第403話 2020/11/20 メディアとか
本日は6時半起き。雨。やや体が重い。朝から空気が生ぬるく気持ちが悪い。今日は何もできそうにないな。と言いながら、昨日Amazonでまた本を買ってしまった。今日届く予定。読むのだろうか。もちろん読みたいと思ったから買ったのだが、本当に読むのかどうかは我が事ながら不明である。さてどうなるやら。
昔から人は罪悪感と戦っていたようで、神様とか仏様とかお天道様とか、あるいはこの世界そのものとか、とにかく自分の行動を誰かが見ている前提で道徳教育というものがあった。きっと誰かに見られている、だから悪い事はできないという理屈だ。もちろん見られていなくとも悪い事をしてはいけないのだが、まあこれはこれで合理性があるのではないか。有名な言葉としては、後漢書から「天知る地知る我知る子知る」、あるいはもっと古い春秋時代の老子から「
もっとも「天網恢々疎にして漏らさず」については、出典である老子の原文を見る限り「天網恢々疎にして失わず」というのが正しいらしい。とは言え日本語では「疎にして漏らさず」が広く人口に膾炙されている。いまさらその間違いを指摘したところで、あまり意味はないのだろう。
て言うか、偉そうな言い方をさせてもらえば「天網恢々疎にして漏らさず」は非常に出来の良いことわざである。何せ音の響きがいい。語呂がいい。つい口に出してみたくなる。「疎にして失わず」にはこの快感はない。それに「天網」をイメージしたとき、そこから「漏れる」と「失う」のどちらが感覚的に受け入れやすいかを考えると、日本語なら選ばれるのは前者だろう。最初に間違った人物がどこの誰で、こういった事を理解した上で「漏らさず」という言葉を当てたのかは知らないが、ナイスチョイスだと思うところ。
さて3年前、2017年の事。オーストラリアの公共放送、オーストラリア放送協会(ABC)が、あるシリーズ番組を放送した。タイトルは「ザ・アフガン・ファイルズ」、内容は多国籍軍の一員としてアフガニスタンに駐留していたオーストラリア国防軍の軍人が、現地の民間人を殺害した疑惑などについての報道番組である。「ABCにもたらされた何百ページにもおよぶ極秘の国防省文書に基づいた報道」(BBC)なのだそうな。
これはメディアとして非常に勇気ある行動と言える。たとえばもし同様の疑惑が日本の自衛隊にあった場合、あるいはアメリカ軍にあった場合、日本やアメリカの視聴者がそれを報じる番組を容認するか考えてみるとわかる。オーストラリア人だって同じはずだ。その点を踏まえてこの番組を制作し放送したABCは、賛否はあるにせよ凄いメディアである事は間違いない。しかもオーストラリアは、表現の自由が憲法で保障されていない国だからな。そういう意味でも凄い。
この「ザ・アフガン・ファイルズ」は大きな反響を呼び、様々なリアクションを招いた。その中でも最大のものは、2019年にオーストラリア連邦警察が「機密漏洩罪」の疑いでABCの家宅捜索を行った事だろう。このとき警察には、ABCのコンピュータのHDDにある情報を「追加、複製、削除、変更」する権限が与えられていたというから相当なものだ。なおこの件については訴追の必要なしとの結論が出て今年10月に捜査が終了している。
今年3月には在豪アフガニスタン大使館が、オーストラリア国防軍の戦争犯罪について審理を求める声明を出した。今月12日にはオーストラリア政府が国防軍のアフガニスタンにおける残虐行為について特別捜査官事務所を設けるとモリソン首相が発表した。
そして昨日19日、オーストラリア国防軍のアンガス・キャンベル司令官は、4年間におよぶ内部調査の結果、特殊空挺部隊(SAS)の一部隊員25名が実行犯もしくは共犯となり、アフガニスタンで民間人と捕虜を少なくとも39人殺害したとの報告書が提出されたと発表した。中には「ブラッディング」という「慣行」も含まれていたという。これは見回り担当の新兵に「初めての殺人」を経験させるもので、捕虜の射殺を強要するのだそうだ。酷えな。
キャンベル司令官は検察が戦争犯罪として捜査するべきだと提言し、
「加害者の意図が不明確、混乱、または間違っていた状況で起きたとの訴えもない」
「聞き取り調査をした全員が、自らの活動に関わる武力紛争の法律や交戦規定を完全に理解していた」
「経験豊富でカリスマ性や影響力があり、軍の優位性を自尊心やエリート主義、特権意識とごたまぜにする一部の下士官らとその子分たちの間で、ゆがんだ文化が共有され増幅されたと、報告書は指摘している」(以上BBC)
「複数の見回り担当の兵士が法律を私物化し、ルールを破り、話をでっち上げ、うそをつき、捕虜を殺害した」
「オーストラリア国防軍を代表してアフガニスタン国民に素直に心から謝罪する」(以上AFP)
と語った。
今回の発表がABCの報道なくしてあり得たのかは不明だが、まあ、天網恢々疎にして漏らさず、隠そうとしても悪事はいずれ明るみに出るものである。願わくは容疑者に厳正で適正な法の裁きが与えられますように。
イギリスの公共放送BBCは1995年、報道番組『パノラマ』でダイアナ妃のインタビューを放送した。当時ダイアナ妃はチャールズ皇太子と別居中であったが、まだ離婚はしていなかった。このインタビューはイギリス中にセンセーションを巻き起こしたのだが、これについてBBCは18日、独立調査を行うと発表した。
ダイアナ元妃の弟であるエドワード・スペンサー伯爵によれば、BBCのバシール記者は王室職員2人がダイアナ元妃の情報をセキュリティー・サービスに提供し、対価を受け取っていたことを示す内容の銀行の明細書を見せてインタビューを申し込んだらしい。しかし、この明細書は偽造の可能性が高いという。
「もしこの明細書を見せられていなかったら、私はバシールに姉を紹介しなかっただろう」(BBC)
と伯爵は書簡の中で述べている。
またバシール記者は、
「ダイアナ元妃の個人的な手紙が開封されている」
「車は追跡され電話も盗聴されている」(以上BBC)
といった嘘も並べ立てたのだそうな。
この疑惑をイギリスの大衆紙デイリー・メールが報じ、BBCが独立調査を決めた模様。
今回のBBCの発表を受けてウィリアム王子は、
「ひとまずは調査を歓迎する」
「独立調査は正しい方向への一歩だ」
「この調査はパノラマの取材と、その後に当時のBBCが行った決定につながる言動について、その裏にある真実を明らかにする助けになるだろう」(以上BBC)
と声明を発表している。
これが本当ならBBCもたいがい汚い事をしているのだな、とは思うが、それを詳細に報道するのもまたBBCである。この辺、自分たちの身内が起こした問題をなおざりに報じるどっかのメディアも見習っていただきたいところ。
日本でメディア関連を監督するのは総務省であるが、台湾の場合は国家通信放送委員会(NCC)である。18日、NCCは民放テレビ局『中天電視(CTi)』のニュースチャンネルについて、今後は放送免許を更新しないと発表した。問題とされたのはこの中天電視の大株主が親中派であり、親中的な報道を現場にゴリ押ししている点だそうだ。ドラマやバラエティなどのチャンネルについては放送の継続を認めるという。
このNCCの決定について野党国民党は、
「台湾の報道の自由を著しく後退させる」(日経新聞)
と激しく非難し、当の中天電視もFacebookに、
「報道の自由は死んだ」(AFP)
と書き込んでいる。
ただし国際ジャーナリスト組織『国境なき記者団』は、
「報道の自由とは、規制がないことを意味するものではない」(AFP)
として、NCCの決定を支持すると発表した。この点についてはまったく同意である。日本のメディアにも最低限の規制は必要ではないか。いい加減、得手勝手と自由を意図的に混同するのはやめてもらいたい。
本日はこんなところで。メディア関連ネタばかり3つ揃えてしまったが、たまにはこういうのも有りだろう。
今日はなるべく本を読んで頭を回したいところ。少しずつ少しずつ、そういう時間を増やして行くのだ。
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