「初恋」に寄せて

 小学5年生のリュウは、毎日音読の宿題に取り組んでいる。先日、宿題として出た詩に、私は衝撃を受けた。


 「まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき」


 島崎藤村先生の、「初恋」である。


 髪を結い始めたあなたが、林檎の木の下に現れた時。髪に重なる白い花がかんざしのようで、あなたを花のように美しい人だと思った。

 少女から乙女へ。変わりゆく姿に瞳を奪われた少年の、ピュアな恋心。時は移ろい、やがて乙女は、彼にそっと林檎の実を手渡す。たおやかな白い腕、薄紅色の艷やかな果実。


 「薄紅の秋の実に ひと恋初めしはじめなり」


 この瑞々しさ……!!

 身悶えする私に、息子が言う。


 「林……これ何て読むの〜?」


 「林檎りんごだよ!」


 「こひはじめ?」

 

 「こいそめし! 恋の始まりだよ!」


 何の詩か、さっぱりなんだろうなぁ💦

 よし、解説してやろう!(*´艸`*)

 滔々と語り始める私をよそに、動画を見始める息子。全く興味なし……。

 この詩に出てくる二人は、12歳とかの設定みたいなんだけど……。10歳の君の林檎は、まだ実る気配が無いようだね(-_-;)


 以前、息子は私に言ったことがある。


 「僕は10歳だけど、恋に興味が無いんだよね。このままだと、結婚しないと思うんだ」


 10歳の今から、そんなの決めつけなくていいと思うけど……?(゜_゜)?

 戸惑いつつ、息子の真剣な面持ちに、黙って続きを待った私。


 「もし僕が結婚しなかったら、家が滅びるよね。だから、ユヅちゃんの子どもを養子にしようと思うんだ」


 何じゃそりゃあああぁぁぁ!?((((;゚Д゚))))


 「養子になんかしなくていい! 結婚だって、一緒にいたいと思う人がいたらすればいいけど、家のために無理やりするようなものじゃないし。大体、そんな大した家柄じゃないし!」


 夫の前で「大した家柄じゃない」と断言してしまった私(*´∀`*)

 息子は一応納得(?)したのか、以降そんな話は出ないけれど。

 いつか、息子にも「ひと恋初めしはじめなり」が、訪れるのかなぁ……?

 左右違う色の靴下を平気で履いているリュウ。

 やっと夜一人で寝るようになったのに、怖い動画を見過ぎて一人で眠れなくなってしまったリュウ。

 家では放送禁止用語を連発して、笑い転げているリュウ。

 そんな君だけど、いつかは……?

 

 島崎先生は、家同士で結婚を決める時代に、自由恋愛を謳ったけれど。今は恋愛も結婚も、自分で決める時代になった。

 結婚してもしなくても。

 初恋が訪れても、訪れなくても。

 幸せに決まった形は無いから。君が笑って生きててくれれば、それでいいさ。

 「初恋」に寄せて、そんなことを想う母なのでした(*´∀`*)



 


 

 

 

 

 

 


 

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