第381話 2020/10/29 泣きっ面に蜂

 本日は8時起き。普通だ。普通の時間に普通に起きられた。空は晴れ上がっているが体は重い。て言うか腰が痛い。こないだ草むしりをした反動が、昨夜になってやって来た。体を動かすたびに「イテテテテッ」と言わなくてはならないのは面倒な事である。

 そんな昨夜は寝る前にイカの姿フライを食い始めたら止まらなくなって、一袋全部食べてしまった。嗚呼食欲の秋、とか言ってる場合ではない。体壊すぞ。ただ、おかげで昨日は小人さんが出て来なかったようだが。


「弱り目に祟り目」「泣きっ面に蜂」、悪いタイミングで悪い事が重なるのは古今東西でお馴染みの事象である。自分にとって悪い事が起きているときというのは、たいてい過敏な心理状態になっているものであるから、いつもなら「まあ仕方ないな」と見過ごせる程度の事にでも傷ついてしまう、という側面はあるのかも知れない。

 しかし何をもって「悪い事」と言うのかはともかくとして、客観的に見ても当事者には嬉しくないであろう事態が重なる事というのは実際にあるものだ。

 フランスのマクロン大統領は28日に国民向けのテレビ演説を行い、29日夜から12月1日まで新たにロックダウン措置を導入すると発表した。新型コロナの感染拡大を受けたもので、生活必需品を扱っている店以外の、たとえばバーやレストラン、スポーツジムなどはすべて閉鎖される。ただし小中学校は授業を行う。工場や農場なども作業が認められており、公共サービスも一部は業務を行う。従ってそれに伴う通勤も認められる訳で、全体的には春に行われたロックダウンほどには厳しくない印象がある。

 ただフランスの現状は春よりも悪い。感染者数は120万人を突破し、一日の感染者数も500人を超えている。死亡者総数は3万5000人以上である。

 マクロン大統領はテレビ演説でこう述べている。

「誰も予想できなかったほどの急ペースで新型コロナウイルスが国内に拡散している。欧州全体を襲っている感染の波に対抗するためには、これまでわれわれが講じた措置は不十分だと分かった」(ブルームバーグ)

「今、感染拡大にブレーキをかけないと病院はすぐにいっぱいになり医師は助ける患者を選ばなければならなくなる」(NHK)

「春と同じく、外出は通勤や医療機関への受診、親類の手伝い、必需品の買い物や、外の空気を短時間吸うときのみ可能となる」

「2週間後に状況が改善すれば措置を見直し、特にクリスマス休暇までには一部の店舗を再開させられるようにしたい」

「私たちがクリスマスと新年を家族と共に祝えるようになることを願っている」(以上AFP)

 非常に厳しい状況が伝わってくる。現在の新型コロナを巡る事態は、明らかにフランスの「泣きっ面」であろう。しかしこのフランスの泣きっ面を「蜂」が刺す。

 先般パリ近郊で起きたイスラム教徒による教師殺人事件、首を斬り落としたというアレであるが、この事件に絡みマクロン大統領は、

「フランスは今後も風刺画を含む表現の自由を守り続ける」(CNN)

 と発言、これが反イスラム的であるとイスラム諸国が強烈に反発している。たとえば以下のような事が起きている。

・ヨルダン:外相がフランスを非難、商品不買が呼びかけられる。アンマンのスーパーで商品の撤去。食料品店がフランス製品を扱わないとの看板を掲げる。

・クウェート:スーパーマーケットチェーンがフランス商品を扱わない事を表明。

・パキスタン:首相がフランスを非難。外務省がフランス大使を呼び抗議。

・カタール:スーパーマーケットチェーンがフランス商品の不買を宣言。カタール大学がフランス文化週間の無期限延期を発表

・イラク:バグダッドのフランス大使館近くでデモ。フランス国旗やマクロン大統領の似顔絵が燃やされる。

・イラン:ハメネイ師、ロウハニ大統領、外務省がフランスを非難。

・バングラデシュ:首都ダッカで反フランスデモ。フランス製品不買を訴える。

 そしてマクロン大統領にとっては不倶戴天の敵とも言うべきトルコのエルドアン大統領は、このような発言をした。

「欧州首脳らはマクロンとかれの憎悪運動を制止するべきだ」(CNN)

「私は全国民に対し、フランス製品を買うなと呼びかける」(NHK)

 これはなかなか痛い蜂の一刺しと言える。日本の首相がこんな国際的な大騒ぎに巻き込まれてしまったら、一発で首が飛ばされるやも知れない。だが話はこれで終わらない。この炎にガソリンを投げ込んだヤツがいる。みんな大好きシャルリー・エブドである。

 27日、フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブドはオンライン公開した最新号において、エルドアン大統領の風刺画を掲載した。以下、AFPの記事をそのまま引用する。

「Tシャツに下半身下着だけのエルドアン大統領が缶ビールを飲みながら、ヒジャブをかぶった女性のスカートをめくり下着をつけていない尻をあらわにしている絵が描かれ、吹き出しの中には『おお、預言者よ!』というせりふが書かれている。『エルドアン:プライベートはとても面白い』というのが、絵のタイトルだ」

 虫けらは個人的にエルドアン大統領は嫌いだが、これはいかがなものかと思う。そもそもこれ風刺か? ただの誹謗中傷ではないのか。表現の自由は戦って勝ち取るものであるというのがフランス流の正義なのかも知れないが、それを上から目線でフランスの外に押しつけるのは何故なのだ。

 当然の如くエルドアン大統領は激怒しているだろう。彼自身の言葉はまだないが、トルコ大統領府通信局の局長がTwitterに、

「風刺画の出版によって、異文化差別と憎悪を広めようとする、この極めて不快な試みを非難する」

「エマニュエル・マクロン仏大統領の反イスラム政策は、実を結んでいる! シャルリー・エブド紙は風刺画と称して、わが国の大統領を描いたとされる卑劣さあふれる絵を掲載した」(以上AFP)

 と投稿している。またトルコ大統領府は28日、

「われわれはこの風刺画に対して必要な法的および外交的措置を取ることを国民に約束する」(AFP)

と表明した。

 これどうするんだろうな、フランス。ちょっとしたボタンの掛け違いなんてレベルの言い訳などすでに通用しなくなってしまった。もう後戻りはできないだろう。口先だけで謝罪してもだれも納得してくれないだろうから。それに下手に謝罪すれば、今度はフランス国内からの突き上げが起こるしな。マクロン大統領は身動きが取れないのではないか。

 イランの最高指導者ハメネイ師は公式ウェブサイトで、フランスの若者にメッセージを送っている。

「なぜ表現の自由の名目で預言者への侮辱を支持するのかと大統領に問いなさい。表現の自由は、特に神聖な人物に対する侮辱を意図したものなのか?」

「この愚行は、彼を選んだ有権者の判断力に対する侮辱ではないか?」(以上AFP)

 そして、ホロコーストに疑問を投げ掛けることが犯罪とされる一方、預言者ムハンマドへの侮辱が許されるのは何故なのかと問うているという。イランが裏でやっている事を別の話として見れば、この言葉そのものは至極真っ当であると思う。多くのイスラム教徒が首肯するだろう。その中にはテロリストも当然いる。何で好き好んでテロリストを招き寄せるような真似をするのか、まったく理解に苦しむところ。

 表現の自由は守られるべきだ。この事は大前提である。だがその自由を無制限に振り回せば暴力となる。すべての人は自由に表現をする権利と、表現の暴力から身を守る権利を共に持っている。それは侵害してはならないと考える次第。


 本日はこんなところで。大ネタ1つというのもたまには良い。昨日は1000文字ほど書けた。でも今日はどうだろう。まあ、あまり書けなくてもいつもの事である。明日は病院に行かねばならんのだが、ここは更新できるだろうか。はてさて。

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