【完結】姫さまと宮廷料理人。ちょくちょく騎士副団長。あとから暗殺者

おかぴ

1. ショートケーキとガトーショコラ

登場人物紹介


  アサクラ:オルレアン王国宮廷料理人

  デイジー:オルレアン王国の姫

バルタザール:王国騎士団副団長

 ジョージア:オルレアン王国宮廷料理人補佐


     王:そのまんま

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 ここはオルレアン王国の厨房。宮廷料理人のアサクラは、今日も国王オルレアン三世のため、料理の腕をふるっている。アサクラは部屋の中央に位置する調理台の前で、ケーキの最後のデコレーションを仕上げていた。


 真剣な眼差し……それこそ、熟練の剣士同士が命を削り合うときのような顔つきで、料理人アサクラが作り上げている料理は、国王が三時のおやつにと所望したスイーツ、ショートケーキだ。白の割烹着を身にまとい、頭には白の三角巾という、自身の故郷のコック姿に身を包んだアサクラ。彼は、その牧歌的な姿には似つかわしくない戦士の眼差しで、自分が持つ生クリーム絞り機から、純白の生クリームを絞り出している。


 アサクラの目の前にあるのは、同じく純白の生クリームで包まれたケーキの土台。ふっくらと焼き上がり、たくさんのいちごを内に秘め純白の生クリームをまとったその土台は、今、アサクラの手によって生クリームによる装飾を施されている真っ最中である。


 殺気を感じるほどの鋭い眼差しで最後のデコレーションをやり終えたアサクラは、次に緑のヘタを切り落とした大振りないちごを、そのケーキの上に飾り始めた。緊張のためか、はたまた戦士としての矜持のためか、いちごを持つアサクラの手は、少しだけぷるぷると震えている。


 6つのいちごを飾り終え、アサクラの表情にやっと安堵が訪れた、その時だ。


「アサクラっ!!!」


 厨房のドアが、ドバンと音を立てて勢いよく開いた。特に慌てる様子もなくドアの方を向いたアサクラの表情は、次の瞬間、苦虫を噛み潰したかのように苦々しく歪んだ。


「何だ姫か」

「毎度ながら何だとは何ですかアサクラっ! それが姫に対する態度ですかっ!!」

「何の用だ。俺は今、王のおやつを作るのに忙しい」


 ドアを開いた人物……それは、この国の姫デイジーである。プラチナの小さなクラウンを頭に乗せ、薄いピンク色のシルクのドレスに身を包んだデイジー姫は、額から汗を垂らし、ハァハァと息を乱していた。


 本来なら、来訪した吟遊詩人が思わず歌を作ってしまうほどの美貌を兼ね備えたデイジー姫。美しく輝く、金よりもクリーム色に近いストレートの髪……意志の強そうなキッとした目には、澄んだ湖のように深いブルーの瞳……その美貌は見る者を例外なく魅了する……はずなのだが、今のデイジー姫は、その美しい表情を、まるで地獄の底に巣食うデーモンのそれのように歪ませている。彼女は厨房をキョロキョロと見渡し、ドレスのスカートの裾を持ち上げ……


「アサクラ! ちょっとそこに隠れさせなさい!!」

「?」


 アサクラの元まで走ってくるとその場でガバッとしゃがみ込み、アサクラの足にしがみついた。厨房のドアからは今、デイジー姫の姿は死角になって見えなくなった。


「? どうした?」

「シッ! ここに私がいることは秘密です……!!」


 怪訝な顔でデイジー姫を見るアサクラ。デイジー姫は不信丸出しのアサクラを見上げると、人差し指を自分の口に当てて『シーッ』と言った。


「姫ッ!!!」


 その直後である。厨房のドアが再びドバンと開いた。アサクラが再びドアを見ると、そこにいたのは鎧を着た騎士副団長、バルタザールである。彼もデイジー姫と同じく眉間にシワを寄せ、額からは汗が垂れていた。騎士団の副団長という重要なポストにいながら、歳はデイジー姫より若干上な程度で、若くして出世街道をひた走るエリートだ。


 丹精で整った顔つきをしてはいるが、デイジー姫からは『蓼食う虫すら食わないレベルの苦味を感じる顔』とのこと。少なくともデイジー姫には、彼の顔は好みではないらしい。


 ちなみに彼の愛称は『バル太』。命名者は他ならぬデイジー姫姫であり、バル太本人はこの呼び名を嫌がっている。しかし命名者が姫であり思いの外皆に浸透してしまったため、『やめてくれ』と訴えても誰もやめてくれない状況である。


「ぉお、アサクラ様」

「どうしたバル太」

「いい加減その呼び名、やめていただけませんか……それよりも! 今、姫がここに来られませんでしたか!?」

「姫がどうかしたのか」

「どうしたもこうしたもありません……実は、今日は姫のお婿様を決めるお見合いがあったのですが……」

「初耳だ。通りで王の機嫌がよかったのか」

「ええ……お相手もこの国随一の資産家のご子息……家柄も人柄も申し分ないお話だったのですが……」

「うむ」

「あろうことか、姫は途中で席をお立ちになり、お相手のご子息に向かって全力であっかんべーってやったあと、行方知れずになりまして……」

「なるほど」


 ここから忌々しい思い出を語るかのような渋い表情のバル太の恨み節が始まった。アサクラは、バル太の視線が自分から外れたその瞬間、ちらと自分の足元を伺う。自分の足元には、悪魔のような女デイジー姫が、ニシシと笑いながらアサクラを見上げている。そんなデイジー姫の美しくかつ邪悪な笑みを見て、アサクラは、自身のこめかみあたりにひどい頭痛の兆候を感じた。


「というわけでお見合いは台無し……ご子息も待ちくたびれておりまして……」

「……」

「アサクラ様、もし姫を見かけたら、私に教えていただきたいのです」


 バル太のこの言葉を聞いた瞬間、アサクラの左足のくるぶしに痛みが走った。


「いッ……!?」

「アサクラ様?」

「……いや、なんでもない」

「?」


 バル太にさとられぬよう、アサクラが自身の足元を伺うと……デイジー姫がアサクラのくるぶしを、その無駄に長い人差し指の爪でグリグリとえぐっている。


 デイジー姫の顔が告げる。『バラしたら殺す』


「よろしくおねがいします! 俺はもう少し城内を探りますので!!」

「お、おう」

「では失礼っ!!」


 バル太はそこまでいうとアサクラに敬礼をして、また鎧をガシャガシャと鳴らしながら厨房をあとにした。その足音に焦りと苛立ちを感じたのは、おそらく自分だけではないだろうとアサクラは思ったのだが……


「いやー助かりました!! ありがとうございます!!!」


 ここに一人、例外がいたことをアサクラは思い知った。デイジー姫はバル太が厨房から出て行ったことを確認した後、とても爽快で清々しい笑顔で立ち上がる。その表情に、自身の行いの後悔は微塵もない。むしろひと仕事終えたあとの爽快感すら感じる。その様は、アサクラの頭の質量を1.5倍ほど増加させた。


「姫……お見合いをぶち壊してきたのか」

「いけませんか?」


 ひどく痛む頭から、やっとアサクラが絞り出した言葉に、さも当然のように笑顔で切り返すデイジー姫。改めて言うが、その表情に後悔や悔恨はない。


「だってお前……もう19だぞ」

「もうすぐハタチだぜヤッフォーイ!」

「将来はこの国を預かる身だろう?」

「将来は王女様よりも女王様と呼ばれたいっ。いや呼ばせたいっ!!」

「ならそろそろ婿を迎えることも考えなくてはならんだろうに」


 アサクラのその台詞を聞いた途端、デイジー姫はアサクラの隣に並び、アサクラと肩を組んだ。その後、苦虫を噛み潰した顔をしているアサクラの耳元で、こそこそと内緒話を始める。通常、デイジー姫ほどの美人に耳元で囁かれると、男性の場合は例外なくその女性のとりことなるはずなのだが……


「それがですねアサクラ。聞いてくださいよ」

「耳元でしゃべるな……息がくすぐったい」

「今から話すことは……私とあなただけの秘密ですよ……?」

「がんばってウィスパーな声を出しても、お前に妖艶な雰囲気は似合わん」

「ふーっ……」

「邪悪な息を私に吹きかけるのはやめろ」


 デイジー姫が言葉をささやくたび、アサクラの表情に不快感が溜まっていく。常日頃、デイジー姫の傍若無人っぷりに悩まされるアサクラにとって、デイジー姫の耳打ちというのは不快以外の何者でもない。


「相手の男性なんですけど、私の好みではないんですよ」

「どうして。お前ごときにはもったいない相手だそうじゃないか」

「いや私もね。いい物件だと思いますよ? 女王の伴侶としては申し分ない相手だとは思うんです」

「物件て言うな。……でもまぁそれならいいじゃないか。どこに断る理由があるんだ」

「いやぁ、その人、金色のりっぱなカイゼル髭を蓄えてらっしゃったんですけどね?」

「貴族だからなぁ」

「今どきカイゼル髭はないでしょうよ」

「どうして。立派なカイゼル髭ってことは、手入れも行き届いているだろう。それだけおしゃれに気を使う素敵な殿方ではないか」

「いやカイゼルはないでしょうカイゼルは。アサクラだって、カイゼル髭の女の子なんか嫁にほしいと思いますか?」

「その前にカイゼル髭を普通に蓄えてる女に出会う確率が限りなくゼロだけどな」

「ちょび髭なら考えたんですけどねー……」

「なんだお前、ちょび髭フェチか」

「いや、いいおもちゃになってくれそうで」

「そんな理由で婿を決めるつもりなのか……」

「そんな理由でもない限り、許嫁なんて作る気になれませんわーッハッハ」


 頭を抱えるアサクラのその横で、デイジー姫は高らかに笑う。余談だが、デイジー姫の特技は高笑いであり、彼女の高笑いが聞こえた場合、それは後に災厄が訪れるサインであると、アサクラは思っている。


 頭を抱えるアサクラを尻目に、デイジー姫は調理台の上を眺めた。そこには、今しがたアサクラが丹念に仕上げていた、ワンホールのショートケーキが置かれてある。


「おっ。アサクラ謹製のショートケーキですか」

「……あ、ああ。国王がご所望でな。ワンホールまるごとをスプーンで食べたいそうだ」

「そろそろ生活習慣病を心配しなきゃいけない年齢だろうに……」


 そんな言葉をアサクラと交わしつつ、デイジー姫はとことことショートケーキの前に移動した。そして、右手を高々と掲げ……


「おりゃっ!!」

「……」


 そのままケーキに向かって勢いよく振り下ろし、そしてケーキに中指をぶすりと突き刺した。ただただ虚無感に包まれた眼差しでその様を見守るアサクラの前で、ケーキをそのまま中指でえぐり取ると……


「んー……おいしい。さすが我が国の宮廷料理人ですね。国王たる父が生活習慣病の危険を犯してでも食べたくなる気持ちがわかります」

「……」

「甘々な生クリームにいちごの酸っぱさが絶妙にマッチして……て、アサクラ?」

「……」

「どうしました?」


 虚無に陥ったアサクラの様子に気がついたのか、デイジー姫はアサクラを振り返った。その時、瞳孔が開いたアサクラの目に飛び込んだのは、口元に生クリームをつけたままの、デイジー姫の忌々しい満面の笑顔。


「お前なぁ……」

「なんです?」

「それ、国王のケーキだぞ」

「知ってますよ?」

「つまみ食いはやめろとあれほど……」

「だってこうすれば、父はこのケーキを食べられない。イコール、生活習慣病にかからない」

「……」

「つまり! 私は父の命を救ったということですよ!!!」


 デイジー姫は悪びれる風もなくそこまで言い切ったあと、再びアッハッハと高笑いした。


 実は、このような悲劇は何も昨日今日始まったわけではない。デイジー姫は折りに触れこの厨房に遊びにやってくるのだが、そのたびにアサクラが作る料理をつまみ食いしていく。


 一度国王にせがまれ、アサクラは謁見の間で皆が見守る中、故郷の料理である『タコ・ヤーキ』を作ったことがある。水で溶いた小麦粉を専用の鉄板で一口サイズの球形状に焼き、内部にクラーケンの肉を入れた、アサクラ渾身のお昼ごはんだったのだが……


 一口サイズというのがいけなかったのか、アサクラが焼き上げた『タコ・ヤーキ』を、その隣でデイジー姫が片っ端から食べ続けるという悪夢が繰り広げられることになった。その日の昼食は、国王以下デイジー姫以外の全員が食べることが出来なかった。


 後にアサクラは語る。『皆が沈む中、一人満足げに爪楊枝で歯の掃除を行うデイジー姫の笑顔は、今まで見た何よりも狂気を感じた』と。


 そんな経験を何度もしているアサクラだから、今回、デイジー姫がつまみ食いでケーキを台無しにすることも、実は読めていた。ひとしきり虚無を堪能したあと、アサクラは高笑いするデイジー姫をその場に残し、木で出来た古い食料貯蔵庫の前へと向かう。


「ほ? アサクラ?」


 高笑いをしていたデイジー姫がアサクラの様子に気付くが、アサクラは気にしない。そのまま食料貯蔵庫を開き、中にしまってある、一皿を取り出した。


「あ! ガトーショコラ!!」

「……」


 こんなこともあろうかと、このショートケーキを作る前にアサクラが作っておいた、ガトーショコラが姿を見せた。貯蔵庫から取り出したガトーショコラに先程のショートケーキのデコレーションに使った生クリームの残りを絞り出し、アサクラは呆気にとられるデイジー姫の目の前で、ガトーショコラを完璧に仕上げた。


「ズルいですよアサクラ!! ガトーショコラを隠しているだなんて!!」

「何がズルいだ!! 私が作ったショートケーキに中指突っ込んで台無しにしやがって!!」

「だって美味しそうなんだもん!! 私は悪くないです!! むしろ悪いのはあんなショートケーキを作ったアサクラだ!! 私は被害者だ!!!」

「誰が被害者だ誰が!! たとえこの国の国民全員を敵に回してでも私は有罪の木槌を叩き続けてやる!! そらぁもうせわしなくカンカンとな!!!」

「しかもなんでガトーショコラなんですか!! 私が苦いのが苦手なのを知っていて!! 嫌がらせですか!!」

「しかもビターな味わいがうれしい大人向けの逸品だ」

「クッ……これも私につまみ食いをさせないのが狙いか……小賢しい……ッ!!!」

「カッカッカッ」

「この国の姫として命じます!! 2秒でそのガトーショコラを激甘ショートケーキに変えなさい!!!」

「それが無理なことはお前自身がよく分かってることだろうが。カッカッカッ」

「……チイッ!」


 ひとしきり言い合いをしたあと、デイジー姫は腕を組んでアサクラに背中を向ける。その背中からは憤怒の炎が立ち上がっているのがアサクラからは見て取れた。だが、その原因が、アサクラが腹立たしいからなのか、はたまたケーキがビターなガトーショコラだからなのかはさっぱり分からない。しかしどうせ後者だろうこの女ならとアサクラは思いながら、ガトーショコラを国王に運ぶ準備を整えた。


 国王専用、黄金の先割れスプーンとガトーショコラの準備が整った。さぁこれから国王の元へと持っていくかと、アサクラがワゴンにそれらを乗せたときだった。


「……ぁあ、そういえばアサクラ」

「お?」


 いつの間にか憤怒の炎が消えていたデイジー姫が、アサクラを呼び止めた。さっきまでの憤りは一体どこへ消えたのだと呆れながら、アサクラはデイジー姫を振り返る。


「私は今日、お見合いでした」

「それがどうした」

「まぁ確実に振りますけど。いやすでに振りましたけど」

「カイゼル髭さえ我慢すればいい相手だったろうに……」

「そういうあなたはどうなんですか?」

「何がだ」

「あなたは意中の女性とかいるんですか? 将来を誓い合ったお相手みたいなのは」


 ほくそ笑むデイジー姫に対し、アサクラは不快感を募らせた。アサクラはこの国に来てまだ数年ほどしか経過しておらず、しかもその間、この厨房にずっと籠もりきりだった。そのため城内にしか知り合いがおらず、年若い娘と知り合いになるイベントなぞ、そうそう起きるはずもない。


「……そんなのは、いないっ」


 故に、今のアサクラにはそう言い返すしか出来なかった。ここで適当にごまかすこともできるだろうが、元来、アサクラは正直な男である。わざわざ意味のない嘘をつく気には、どうしてもなれなかったのだ。ただ、それをこのデイジー姫に知られるというのが、どうにも腹立たしいだけで。


 ある意味ではアサクラの敗北宣言ともとれるこの返答は、デイジー姫の顔を醜く歪んだ笑顔にするには充分だったようだ。デイジー姫は広角を持ち上げ、口が上下に引き裂かれたかと思えるほどにニタリと笑った。


「ほう。いないのですか」

「……ああ、いない」

「私にはお見合いの相手がいるというのに、あなたにはいないのですか」

「いない……ッ!」


 これ以上、この女に付き合っていても不快感が募るだけだ……そう判断したアサクラは、自分に向かって不愉快この上ない微笑みを向けるデイジー姫に背を向けた。三時のおやつの時間はもうかなり近い。そろそろこのガトーショコラを持っていかなくては、国王がぐずりだしてしまう……その思い、アサクラはガトーショコラと先割れスプーンが乗ったワゴンを押し、厨房を出ていこうとした。


 その時だ。


「仕方ないですねぇ。もしアサクラが三十路になっても独身だったら、私があなたを嫁にもらってやりますよ」


 こんなおぞましい台詞が、デイジー姫の声で、アサクラの耳に届いた。後ろを振り返りたい衝動にかられたアサクラだったが、意識を強く持ち、そのままワゴンを押し進める。振り返ってはならない。振り返れば、おそらくそこでは、デイジー姫がこちらの逆鱗をざらざらと乱暴にさすってくるような満面の笑みをしていることだろう。アサクラは鉄の意志で、振り返りたくなる気持ちをグッと抑えた。


 しかし、口だけは我慢出来なかったようだった。


「……ないわー」

「は!?」

「お前と私が夫婦……ないわー」

「姫ですよ!? ゆくゆくはこの国の元首ですよ!? 国のすべてを意のままに操る女の嫁なんですよ!?」

「お前との仲睦まじい結婚生活……ないわー……」


 つぶやくようにそう言うと、アサクラはデイジー姫をその場に残し、厨房を後にした。国王へとガトーショコラを運ぶその道すがら、アサクラが思ったことは、ただ一つ。


――30になる前に、あいつに自慢出るような女性と出会うぞ……

  そして結婚せねば……でなければ、地獄が訪れる……


 戦争が頻発する極東の国で生まれ育ち、いくつもの戦場を駆け抜け、傭兵としてこの地に渡ってくるという経緯を持つアサクラだが……この日ほど、自身の身の危険と将来の不安を感じたことはなかった。

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