第3話 帰路
帰路を歩きながら話す3人組、俺と智里とイリーナだ。
公園のすぐそばを通ったとき、砂場で三人の小学生が遊んでいるのが見えた、しかしイリーナの声によってすぐに現実に引き戻される。
「で、話というのは?」
「どうしてこの街に帰ってきたか、という話だ。」
「そうですね……少し前のお話でもしましょうか?」
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およそ十数年前、一人の少女が言った。
『私は大きくなったら―――のお嫁さんになる!』
『えっ!?じゃあ私もなる!』
『駄目よ、お嫁さんは一人しかなれないの。』
そこには何人かの少女がいたが正確な数は分からない、皆が皆同じ人に対し好意を抱いていた。
しかし、現実はそう甘くない。ある日一人の少女と男の子は離れ離れになってしまうことが決まった。
一人、また一人と離れ離れになり最終的に誰もいなくなった。
全員が最後に会った日、少女たちが交わした約束
『私は――――があなた達に負けないくらい好き!でも……それじゃなんかズルい気がする。だから私はあなた達が現れた時正々堂々と気持ちを伝えるんだ!』
男の子はその子のことを覚えている、覚えているのにその子の顔だけが思い浮かばなかった。
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「ソウタ、初恋の人っていうのはそんな簡単に忘れられないんだよ。」
流れる沈黙、ただまっすぐに彼女の眼は何かを捕らえていた。決意とでもいうべきものだろうか。その数秒後彼女はこちらを向いてほほ笑んだ。
「帰ってきた理由はそれです、お父さんに頼んでどうにか一人暮らしを許してもらいました。」
「————今の私を知ってもらうために。」
風が木々を揺らしながら俺たち間を吹き抜ける。晴天によって暖められた空気はまるで俺たちを包み込むかのように、風によってなびいたイリーナの髪は美しく、純白であった。雪のような冷たい美しさの髪と暖かい春風は新たな学校生活の予感を漂わせていた。
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およそ30分前ほどの出来事だろうか。
私は颯太と帰るついでにイリーナにどうしてこの街に帰ってきたのか聞こうとしていた。
「サトリ、ちょっといいですか?」
「え、私?」
颯太を置き去りにしたまま私たちは一度廊下に出、そのまま歩き続けるイリーナに私はただ黙ってついていった。
到着したのは自販機が並んでいるいわゆる休憩室のようなところであった。
到着するや否や彼女は私に「何飲みたい?」と聞いてきたので厚意に感謝した。
「コーヒー」
「コーヒー飲めるんですか?大人ですね、私は紅茶かな。」
渡された缶コーヒーをそのまま開けて飲み始めると彼女もベンチに腰を下ろし、紅茶を飲み始めた。
「で?要件ってのは?」
「お久しぶりです、サトリ。私はあなたに一言伝えたくて来ました。」
「何?」
「『約束』を果たしに来ました。」
彼女が一言言った瞬間に缶を落としそうになる。彼女が言った『約束』これは別れ際に女子たちで果たした約束のことで間違いないだろう。
私は今まで普通に生きてきた、この約束はあのときいたうちの誰かが居なければならないからだ。
だからこそ、私はもうみんなが帰ってくることはないとどこかで安堵をしていた。
奪われる心配はない、と。
「そ、ウチも譲る気はないけどね。」
「話は以上です。飲み終わったようですし彼のところへ戻りましょうか。」
私たちはその後颯太のもとへと帰っていった。
帰り道は彼女が説明をしていたので黙って聞いていたが、話し終えた彼女の眼には何かの決意が見てとれた。
あぁ、
春風が吹くとともに私の決意も固まったようであった。
『約束』を果たすために――――――。
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