本好きが強い異世界バトル

たkる@小説垢

第1話 ペンは剣よりも物理的に強い

「ペンは剣よりも強し」ということわざがあるけれど、それはあくまで比喩的な話だと思っていた。


でもこの世界では、ペンは本当に剣よりも強かった。


***


「だから水を描くのにバシャって擬音しか出てこないって、あんたの感性どうなってんのよ!今までどんな本読んできたわけ!?」


「いや、でも。いきなり描けと言われても難しいし・・」


私・いつきは目の前に立ったいおりに向かって苦言を呈する。

この世界では、魔法が存在する。


正確には、精霊の力が使用者の思いを具現化するとか、そんな仕組みらしいけど、詳しいことはよくわからない。


でもこの世界では、ペンで描いた炎が現実のものとなるし、水辺で水を操ることもできる。


そしてその能力は使用者の表現力による、とのこと。

だからこの世界での魔力の強さは表現力の良し悪し、概ね読書量に比例している。


私は割とすぐにイメージができたんだけど、弟のいおりは全然ダメ。普段からろくに本も読まずにいたことがこの世界であだになっているというわけ。


だから私が教えているわけなんだけど・・・


「ねーちゃんの説明は、なんか感覚的というか、文学的でわかりにくいんだよなあ。”流れる小川のせせらぎの一縷を掬って融和させる”ってもう全然意味わからないんだけど!もっと論理的に説明してくれないと・・」


「考えるんじゃなくて、感じるの!頭でっかちな考えを捨てなさい」


「そんな無茶な」


私はお風呂での水を手鉄砲で飛ばすようなイメージで、いおりに向けて水を飛ばす水鉄砲の絵を描く。


すると、小さな水球がいおり目がけて飛んでいく


「いたっ!」


そして水球はいおりに当たって弾ける。


・・・うん、イメージ通り。


「とにかく、この世界では魔法の力を使えるとかなり融通が効くんだから、いおりも早く魔法を覚えなさい!私一人の稼ぎじゃあ、家賃を払うのもギリギリなんだから」


こんなんで姉弟2人、この身寄りもない異世界で生きていけるのか。本当に不安。はぁ、どうしたものやら。私が何とかするしかないか・・・。

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