第16話 僕と幼馴染と願いの結晶 中編

〖本当に好きな人―03―〗


あぁ…………頭がくらくらする。

まともに考えることすら出来ない。

ここは、どこだっけ?

何をしてたんだ、僕は?

とりあえず、家を飛び出して…………。

そうだ、古びた工場に入ったんだ。

なんの為に……………?

あぁ、そりゃ勿論――――――――――。

――――――――――ん?

誰の為だっけ?

僕は、誰の為に走って、闘ったんだ?

なん……………で?

なんでだ?



――――――何も、思い出せない――――――。




〖本当に好きな人―03.5―〗


「影里さん、朝ご飯です。どうぞ」

「あぁ………ありがとうございます……」

朝食が運ばれてきた。トレーの上には栄養バランスのとれた料理が並べられている。

僕は今、何故か入院している。

理由を聞いたら、外を歩いていたら急に意識を失ったらしい。僕をここに連れてきてくれた人がそう言っていたそうだ。

その人に、感謝しないとな……………。

でも、誰がだなんて分からない。

…………とりあえず、朝食食べるか………。




〖本当に好きな人―04―〗


数日後、僕はすぐに良くなって病院を退院する事ができた。

家に帰ると、親が泣いていた。何故だ?

両親の名前は覚えている。

なんでだ?

まぁ、いいや。

部屋に戻ると、机の上に立て掛けてある写真を見つけた。

僕と、1人の少女。

どこか見た事はある気がする。

でも、全く思い出せない。

赤の他人なのか?

でも、赤の他人の写真なんか飾らないよな………?

「………遊園地か………僕、この子と遊園地に行ったのか?いつ?」

なんなんだよ、この子は……………。

僕も、めっちゃ笑ってるじゃないか…………。

凄い…………僕、楽しそうだな…………。

「………飾っておくのもなんだし、ポケットにでも入れておくか………」

制服の胸ポケットに写真をいれる。なんか、凄く大事な写真な気がした。

僕を形作っているかのような写真…………。

そのまま、今日は寝ることにした。




〖本当に好きな人―05―〗


日付は10月1日。もう、10月に入った。

病院で2週間ほど過ごした為9月はあっという間な気がした。

「………学校、久しぶりだな………」

教室のドアを開けると…………。

「………あ、しゅー君っ!!」

「おう………時坂か。おはよ…………おわっ!?」

「…………しゅー君……会いたかったよ……?」

いきなり時坂が抱きついてきた。

…………周りの男子からの視線が痛い………。

「…………とりあえず、落ち着け時坂………」

「……………やだ」

「…………え?」

「私はもう、しゅー君と離れたくないのっ!!」

ど、どうしたんだ、時坂は……………?

「しゅー君が病院に入ったって聞いてどれだけ心配したか………責任、とってよね?」

「………すまない、入院する事になったのは僕のミスだ。これからは、気をつけるよ」

そして、自分の席を見回すが…………どこだ?

そうか………席替えしたのか………。

あ……………そうだ、時坂に聞かなきゃ。


「なぁ、時坂…………この子、知ってるか?」



「あぁ……………天咲夢乃ちゃんね………」


その名前を聞いて、僕は何故か胸が痛くなった。


夢乃…………?


聞き覚えがないな…………。


「ほら、あそこにいる……………」


よし………………。








「天咲さん………………」


「……………なにかな?」


「僕の事、知ってますか?」


「………………うん、知ってるよ」


「……………僕、記憶無くしたらしいんです」


「……………でも、無くした記憶って天咲夢乃さん、あなたのだけなんです」


「………………うん」


僕は胸ポケットから、1枚の写真をとる。


「これ……僕と写ってる人……天咲さんですか?」


その写真を見せた途端、天咲さんは顔を伏せた。


何か、言っている。


「…………め………ん、………さ……ぃ……」


「……………ん?」


「………………ごめんなさい……っ!」


「…………えっ!?ちょっ!?」


天咲さんは、口を抑えながら、走ってどこかへ行ってしまった。


でも、僕は確かに見た。














天咲夢乃は、泣いていた――――――――――。










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