第21話 事件の詳細

 式たちは隼人に連れられ、会議室に案内された。


「隼人さん、いつもすみません」

「いや、君たちの意見が聞けるのは僕らにとっても収穫なんだ。特に今回は容疑者の友人もいるというし」


 隼人が春﨑に視線を向ける。


「この事件って、隼人さんが担当してるんですか?」

「いや、僕じゃない。この事件は畠山が担当している」

「畠山さんって、メイド館の事件にも来ていたあの人ですよね」

「ああ。だから詳しい話は彼女からきいてくれ」


 数分後、畠山薫が入室してきた。


「あ、メイド探偵会の皆さんお疲れ様です!」

「メイド探偵会?」

「はい。明戸高校探偵会を略してメイド探偵会です。以前メイド館の殺人も解決しましたし、ぴったりですよね」

「は、はあ」


 相変わらず合わなそうな性格だな、と式は思った。


「それで畠山さん、事件の詳細を聞かせてもらえないでしょうか」

「あ、はい。ではこの資料を見てください」


 資料を見せながら、薫は事件の詳細を語った。

 被害者の名前は河本雄太。

 死体が発見されたのは本日の十時頃。普段なら学校に通っている時間のはずなのに、一向に部屋から出てくる様子がないのをアパートの管理人が不審に思い、鍵を開けて確認したところ被害者が倒れてているのが発見された。


 発見時の被害者の様子は、腹部を包丁で刺されていて、そこから多量の血が流れ出していたという。

 管理人はその様子を見て救急車と警察に連絡を入れたものの、救急車が到着した頃には既に事切れていた。

 検死の結果、死亡推定時刻は昨日の午後十時頃。死因は腹部を刺されたことによる出血死である。


 凶器に使われた包丁には、とある人物の指紋が付着していた。しかしそれは被害者のものではなかった。

 警察の捜査によってこの指紋の該当者を捜した結果、当てはまる人物を見つけることができた。

 それが今回の容疑者として逮捕された、春﨑の友人である奥田陽子だった。

 奥田陽子に話を伺ったところ、彼女が犯行を認めたことで、逮捕まで至ったという。


「どうですか、式さん。現場にあった凶器から彼女の指紋が検出され、そして本人に問いただしたら犯行を認めたんですよ。これはもう捜査の必要もなく事件は解決したと思いませんか」

「うーん、まだそう結論づけるのは早いと思いますが」


 いろいろと思うところがある式が言った。


「何か引っかかることがあるんですか?」

「その前に聞きたいんですけど、奥田陽子さんについて、彼女の友人や学校の教師などから何か話を聞きました?」

「いえ、彼らから話を聞く前に容疑者に話を伺ったところ、自白したのでそのまま逮捕したんです」

「なるほど」


 式は少しの間考え込み、


「すみません、一日だけ待ってもらえませんか。ちょっと調べたいことがあるので」


 と言った。


「ま、まあ一日だけなら」

「ありがとうございます。ではまず当の奥田陽子さんと話をしたいんですが」

「園田警部、どうします?」


 薫の担当事件ではあるが、一応上司の隼人に確認をとる。


「構わないよ。ただし時間は三十分までとする」

「それで十分です。行こう二人とも」

「うん。陽子が犯人じゃないってこと、必ず証明する!」


 春崎は意気込んでいる。

 式たちは隼人に案内され、奥田陽子が待つ部屋へと向かった。

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