第10話 ジブンで!

二歳の娘は、イヤイヤ期真っ只中。

お着替えは、「ジブンで!」

歯磨きも、「ジブンで!」

手助けしようとすると、「イヤッ!!」と大泣き。


最近はお箸に興味を持ち、「ジブンで!」と持ちたがる。

そして難易度が高すぎる納豆にチャレンジし、つまめないことに癇癪を起こす。


性別も民族も国境も越えて吹き荒れる、魔の二歳児の「ジブンで!」旋風。

「ジブンで!」は、人の根元的な願いのように感じる。


昔、重度心身障がい児施設の話を聞いたことがある。

重度の知的障がい、肢体不自由を抱えたこども達。中には、寝たきりの子もいる。

その子達のリハビリでは、その子がどんな刺激に反応するのか、何が好きなのか、を手がかりにして進めていくのだそうだ。


音が聞こえると、瞬きする子。

光に対して、笑顔を見せる子。


ことばはなくても、そこにその子の意思がある。願いがある。


生きているかぎり消えることはない、ジブン。

買い物も、人付き合いも、

時には自分の人生の幕の下ろし方さえも


決めるのは、ジブンで。


一方で、「私はジブンで決めてるかな…」と思うときがある。


「こどもがいるから…」

「仕事が忙しいから…」

「あの人が、そう言うから…」


そんなことを言ってたら、簡単にジブンがいなくなってしまう、ことに気づく。


自分の意志が、通せないときもある。

でも、ジブンが何を望むのか考えて、その時のベストとして出した答なら、納得できる。

誰かのせいにするのではなく。誰かに決めてもらうのではなく。


時には、ジブンの声を聞く。

おもいっきり、ジブンのしたいことをする。

ジブンを大事にしたい。


自分の人生の舵をとるのは、ジブン。


今日も娘は言う。

「ジブンで!!」

娘の言葉は、私にも跳ね返る。


決めたのは、ジブンで?

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