第20話 女子高生逮捕
放課後、式は探偵会の部室を訪れていた。
探偵会が設立されて以降、式たちは事件がないか確認するために毎日部室に訪れていた。事件があれば依頼人に会いに行き、特になければ解散という日々である。
「そんな頻繁に事件なんてないと思うけど……」
特に期待せず、式は部室のドアを開けた。
「あ、式くん来た!」
部室には、探偵会のメンバーである春﨑桃子の姿があった。
「あれ、春﨑さん。今日はボランティア部の活動じゃなかったの?」
「式くんお願い、助けて!」
目に涙を浮かべながら春﨑が式に抱き着いた。
「ちょ、ちょっと一体どうしたの」
同級生の女子に抱き着かれたことなどない式は、その行動にたじろぐ。
「春﨑さんの友人が逮捕されてしまったのです」
同じく部室に来ていた榊が言う。
「逮捕?」
「ええ。今朝ニュースで流れていましたよね。男子高校生が自宅のアパートで亡くなっていたというのを」
「ああ、見た覚えがあるな」
式は朝見たニュース番組を思い出した。
「その被害者には恋人がいたようなのですが、その恋人が春﨑さんの中学生時代の同級生らしいのです」
「そうなんだ……」
「それでその彼女が犯人だという決定的な証拠が出てきたそうで、つい先ほど逮捕されてしまったとか」
「そんなことがあったんだね」
気の毒だな、と式は思った。
「それで、なんで俺に助けてって言ったの?」
「だって、あの子が殺人なんてするわけないもん!」
「春﨑さんはこう言ってますが、当の本人は『自分が犯人だ』と供述しているようです。決定的な証拠が見つかって、かつ本人も自白しているなら、彼女が犯人で間違いないと思うのですが……」
「……」
二人の話を聞いて、式は考え込む。
普通に考えれば榊の言う通りだ。春﨑の発言は感情論でしかなく、「あの子が殺人なんてするわけない」という論が通るわけがない。
それに加えて本人が犯人であると自供しているという。これは誰がどう見ても事件が解決しているように見える。
「春﨑さん、厳しいことを言うかもしれないけど、彼女が犯人ではないという根拠はあるの?」
「……理論的な根拠はないよ。でも私はあの二人がすごく仲が良くて、喧嘩すら碌にしたことがないのを知っているの。だからそんな二人が、殺人なんて起こすわけがないって思ってる」
「ちなみに、その決定的な証拠って何だったの?」
「凶器に彼女の指紋が着いていたようです」
「指紋か、うーん」
どうやら式には少し引っかかるところがあるようだ。
「では行きましょうか」
「え、どこへ」
「もちろん、調査ですよ。隼人兄さんに頼んで容疑者や現場の様子を撮影した写真などを用意してもらいました」
「相変わらず、無茶苦茶な頼みをするなあ」
「お願い式くん。それらを確認して真犯人を見つけ出して!」
懸命に頼む春﨑に、式は戸惑いながらもあくまで冷静に言う。
「わかった。隼人さんが許してくれるなら俺も出来る限り協力するよ。でも俺がやるのはその被害者の無実じゃない。誰が犯人なのかを推理することだ。だから俺が確認してそれでも犯人が彼女であるということもあり得るよ」
「……わかった」
涙ぐむ春﨑を連れて、式たちは警察署へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます