第404話 2020/11/21 テーマとか

 本日は9時半起き。眠っているうちに布団を蹴飛ばしてしまった身には、今朝の気温はちょっと寒かった。もちろんまだ凍えるほどの気温ではないが、ジャージだけではさすがにな。今日は最高気温が上がらない。昨日より7~8℃下がる模様。風邪を引かにゃいいんだが。


 創作にはテーマがある。まあテーマなどという大仰なものを大上段に構えて作品を書いている人ばかりではないのだろうが、それでも読者に何かを伝えたい、こんな風に考えてもらえないだろうか、こういう見方もあるんだよ、そんな気持ちを文章に込めて作品に向き合っている作家は多いと思う。

 たとえば何もかも放り出して常に逃げ回る主人公がいたとして、それを面白おかしくコメディタッチに描く事で、それ以外の道を読者に促したりする。あるいはそんな主人公がどんどんドツボにはまり悲惨な最期を迎える様子をシリアスに描く事で、自分の将来を考えるようメッセージを送る。逃げる事は悪い事ではない、だがそれだけではダメなのだ、と。

 作品を通して描かれるテーマというのは、たいていポジティブな、未来に希望を持てるものだろう。もしかしたら何もかも放り出して常に逃げ回っている主人公が、追い詰められて鬱になって自殺する過程を詳細に書く事で、読んだ人間が自殺すればいいのに、と考えている作家もいるかも知れないが、少数派だと思いたい。もちろんそんな作品であってもテーマが掲げられ、メッセージが込められている点では、他の作家の作品と同じではある。

 とは言うものの、作家心理というのは案外複雑なものだ。作品のテーマを理解して欲しい、このメッセージが読者に届いて欲しいと思って書いているくせに、いざ読者から「これはこういうテーマですね、同意です!」みたいな真っ直ぐな反応が返ってくると、何だか申し訳ない気分になる。自分みたいな者がこんな偉そうな事を書いて良かったんだろうか、と後悔にも似た感情が湧き出してくるのだ。

 いや、だからといって読者に感想を書くなと言いたい訳ではない。感想は書くべきだ。もの凄く書くべきだ。書けば作者は小躍りして舞い上がるほど大喜びするのだから。その感想の一言で、今後も創作を頑張ろうという思いを新たにできるのだから。ただ大喜びしながら「うあー、俺はどんな顔をして返事を書けばいいんだ!」と頭を掻きむしる作家を想像して、生暖かい気持ちで見守っていただければ幸いである。

 さて昨日20日の夜、自民党の石破茂元幹事長が政治資金パーティを開いた。先の自民党総裁選で管氏に敗れ、自身の派閥の会長を引責辞任してから約1ヶ月。石破氏は1時間に渡って政策論を中心とした講演を行い、その締めにこう言ったのだそうだ。

「同志の皆様方にご心配、ご迷惑をおかけした。1回けじめをつけたいと思った」

「いろんな報道がある。石破茂は終わったのかとかね。大きなお世話だ」

「自分が終わったと思わない限りは終わらない。決めるのは自分であって、他者ではない」(以上毎日新聞)

 最後の言葉は誰かから教わったらしいのだが、その誰かはどこからこんな言葉を拾ってきたのだろうな。

「負けたと思うまで人間は負けない」

 とは超人機メタルダーの主題歌『君の青春は輝いているか』(作詞:ジェームス三木)の歌詞の一節であるが、まさかこれと関係はあるまい。まあ自分が諦めなければ必ず最後には勝利できる、というメッセージの込められた創作は珍しくないだろう。少なくとも「すぐ諦めた方が楽だぞ」という作品よりは多いと思う。

 こういうテーマの作品を書いた人は、今頃「俺か? まさか俺の作品なのか?」と頭を掻きむしりたい思いに駆られているやも知れないが、まあ思うだけならタダだしな。みんなで頭を掻きむしればいいのではないか。

 なお石破氏の言いたい事は理解できるし、それはそれで立派な考えだとは思うのだが、一国の宰相を目指す人間の言葉にしてはいささか庶民的というか、やや軽い。この辺のバランス感覚をどうにかしないと無理かも知れないな、とは思うところ。


 政治に関連してもう1つ。314の労働組合が加盟する全トヨタ労連(組合員数35万7000人)が、連合の傘下から離反するのではないかとの報道がある。

「自動車の電動化や自動運転化の流れが加速する中、技術開発支援や税制改正など期待する産業政策を実現させるには自民、公明両党との連携が不可欠と判断した」(時事通信)

 との事だ。まあ現段階で全トヨタ労連が何か発表した訳でもないので、いまのところは憶測なのだが、あっても不思議ではない話だ。連合は立憲民主党を支持する立場であるが、立憲民主党は共産党との協力関係を強化している。言うまでもなく共産党は「大企業から搾り取れ!」という主張の党であるから、トヨタにとっては手の組める相手ではない。会社が傾けば労働組合も無事には済まない以上、トヨタと関連企業の労組も共産党には協力などできないし、その共産党の力がなくては選挙も戦えないような立憲民主党を支持するのは難しかろう。

 実際に全トヨタ労連が連合からの離反という形を取るかどうかは不明であるが、組合員が立憲民主党に投票する可能性はあまり高くないのではないか。それでなくても人は勝ち馬に乗りたがるものである。労働組合も慈善事業ではない。自分たちの役に立たないのであれば見限られても当然なのかも知れない。


 ダイヤモンドに目が眩むのは尾崎紅葉の『金色夜叉』であるが、個人的には何故こんな鉱物にそれほどの価値があるのか不思議でならない。とは言え、炭素が圧縮されるとあの透明な石になるというのは、何とも不思議な気がする。

 ダイヤモンドのモース硬度が10であると『キン肉マン』で知った人も多いかと思うが、実はダイヤモンドの硬度は10と決まっている訳ではない。一般的なダイヤモンドの結晶は立方晶系と呼ばれる形、ザックリ言えば立方体である。しかし天然ダイヤモンドの中には隕石の衝突による熱と圧力によって生まれた「六方晶ダイアモンド」あるいは「ロンズデーライト」と呼ばれる、六方晶系の物がある。

 この六方晶系という構造についてイロイロ見てみたのだが、サッパリ理解できない。まったくイメージできないのだ。とりあえず真上(もしくは真下)から見れば正六角形の中に三本の対角線が引かれていて、真横から見れば菱形である。そんな形を想像していただきたい。そういう結晶構造をしているのがロンズデーライトであり、これのモース硬度は一般に7か8だそうだ。

 ただし、自然にできたロンズデーライトには不純物が混ざっている。純粋なロンズデーライトならば、硬度15から16くらいあるのだそうな。

 さて4年ほど前の2016年12月、オーストラリア国立大学の研究チームは実験室でナノサイズのロンズデーライトを作り出した。このとき、従来は800℃必要だった温度を400℃にまで下げたという。人造ダイヤの製造技術はずっと以前に確立されているが、高温高圧と数日から数週間の時間が必要だった。その高温を半減させただけでもかなり画期的だったらしい。

 しかし研究チームはそこで満足しなかった。オーストラリア国立大とロイヤルメルボルン工科大学が主導する国際研究チームは18日、室温環境で、しかも数分でダイヤモンドを製造する事ができたと発表した。CNNの報道によれば実験ではアフリカゾウ640頭がバレエシューズのつま先に乗った状態に等しい圧力をかけたそうなのだが、うん、わかるようでまったくわからん。まあとにかく凄い圧力なのだろう。

 この実験により2種類のダイヤ、つまり一般的な宝飾品に使われるようなダイヤモンドと、ロンズデーライトが作成されている。ロンズデーライトが安価で大量生産できるようになれば、カッターなど工業分野での利用が期待できる。もしかしたら未来のキン肉マンは悪魔将軍の鎧などスパスパ斬るようになるのかも知れない。こうやって時代は変わって行くのだなと思う次第。


 本日はこんなところで。昨日から『わざわいの科学』という本を読んでいる。ナショジオから出ているだけあって、ちゃんとした本だ。海外の書籍が翻訳されたものを読むと、たまにビックリするくらいちゃんとしていない本がある。よくこれで出版したなと感心するやら呆れるやら、といった本が実際にあるのだ。しかしその辺は天下のナショナルジオグラフィック、安心して読める。内容的にも非常に面白い。

 ただし全面的に同意できるかといえばそうでもない。科学的にはこうなのだ、と言われても、科学的じゃない部分では違うだろう、とツッコミたくなる箇所もある。だがそれでも総じて楽しめる。面白いノンフィクションを読みたい人にはお勧めできる本である。

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