イヤイヤ期

二歳半を過ぎても、娘のイヤイヤ期が終わらない( ノД`)…


保育園の教室を出ると、娘は言う。

「帰らない!」

「お弁当買って!」

私が寝坊した日、夕飯が作れず、ほっともっとにお世話になった。ドラミちゃん弁当がいたく気に入ったらしく、その後毎日おねだり。

適当に受け流しつつ玄関へ向かう。

明言しない私に娘が苛立つ。

上着も着ず、靴を投げ捨てて叫ぶ。

「帰らない!!」


ここで「買うよ」とその場しのぎなことを言い、約束を破ればさらに荒れる。

「お弁当は特別な日だよ。また今度」

「お母さんがお弁当作ってあげる。ごはん、お弁当箱に入れよう」

娘が泣きわめき、暴れだす。

「イヤ!!お姉さんにお弁当作ってほしい!!」

仕方なく、娘を横抱きにする。ビチビチされながら、「大漁だ!」のポーズで園を後にする。

娘の大音量の泣声を響かせつつ、自転車を漕ぐ。視線が痛い……。


朝。娘は決まって言う。

「保育園、行かなーい」

いくら誘っても抵抗する。

「じゃあ、お父さんと行ってね」

私と息子が先に出てしまうと、連れに抱き抱えられて駐輪場に降りてくる。


今朝は、連れの方が早く出た。

娘はいつも通り言う。

「保育園行かない。お留守番する」

既に出発時刻である。

私は電気を消し、ヒーターも消した。

「寒くなるから、上着着ようね」

娘は大人しく、上着と靴下を身につける。

「お昼ごはん、ここにパン置いとくから食べてね」

「トイレも自分で行くんだよ。ユヅちゃん一人で座れないけど、大丈夫?」

私の言葉に娘は首肯く。

「じゃあ、お母さん達行くね」

息子の方がビビっている。

「ユヅちゃん一人にしたら、お母さん警察に捕まるよ!」

息子に小声でささやく。

「大丈夫、そのうち来るって」

玄関を出て、ドアの外で息子と共に待つ。


来ない……。

泣き声もしない……。


リビングに戻る。

真っ暗な部屋で、消えたヒーターに身を寄せ、泣きもせず体操座りしている娘……。


「大漁だ!」のポーズで娘を抱き抱えて階段を降り、無理矢理自転車に乗せる。

「一人で、お留守番するー!!」

娘の泣き声がご近所に響く。


通りすがりの自転車のおじさんが、飄々と笑う。

「おぅおぅ、元気やね~」


遠ざかるおじさんに、返事はできず。

これくらいの大らかさで、見守ってくれたらねぇ。

これくらいの大らかさで、居られたらねぇ。


いつかは終わるイヤイヤ期。

やがてくる思春期、反抗期。

いつかは終わる子育てですから。

一つ一つを、楽しんで。

できるだけ……。


今日も娘の泣き声を、響かせつつ。

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