第302話 2020/8/11 遡及とか

 本日は8時起き。まあまあ調子は良いのではないか。変な夢は見なかったし、体もたいして重くはない。ただ暑いが。冷房をかけっぱなしにしていても、外部の暑さは伝わってくる。天気予報を確認すれば尚の事。早く秋になってくれないかなあと思うのだが、なってくれないのだよなあ。こればかりは努力でも根性でもどうしようもない。元々ないんだけどな。


 泥棒や殺人が罪に問われない国はないだろう。これは誰がどうみても「悪い事」であり、それを犯した者には罰が与えられるべきである。しかし罰を与えるためには、まず法が必要だ。法律の条文に、「この行為はこれこれこういう理由により犯罪であり、こういった内容の罰則を科す」と事前に書かれていなくてはならない。法律に基づかずに罰を与えれば、それは単なるリンチだからだ。

 このように「人の行為について罪を問い、罰を与えるには、それがなされるより以前に規定された法律が必要である」という考え方を罪刑法定主義と言い、これを言い換えれば「人の行為より後に作られた法律(事後法)によって、その行為を罰する(遡及処罰)事は罪刑法定主義に反する」という事になる。

 罪刑法定主義と、それに基づく事後法の禁止、遡及処罰の禁止は、法治国家の大原則である。普通の国ならばこれは基本守られる。普通の国家ならば。

 10日夜、香港の民主活動家周庭(アグネス・チョウ)氏ら10人が、香港国家安全法違反の容疑で逮捕された。分離主義を煽動したという名目らしいが、これは国家安全法制定以前の行為に対する措置である疑いが強い。つまり事後法による遡及処罰である。もちろん中国政府や香港政府はそれを認めないだろう。国家安全法制定以後に何かをしたと主張するはずだ。そのために存在しない行為を作り出し、存在しない証拠を用意するのではないか。

 中国は自らを法治国家であると主張しているそうだが、実際はあらゆる法律の上に共産党が存在する歪な国家である。共産党を動かす習近平指導部の意向は、憲法も罪刑法定主義も凌駕する。その行動に法治国家としての良識は期待できない。日本やアメリカの警察も決して完全ではないが、中国の警察に捕まるというのは、それ以上に悲惨な未来が待っている可能性が高い。

 これは一人の人間の権利問題ではない。単なる内政問題でもない。すべての法治国家と民主主義に対する挑戦である。この問題を放置するのは世界に毒を撒く行為に加担するに等しい。もはや中国に気を遣って良い段階は過ぎているのだ。日本政府は明確な意志表示をすべきではないか。

 と、首相官邸にはメッセージを送っておいたが、果たして期待できるかどうか。


 アメリカのアザー厚生長官は10日、台湾の台北市内の総統府において蔡英文総統と会談した。アメリカが1979年に台湾と断交して以来、訪台した政府要人としては最高クラスの人物である。

 これに対して中国政府は外務省副報道官の発言として、

「中国は米台の公式な往来に一貫して断固反対している」

「台湾との公式往来や接触、米台関係の実質的な格上げを止めるよう促す」(以上AFP)

 と反発、10日午前には中国軍(人民解放軍)の戦闘機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に入り、台湾軍機に追い返される事案もあった。この展開をボーッと眺めていて良いのか。日本にできる事はまだまだあるはずだ。率先して動いていただきたいと心底願う。


 台湾と言えば、先般亡くなった李登輝元総統の追悼のため、森喜朗元首相を団長とする弔問団が9日チャーター機で台湾を訪れた。弔問の前には蔡英文総統と会談、安倍首相の事実上の名代として訪台した事を打ち明けた森氏に、総統が謝意を述べた。

 この件については安倍首相を評価すべきである。もちろんまだ物足りない部分はあるが、現状いますぐできる事といえば、これくらいが限界だったろう。本当なら安倍首相本人が訪台するくらいやれば日本国内も世界も見る目が変わるのだろうけれど、そう簡単な話でもあるまい。

 森氏の言によれば、日本の国会議員間で党派を超えて「どこの国よりも一番早く、外国の弔問客として日本の政治家が行くべき」(中央社フォーカス台湾)との声が上がっていたという。そういう声を上げられる人が国会議員の中に居てくれて、本当に良かったと思うところ。


 近い台湾についてはそれなりに動ける日本政府も、遠いモーリシャスにはどうにも腰が重い。座礁した貨物船「わかしお」の燃料が漏出している問題で、現地警察は9日、「わかしお」に立ち入り捜査を行う方針を明らかにした。日誌など証拠を回収する模様。商船三井は「船舶付近にオイルフェンスを設置する試みは高波の影響で成功しなかった」(AFP)と発表、重油とディーゼル燃料をヘリコプターで陸地に運んでいるそうだが、運んだ後はどう処理するのだろうな。埋めて何とかなる物ではないぞ。

 と思っていたら、そこに名乗りを上げたのがフランスである。何でいきなりフランスが、と思う向きもあるだろうが、モーリシャスのすぐ南西には同じくらいの大きさの島がある。これがフランスの海外県であるレユニオン島、そういう意味では近所なのだ。マクロン大統領は8日、Twitterで「生物多様性が危機にひんしており、迅速な行動が求められる。フランスが付いている」(時事通信)と支援を表明している。もう完全にフランスが白馬の騎士であり、こうなれば日本に残された立場は悪者しかない。さっさと意志表示をすれば良かったのに、政府がトロいせいで要らぬ悪評を買ってしまうかも知れない。

 いかに民間業者の失態であっても、人道的見地に立てば日本政府にできる事はあったはずだ。何と言うか、下手だなあと思うところ。


 硝酸アンモニウムの大爆発に見舞われたレバノンであるが、ディアブ首相は10日、「この爆発の責任を取るべきだという国民の意思を受け入れる」(NHK)として内閣の総辞職を発表した。

 ディアブ政権は今年の1月に発足したばかり。責任がないとは言わないものの、どっちかと言えば責任者を追求すべき立場だったはず。これで責任の所在が有耶無耶になったら、国民にとって不幸だろう。ただ理屈としてそうであっても、国民感情的に職に留まる事が許される雰囲気ではなかったのだろうな。

 この先レバノンはどうなるのか。普通に考えれば大統領が新首相を指名して、首相が組閣して、となるはずなのだが、大統領が信用を失っている中、国民がその新首相を受け入れる可能性がどれほどあるか不明である。

 宗教によって役職と権力が分割されている現在の体制そのものを変革する必要に迫られているのかも知れない。だがそれをやると、宗教間抗争が激しくなるのは目に見えている。幸福な未来がどこにも見えない。どうにかできないものか。


 昨日は『魔獣奉賛士』が1300文字ほど書けた。休んだ甲斐はあったようだ。もうちょっと頑張りたかったのだが、まあ仕方ない。今日も何とか頑張りたい。

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