第615話 2021/6/20 宗教とか

 本日は12時半起き。外は晴れ、気温は高い。なのに気分は落ち込み爽快感の欠片もない。別に何か落ち込むような事件があった訳でもなく、ただ目が覚めた瞬間から胸の中が陰鬱としているのである。何とも面倒臭い事よ。はああああああっ、ため息しか出て来ないぞ。まったくどうしたものか。


 一般に「宗教」と言うと、体系化された信仰の事や、その信仰に基づき行動し、信仰を広めようとする組織・団体の事を指すように思う。典型的なのは仏教やキリスト教、イスラム教などであるな。

 ただ、たとえば仏教や神道の影響下にある日本での生活において、信仰が重要であるかと言えばそうでもない。道端の地蔵を拝むのに仏教の知識は必要とされないし、稲荷明神にお供えを置くときに神道の知識はたいして求められない。初詣なんてその場所が寺なのか神社なのか知らなくてもできる。だがそこが宗教と無関係なのかといえばさにあらず。それもまた宗教の一部なのだ。宗教の裾野は広大である。

 土着信仰、祖霊信仰、シャーマニズムにアニミズム、みんな宗教である。国際的に広がる規模の大きな世界宗教だけが宗教ではないのだ。もっとも世界宗教だけが巨大な規模を誇っている訳ではないが。

 世界最大の宗教と言えばキリスト教となる。カトリック、プロテスタント諸派、正教会その他諸々を含めれば信者数は世界で20億人を大きく超える。イスラム教が18億人ほど、仏教は4億人ほどだと言われている。だがもう一つ、巨大な宗教が残っている。巨大だが世界宗教とは言えない世界最大の土着信仰、それが信者数11億人と言われるヒンドゥー教である。

 ただしヒンドゥー教とは一つの教えではない。インドに端を発する多神教の寄り合い所帯全体をヒンドゥー教と呼んでいるからだ。多神教と言えば日本の神道も多神教であり、神社によって天照大神を祀っていたり素戔嗚尊を祀っていたりとイロイロだが、天照大神信仰の神社と素戔嗚尊信仰の神社とで対立したり矛盾したりする事は、少なくとも表面的にはない。祭神は別々でも神道という宗教は一応一体となっているのだ。

 だがこの辺、ヒンドゥー教は違う。ヴィシュヌ信仰とシヴァ信仰では教義も神話も別々である。対立もあるし矛盾もする。大きな「ヒンドゥー教共通の教義」がある訳ではないのだ。

 ヴェーダなど聖典はあるが解釈が違う。シヴァ信仰もヴィシュヌ信仰も独立しているし、自分たちの信仰する神様が世界一だと思っている。だから「ヒンドゥー教」という言葉自体に疑義を唱える見解も少なからず見受けられるのだ。

 とは言え、ならばヴィシュヌ信者とシヴァ信者は毎日殴り合って生活しているのかといえばそうではない。それぞれが信仰を守りながら共存している。だからシヴァの乗り物である牛はインド全体で大切にされる。シヴァ信者はもちろん、ヴィシュヌ信者も敬意を持って取り扱うのだ。そういう意味での一体感はヒンドゥーにも存在している。

 もちろんそれはそれで悪い事ではないのだが、何にせよ宗教というものに深入りすると、碌でもない事になってしまう場合が多々ある。宗教それ自体の罪ではないものの、宗教を扱う人間という生き物が不完全であるが故に変な事になるのだ。たとえばインドでは牛を神聖視し過ぎて野良牛が社会問題化したり、挙げ句の果てにはこんな事にまでなってしまう。

 今年の5月、ヒンズー至上主義を掲げるモディ首相率いる国政与党、インド人民党(BJP)の国会議員が演説でこう言った。

「私たちを肺の感染症から遠ざけてくれる。私は毎日飲んでおり、新型コロナに感染していない」(産経新聞)

 いったい何を飲んでいるかわかるだろうか。これ、牛の尿の話である。聖なる牛の小便を飲めば新型コロナから身を守れると主張しているのだ。

 インドの識者は産経新聞の取材に対し、こう述べている。

「新型コロナの恐怖が人々を合理的な考えから遠ざけており、非科学的な考えの蔓延まんえんを招いている。ヒンズー教の主張を広めたい右派勢力が人々の不安に乗じており、特に政治家が不正確な情報を広げることが問題だ」

 まったく狂気じみた話である。宗教が国家の土台を固めている国は大変だな。ただし、これを笑えるほど日本は安泰ではない。

 日本人には牛の小便を飲む人はまあ滅多にいないだろうが、代わりに新型コロナのワクチンを拒絶する人々がいる。DNAが書き換えられるとか5Gにつながるとか主張しているのはある意味まだ無害な方で、人口抑制策だとか不妊増進策だとか言い出す者も出て来る始末。そして「そんな無茶な話は信じていない」と主張しながらも、「でも説明の足りない政府が悪いよね」と言う連中が増えている。

 確かにいまの政府は優秀とは言えない。説明の足りない部分もあるだろう。だがもし政府がすべてを明解にし、説明を尽くしたとしよう。そうすればどうなるのか。おそらくは海外の根拠不明な論文や報道を引っ張り出して来て、「でもこういう説もあるじゃないか」と言い出すに違いないのだ。

 そもそも人間は機械ではない。「十分な説明」の基準値などないし、「すべての国民が納得する説明」など最初から不可能である。過去に伝染病の災禍に襲われた国で、国民に十分な説明をして納得してもらった国などあるのだろうか。虫けらはデータを持っている訳ではないが、たぶんないだろう。そんな事が人間に可能であるとは到底思えない。

 彼らの求めているのは結局のところ悪魔の証明である。どれだけ数値データを公表し、統計学的に誤りの少ない情報を公開しても、「まだ足りない」としか言わないのだから。

 虫けらはいまの日本政府が嫌いであるし、有能であるとはまったく考えていないのだが、新型コロナのワクチンを製造したのが日本政府ではない事実は理解している。日本政府が作ったワクチンだから信用できない、という理屈ならまだわからないではないものの、製薬メーカーの作ったワクチンまでもが信用できないのなら、風邪薬も飲めないではないか。

 ワクチンで人口抑制ができるのなら、肉でも魚でも野菜でもスナック菓子でもできるはずだろう。普段の食事は摂れるくせに、ワクチンだけ心配するのは頭がおかしいとしか思えない。ワクチンより牛の小便の方がマシだと思うのなら、勝手に飲んでいろと思う次第。


 18日に行われたイランの大統領選挙で、反米・反イスラエル・保守強硬派のライシ師が当選した。投票率は48.8%。日本の総選挙ならたいした数字だが、イランの大統領選挙としては極めて低い。選挙前よりライシ師の「1強」と目されていた事から、有権者の感心が低かった可能性もあるものの、イランで政治不信が広がっている証左とも取れる。

 この結果にイスラエルは早速反発しているが、UAEは祝辞を送ったそうだ。まあUAEはサウジアラビアの側であるとは言え、イランと正面からぶつかりたいとは思っていないのだろう。サウジアラビアはどう反応するだろうか。

 何にせよ穏健派のロウハニ前大統領の時代とは大きく方針転換する可能性がある。ただイランの大統領は政治の最高権力者ではあっても、国家の最高権力者は宗教指導者のハメネイ師である。イランは欧米との核合意で瀬戸際外交を繰り広げているが、これをどう扱うかはハメネイ師の思惑次第かも知れない。できれば穏便に済ませてもらいたいところなのだが。


 本日はこんなところで。昨日は1700文字ほど書けた。明日は病院に行かねばならんので今夜は早めに眠りたいところ。てな訳で明日はお休みである。はああああ、面倒くせー。

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