第2話 ゾンビ挨拶する

「あなたが今日から入社するゾンビさんですか?」

「あ"~」


主人公(ゾンビ)がゾンビタワーの入り口を入ると、受付に待ち構えていた一人の女性が話しかけてきた。


彼女は人間で、淡いピンク色のスーツを可憐に着こなしている。

どんなゾンビにも、にこやかな笑顔を浮かべ、腐臭にイヤな顔ひとつせず、丁寧に接してくれた。


これぞ社会人の鏡じゃないだろうか、ぜひ見習いたいものだ。


ゾンビは濁った瞳とぎこちない動作で、お辞儀らしき動きをする。

彼女もお手本のようなお辞儀を返してくれた。


「私はこの会社でマネージャーをしております、大和(やまと)撫子(なでしこ)と申します。とっても素敵な長い腕ですね!」

「あ"ぁ"~」

「スーツもとってもお似合いですよ」

「あ"ぁ"~」


この主人公(ゾンビ)は、大和撫子が褒めたとおり、腕がラピュ○のロボットほど長く、そこをかわれてゾンビタワーに入社が叶ったのである。


ゾンビは褒められた事に照れて、緩慢な動きで体を揺らした。

大和撫子の軽やかな笑い声と、ゾンビの地を揺らすような呻き声とが受付に響き渡る。


「では、社内を案内するので。是非ついてきてください」

「あ"ぁ"ぁ"あ"~!」


「こちらへどうぞ」とエレベーターに促されたゾンビは、センサーに認識されずに扉に挟まってしまった。

その拍子に、血やよくわからん液体を噴き出しエレベーターを汚してしまう。


「あ"ぁ"……」


入社早々から、社内を汚す大失態だ。

ゾンビの呻き声が少し弱々しくこぼれたのを聞き、大和撫子さんは笑顔で『開』ボタンを押してくれた。


「さすがフレッシュな新人社員は元気が良いですね。これは明日からも楽しみです!」

「あ"ぁ"~」


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