第33話ドナドナ

「リリス…家を買うって本気?」

クレアは両肩をガシッとつかんで詰め寄る。

…ダメージははいんないけど地味に痛いから止めて…


「安い家でも500万はするよ?そんなお金あるの?」


「そのぐらいなら全然大丈夫」

今残高3000万以上あるし何かあったら適当に作った武器でも売ればすぐ稼げる。


「リリス…金持ちだったんだ…」

セレス引かないで…


「リリス私…欲しい武器があるんだ~」

…クレア…お前は…

というか


「…多分私が作った方が性能いいと思うけど?」


「「え!?」」




武器の話はとりあえず置いといて売りに出ている家を見て回ることにした。



「商業ギルドって家も扱ってるんだ…」

この世界には不動産屋というものは存在せず各町の商業ギルドがその町の不動産を管理しているようだ。


「いらっしゃいませ!」


「予算800万マーニ位で買える家を探しているのだけど?」


「は、800万…」

セレスだから引かないで…


「800万あったら…」

クレア…ヨダレ垂れてる!


「はい、少々お待ちください!」

流石に商業ギルドの職員は800万位で驚いたりしないみたいだな。




「お待たせしました。えーと全部で13件ございますが他に希望はございますか?」

希望か…カモフラージュの為の家だから別に希望は無いんだがな。


「なるべく大きいやつを見せてくれないか?」

一応三人で住むという体だからなそれなりに大きいやつじゃないとな。


「…大きいやつですとこれなんかどうですか?」

見せられた書類には二階建てで部屋数は5部屋風呂無しと書いてあった。

この世界では風呂は一般的では無いので貴族の家ぐらいにしか無いようだ。


「悪くは無いかな…一度見せてもらっても?」


「勿論です。今から向かいますか?」


「お願いするわ」




「こちらでございます。」


案内された物件はいつも使う東門から近いところにあった。

外見は白一色の木造一戸建て小さいが庭と馬小屋もついていた。

内装は古いがボロいわけでは無くそのまま住んでも問題はないだろう。

「「おお!」」

クレアとセレスには好評のようだな。


「ここはいくらなんですか?」


「ここは700万マーニとなっております。」

これで700万なら安い…のか?

二人も気に入ってるみたいだしここでいいか。


「じゃあここを買います」


「ありがとうございます!早速書類を作成しますので明日ギルドの方にお越しください。」


「わかりました」

ギルドの方に向かっていく職員を見送ると道の向こうから一台の馬車が走ってくるのが見えた。


「あれ?あの首輪つけられてるのアニタじゃない?」


「え?」

クレアの言葉で荷台に乗っていた女の子に目が止まる。


「…アニタのやつ奴隷落ちしたのか」

セレスの呟きが耳に響いた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る