オドバシ男

ヤクバハイル

第0話 アバン、タイトルまで

○朝の秋葉原上空・午前七時

朝の陽の光を受けるビル群。

上空からの秋葉原の眺め。

道路ではランニングする人や車が行きかう。

高層マンションの一角、最上階にカメラが近づく。


○最上階、安藤の部屋・午前七時

安藤、ベッドの中で目を覚ます。

ベッドルームの脇にある目覚まし時計が鳴る。手が伸びて時計の上のスイッチが押されて止まる。

彼が身を起こすとパジャマの下半身が膨らんでいる。トイレへ小走り。

彼が移動する部屋の背景にはところどころに美少女フィギュアを入れた棚が並んでおり、天井までパッケージが積まれた箇所まである。

トイレのドアが閉まり水の流れる音、流す音のあと、すっきりした顔でトイレから出てくる。

テレビのニュース番組を見ながら健康器具を使った腹筋トレーニングをする安藤。

さらに両手にバーベルを持って交互に持ち上げる。彼の視線の先にはマジックインキで書かれた“目標70キロ台!”の標語。その下には着ぐるみのアニメ美少女キャラと写る、にこやかな安藤の写真が額縁に飾られている。

トースターにパンがセットされ、冷蔵庫からベーコンと卵、レタスとトマトを取り出し、フライパンにベーコン数枚を入れて加熱、卵を割って入れるなど調理する。

朝食を取る安藤、カメラが引くと冷蔵庫の横に等身大の美少女フィギュアが見える。

朝風呂に入る安藤。バスルームから出て体重計を見て、洗面所わきにあるボードにその日の体重を書き込む。

シャツを着て、靴下を履きながらパソコンでメールやニュースサイトをチェックする。


○高層マンション一階・午前八時半

エレベーターで一階に下りてくる背広姿の安藤。エントランスに置かれた長椅子に座る老夫婦(幸太&キク)が声をかけてくる。

幸太「おはよう」

安藤「おはようございます」

キク「今日も元気ね」

安藤「じいさんもゴキゲンそうじゃないですか。株は持ち直しましたか?」

幸太「(新聞を持って)例の中東の紛争が収まったおかげで、物流も回復し、一儲けさせてもらっているよ」

安藤「それはよかった」

キク「あ、そうそう。水曜のお休みはどんな予定? 従妹からゴーヤがたくさん送られたのよ」

幸太、キクの腕を掴んで安藤の目の前に来る。

幸太「いやいや、あんたの好きにしていいんだ」

安藤「はぁ。それじゃ遠慮します。いってきます」

安藤、マンションを出る。

キク、幸太をにらみ

キク「ちょっと、何よ」

幸太「それはこっちのセリフだ。おまえさん、またアイツに見合いさせるつもりか?」

キク「そうよ。このマンションで独身なのは彼一人だけよ。住民総会でも出席しないし」

幸太「アイツの職場は日曜が稼ぎ時なんだよ。それぐらいわかるだろ」

キク「だからよ。あの子に奥さんがいれば、ヘンな疑いも晴れるのよ」

幸太「理事長も『防犯上問題だ』とか言っていたけどよ。この間の見合いも失敗しているし、もう少し時間をおいたほうがいい」

キク「けどねえ……」


○朝の秋葉原上空・午前八時半

マンションから歩き出す安藤。徒歩で職場に向かう。カメラの高度が上がってゆき、上空からの秋葉原の眺め。


○タイトルバック

『オドバシ男』

上空からの秋葉原を背景に代表的なキャストとスタッフのテロップ。


○オドバシアキバ・午前八時四○分

家電量販店オドバシアキバ裏口にある通用門から入る社員たち。安藤も入っていく。


○オドバシアキバ・ロッカールーム

社内ロッカーで制服に着替える社員たち。安藤も着替えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る