったが、
それ以上に敗北感を感じた。
そう、私は逃げてしまった。
そんな私が勇者を名乗るなど、
おこがましいにも程がある…………
いつの間にか寝ていたらしい。
目覚めたのは早朝。
たいして寝ていない筈なのに
疲れが抜けているのは
聖女の結界の中だからかもしれない。
テントの方を見る。
修道女として修行をしていたアリシアの朝は早い。
まだ暗いがすでに起きている。
日課の祈りを捧げているのだろう。
私の方はお湯を沸かす為、火を起こす。
朝食は硬いパンだが、
スープにパンを浸け、柔らかくして食べるのだ。
やがてアリシアがテントから出てきた。
「勇者様おはようございます。」
「おはよう。アリシア。」
今日もアリシアの笑顔が眩しい。
汚れている私には勿体ない。
罪悪感と共に簡単な料理をしている私を
楽しげに眺めていたアリシアだったが
不意に、
「勇者様!食べ過ぎはダメなんですからね。」
と言った。
了
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アリシアの夢はこんな感じ
「勇者様、私も大食い大会にでるんですか?」
「そんな! お肉が大きすぎます。 あん、お腹に入りきらないです。」
「これは!すごく美味しいです。」
「もうお腹いっぱい。一緒に食べきると約束したのに!」
「ごめんなさい。棄権します勇者様」
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winner 聖女
決まり手:勇者の自爆(ある意味暴発)
なお勇者は夜風に外に出た際
やたらスッキリした顔で戻って来た。
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