第41話 トリック解明
「まずは爆発させたトリックから話しましょう」
「非常に気になります。どのように爆発させたのでしょうか」
「そんなに難しい仕組みじゃない。結構単純な仕掛けだよ」
式はポケットの財布から10円玉を取り出した。
「この10円玉でトリックを再現してみます。完全再現にはなりませんが、まあ理論だけでもわかってもらえたら十分です」
式は10円玉に紐を巻き付けた。
「こうやって10円玉に紐を巻きつけます。そしてこの紐を蛍光灯の隣につけます」
隼人の力を借りて、式は天井に紐を付けた。
「次に紐を巻き付けた10円玉をポスターの裏にあった丸い窪みのところに持ってきます」
窪みに10円玉をセットする。
「そして手を放す。すると……」
式が手を離すと、10円玉は弧を描くように動き、床を少し擦りながら部屋のスイッチに当たった。
その衝撃で部屋の電気が切れる。
「こうすれば、部屋の電気を消すことができます」
「なるほど。電気のスイッチを入れることで火花が散って、ガスが充満した部屋を爆発させることができるということですね」
「それだけじゃなく、この10円玉が床を擦るから、その摩擦によっても火花が生じる可能性もあるから、二重の仕掛けになっているんだ」
実際には10円玉ではなく、丸い鉄球のようなものを使ってトリックを実行したのだろう、と式は説明する。
「部屋を爆発させたトリックはわかりましたが、それを実行した犯人は誰なのですか?」
「このトリックが実行された証拠として、部屋の右隣の壁にある窪みがあったよね。右隣の部屋といえば、何があるかというと……」
式はある人物に視線を向けた。
「あなたの部屋がありますよね、樅さん」
式が名指しした人物は、松永楓の姉の樅だった。
「た、確かに私の部屋があるけど、それがどうしたのよ」
「つまり、あなたが犯人だと言っているんですよ」
「なっ……」
式の言葉に樅は冷や汗をかく。
「わ、私が犯人って、どうして」
「このトリックがあなたしかできないからです。この部屋の右隣の部屋にいたあなたしか」
「何で私しかできないのよ」
樅が反論する。
「さっきのトリック実践では俺は10円玉を使いましたが、実際には鉄球を使ったと言いましたよね。仮にそうだとすると、鉄球をあの窪みに固定するにはあることが必要なんですよ」
「言われてみれば、あのトリックを実行するためには、鉄球を窪みに固定する必要がありますよね。そうでなければ、実際にあの部屋にいなければこのトリックは実行できないことになります。それを回避するためには、自動操縦ができるようにする必要がありますね」
「そう。そしてその方法が、磁石で固定することだ」
式は再び窪みに10円玉を置き、実際に行われたトリックの説明を始めた。
まず鉄球をこの窪みにはめ込む。次に一時的にテープか何かで固定しておく。
そして樅の部屋に行き、磁石を楓の部屋の鉄球をはめた部分にセットする。こうすることで、磁石の磁力によって鉄球は固定されるようになる。そしてまた楓の部屋に戻り、一時的な固定をしていたテープをはがす。
これで準備は完了だ。
「この動作を予め行うには、楓さんが寝ている昼間に行うしかない。それができるのは仕事が夜勤で昼間に家にいるあなただけだ」
「ちょっと、そんなことで私が犯人にされなきゃならないの!? 私よりも犯人に違いない人物がいるじゃない」
「それは誰ですか?」
「あのストーカーよ!!」
樅が声を荒げる。
「あのストーカー男が犯人でしょ。あいつが家に侵入してさっきの仕掛けをして妹を殺したのよ!」
「そんなストーカー存在しませんよ。あれはあなたの変装です」
樅のストーカー犯人説に反論する。
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