隣人の彼女が必要以上に見せたがりで困ってます

STキャナル

プロローグ: どうしてあんなものを見てしまったんだろう?

 僕は見てしまった。禁断の聖域を。

 唐突な疾風が、彼女のスカートの奥に眠る秘密をさらしたのだ。

 濃厚な桃色と優美な桜色のストライプだった。かわいい。


 そんな分析をしている場合じゃない。これは非常事態だ。

 もう一度言う。僕は禁断の聖域を見てしまった。人生でそんなものを見てしまうなんて、夢のまた夢にも思わなかった。

 それは、アダムとイヴがリンゴをかじっちゃったのと同じノリだ。確かアダムとイヴは蛇がけしかけてそうしちゃったんだっけ。だとしたら、風がそのときの蛇みたいに僕に女の子のスカートの奥を見ろとけしかけてきたんだ。


 僕は不覚にも、それに従ってしまったんだ。顔の内側が熱い。

 前を歩く女の子は、自分のスカートの奥がさらされたことに気づき、後ろの方を手で押さえる。彼女が僕の方を振り向いた。わずかにツンとした目ながら引き締まった鼻、控えめな血色の唇、透き通らんばかりの肌。整った顔立ちからは、感情をそこまで表に出さない印象がうかがえた。


 それでも気まずい。もしかして怒られちゃう?「見てんじゃねーよ」とか冷たい感じで言われちゃう?


 女子は、真顔で僕を指差した。僕の顔に何かついてますか?


「鼻血」


 突拍子のないワードに僕はリアクションに困った。


「鼻血が出てる」


 まさかと思い、鼻の下を指でさっと拭くと、立派な深紅の液体がついていた。確かに僕は、女子のパンツを見て鼻血を流していた。


 入学式から約2週間後、工藤高校に向かう途中のワンシーンであった。

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