第280話 2020/7/20 設定とか

 本日は4時起き。まる4時間ほどしか眠っていない。昨日は結構眠れたから安心していたのだが、また元通りだ。うーん、眠い。しかし眠いから横になれば眠れるのかと言えば、そうではないからな。まったくややこしい体である。眠気が消えないと頭がボケるし、やる気が起きないし、本も読めないしで、ボーッと時間を過ごすしかない。人はこうやっていろんな物を失っていくのだろうか。


 設定って難しい。シンプルさを極めるなら、善の主人公に対し悪の敵をぶつける二極対立がもっとも簡単だしわかりやすい。ただしわかりやすい分、話が広がらないという問題はあるが。

 これをもう少しリアル方向に振ると、主人公側が正義を主張するのに対し、敵側も別の正義を主張する二項対立へと変化する。機動戦士ガンダムなどが典型だな。これは登場人物に奥行きを与えられるし、話も広げやすいしでメリットも多い。長編を書くなら一番抑えておきたいパターンかも知れない。ただ複雑になった分、どうやって話を収拾するのかが難しい。敵の親玉をやっつけて終わりにはできないという縛りが発生するからだ。二項対立によって生まれた諸問題について、一応の答を提示しなくてはならない。

 ここまではフィクションの設定を作る上での基礎と言える。この基礎の上に、より複雑な設定を作る作家も多い。定番としては主人公側も敵側も一枚岩ではないというのがある。裏切り者が出る事によってより複雑なドラマが生まれるのだ。あるいは二項より多い、三項以上の対立にする方法もある。この両方を取り入れているのが、たとえば三国志であり銀河英雄伝説である。Zガンダムもそうか。こうなると、話のスケールが非常に大きくなる。もちろん、それだけ収拾するのが困難になるし、最終的にはどこかが一人勝ちするか、全滅エンドになりがちだ。迂闊に手を出すと痛い目を見る事もある。

 二極対立、二項対立、三項以上の対立と、より複雑化すればするほど現実味を帯びて行くが、物語のリアリズムとはいかに現実に近いかではない。その世界における「正しさ」をいかに正しく描けるかである。雨が下から上に向かって降る惑星には、その惑星なりの「リアル」がある。シンプルな二極対立の設定だからリアルな物語が書けない訳ではない事は理解しておく必要があるだろう。

 とは言え、我々の周囲にある「現実」の設定はさらに複雑で不可解だ。フィクションの世界でこのリアルさを出すのは、到底無理かも知れない。

 1948年、中東に新しくユダヤ人国家が誕生した。それがイスラエルである。しかし当たり前の話だが、そこは誰も人の住まない場所ではなかった。アラブ人やパレスチナ人の住む場所を勝手に区切り、住民を追い出して国家を建設したのだ。もちろんユダヤ人からすれば、「ここは元々ユダヤ人が暮らしていた場所だ」という理屈があるのだが、だからそれ以外の民族を追い出して良いという話にはならない。そもそもの設定段階で無理がある国だと言える。

 その結果として、ガザ地区やヨルダン川西岸地区に押し込められたパレスチナ人は、イスラエルに抑圧される人々という設定となった。PLOがあれだけ世界中でテロの嵐を吹き荒れさせても「パレスチナ人は全員テロリストだ」という話にならなかったのは、この設定があればこそだったろう。

 さて、イスラエルはパレスチナ人を自治区に押し込めたのだが、それで満足した訳ではない。自治区内にユダヤ人を入植――つまり街を作り、人を住まわせ、イスラエルの法律を適用する――させて、その面積を拡大し続けた。いまのネタニヤフ首相はパレスチナ自治区を最終的にはイスラエル領土に併合しようという野望を隠そうともしない。「イスラエルに追い詰められた可哀想なパレスチナ人」という設定はますます強固なものとなっている。

 しかし、イスラエル国内の報道では、パレスチナ人の中にも自治区がイスラエルに併合される事を望む声があるという。そしてそれを口にした人々がパレスチナの当局に逮捕されているのだと。

 当然、この報道自体がイスラエルのプロパガンダである可能性は高い。事実パレスチナの政府も警察も、誰も逮捕していないとAFPの取材に答えている。だが、ならばパレスチナ人の中にイスラエルに支配されてもいいと考える人がいないのかと言えば、必ずしもそうは言い切れまい。

 人間はイロイロである。それぞれの人々が各自様々な設定を持ち、物語を持っている。その無数の設定が組み合わされたのが現実の世界だ。統一感など最初から存在しない。「イスラエルはこんな国」「パレスチナ人はこんな人々」などという設定が存在しているかの如く考えるのが本来間違っているのだ。

 二項対立・三項対立どころではない。何千万、何億という対立が世界を成り立たせ、動かしている。人間の頭でそれを正確に把握し、理解するのはたぶん無理だろう。我々には現実の世界を可能な限り簡略化・パターン化して理解する事しかできない。設定に基づいて描かれた創作作品が、その一助になれば幸いだと思うところ。


 設定と言えば、これもまたややこしい設定なのだが、平昌オリンピックにフィギュアスケートのオーストラリア代表として出場したロシア人の元選手が、モスクワの建物の6階から投身自殺をしたらしい。

 もしかしたら国民性なのかも知れない。文化が関係しているのかも知れないし、遺伝的な影響がある可能性もなくはない。ただそれにしても、ロシアでは何か問題が起きると、やたらと転落死する人が出て来るイメージがある。プーチン大統領に近しい民間軍事会社の事を報道したジャーナリストも転落死したし、新型コロナの感染拡大期に医療体制の不備を訴えた医師も転落死した。偶然だろうか。

 ロシアのフィギュアスケート界に問題があったとは報じられていないが、果たして何もないのだろうか。まあ死人に口なしである。真実はわからない。


 ドイツには「黒い森(シュヴァルツヴァルト)」と呼ばれる森林地帯があるが、ここに潜伏し5日間逃亡を続けた男が17日に逮捕された。弓矢で武装し、警官の銃を奪って逃げたこの男を、メディアは「黒い森のランボー」と書き立てたそうだ。まったくどこの国も変わらんな。当たり前だがこの男、別にベトナム帰還兵ではないし、特殊部隊に所属していた訳でもない。弓矢でヘリコプターを撃墜したりもしていない。そんなものである。


 タイは立憲君主制の王国であるが、不敬罪が幅を利かせている。政権が不敬罪を恣意的に運用し、国民を抑え付けているのだ。そんなタイで18日、若者を中心とした数千人規模のデモが行われ、不敬罪の関連法の撤廃を求めたという。

 これは非常に勇気の要る行為であったろうと思う。下手をすれば逮捕されるだけでは済まないからな。20年くらい牢屋にぶち込まれるかも知れない。それがあり得る国なのだ。彼らは香港のデモに影響を受けたようだが、香港と同じような結果にはなって欲しくないものである。


 香港と言えば、香港市民の保護を目指す超党派の国会議員連盟が29日に発足する模様。もちろん、日本の話である。自民党の中谷元防衛相などが参加するそうだ。こういう動きが出て来るのは良い事だと思う。政府は嫌がるだろうが。

 具体的には香港市民がビザなしで日本に滞在できる期間を延長したり、就労ビザの発給条件を緩和したりするなどを政府に働きかけ、香港市民の人権が侵害されたときには政府や国会で調査し、関与した人物への資産凍結など制裁を科す事を可能にするための議員立法の制定を目指すらしい。

 まあ、あえて嫌な言い方をすれば、こういうのは中国に対する当てつけである。実効性が伴うかどうかは二の次だ。やる事に意義がある。さっさと旗色を鮮明にするよう政府のケツを叩いてもらいたいところ。


 本日はこんなところで。昨日は『魔獣奉賛士』を更新したかったのだが、やめた。ビックリするほど何も思いつかなかった。まあ、こういう事もあるわな。新作は1000文字書けているのだから、それほど調子が悪かった訳ではないのだろうが、頭をどうひねっても出て来ないのだから仕方ない。やるだけやってダメだったら、潔く諦めるしかあるまい。今日は何か出て来てくれるといいのだけどな。

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