J.K.C.Kって何ですか
朝、自宅を出て扉を閉めると、そこに一枚の張り紙があった。
「J.K.C.Kは2階の205号室
放課後、必ず来ること
奥原美里愛」
こんな感じで堂々と書かれた紙が、セロテープで貼りつけられていた。僕はため息をしながら、紙をはがす。これが、昨日の契約と関係あるものなのか。
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放課後を告げるチャイムが鳴るとともに、僕は他の生徒たちと共に教室を出たが、足早に帰っていく生徒たちとは違い、窓の外に視線を預けた。
マジでこれから、このJ.K.C.Kとやらに付き合わなきゃいけないのかと思うと、ちょっと憂鬱になって、スンナリと205号室へ行く気にはなれなかった。無論205号室は行ったことない。おそらく文科系の部活や少人数の授業とかで使う、特殊な教室か何かだろうけど。
「何黄昏てるの」
美里愛ちゃんらしき声が聞こえた。次の瞬間、有無を言わされることなく右手を強引につかまれた。ちょっと待って、僕、今、人生で初めて女子と手をつないだ?
「うわあ、何でえええええ!」
僕は恥ずかしさのあまり、つないだ手を振りほどこうと激しく抵抗した。しかし、彼女の腕力はやっぱり凄まじく、全く手が離れる気配がない。完全に右手を封じられてしまっている。
「何よ、これからお手伝いしてもらうだけでしょ」
美里愛ちゃんが憤りの声をあげるけど、そんなのに構っていられない。とにかく、205号室とやらに付き合うから、その手を離してほしいだけ。
気がついたら、周りの生徒たちも僕と美里愛ちゃんを見て、嘲笑したり、好奇の目で眺めたり、うるさいなとばかりに嫌そうな顔を向けたりしている。
「契約書で決めたでしょ。さっさと来なさい」
美里愛ちゃんが冷たく僕を一喝した。
「ええっ、契約!?」
「こいつら、入学二日目でもうそういう関係になっちゃったのかよ!?」
あちこちから冷やかしの声が聞こえる。
「お願いだから余計なこと言わないで!」
「アンタがついてこない限り、もっと余計なことしちゃうよ。例えば」
美里愛ちゃんはそう言うと、ブレザーのボタンを外し始めた。まさか、また脱ぎだすのか!?
「ダメダメダメダメ!」
僕は全力で声を上げ美里愛ちゃんを止めた。
「何?アンタを黙らせるための武器を出そうとしただけ」
「武器?もしかしてスタンガンか何か!?」
僕は美里愛ちゃんからさらにハイレベルな嫌がらせを受けると思い、さらに抵抗した。
「落ち着きなさい。スタンガンなんかじゃないわよ」
「じゃあ何だよ?」
「これ」
美里愛ちゃんは改めてポケットから「武器」を取り出した。それは昨日の契約書だった。やっぱりこういう書類は、連なり過ぎた文字で目が痛くなる。
「ちなみにこれ、裏にも特約あるの知ってた?」
「裏にも特約?」
普通の契約書ではおよそありえないと思うセリフだった。彼女は契約書を裏返す。そこにはこう書いてあった。
「もし、J.K.C.Kアシスタントとしての務めを無断で放棄した場合、セクシーなコスプレを3パターン決めながら校内を10周ずつしてもらいます。」
それはブラックホールのように恐ろしい現実だった。
「ねえ、セクシーなコスプレって例えば」
「スクール水着、女子の」
美里愛ちゃんは大勢の生徒の前で躊躇なく言い放った。
「スカートとかついてないやつ」
いらない補足情報までつけてきた。
「嫌とは言わせないから」
美里愛ちゃんは真顔で言い放った。こんなの、やっぱり拷問だ。僕は抵抗する意思を失い、大人しく彼女に連れて行かれた。
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