無垢なる首飾り
食堂、晩御飯を終えて私達は談笑をしていた。
「騙されたよ。」
「騙されたな。」
「やっぱり!!」
宿に戻ってセリアちゃん達一家に今日あった事を話した。
道具街であった事に目を丸くして、晩御飯なのに一向に脱ごうとしないポンチョの正体に腰を抜かして、最後に買った首飾りについて言ったときにそう言われた。
自分でも首飾りを買った時の事を説明しながら違和感を覚えてはいた。
何故こんなのを買ったんだろう?
なんであんな胡散臭いセールストークで20万も払う気になったんだろう?
何故この首飾りについて詳しい用途や効果を訊かなかったんだろう?
何故怪しい露店商から買おうとしたんだろう?
何よりその時の事があやふやで、夢の中か、他の人が体験していたような、実感の無さがあった。 そしてなにより、一番不思議な事は……………
「どんなやつだったんだ?」
「どんなやつだったんだい!?」
「それが………覚えて無いんです。思い出そうとしてもそこだけ靄がかかって、肝心な事たけが思い出せないんです。」
全部は忘れてない。だから説明は出来ていた。
でも、そこだけ。そこだけ思い出せないの!!
身長とか体重とか手足の形とか!!何時もなら絶対見るのに全然思い出せないの!!
「テミスちゃんはどうだい?何か覚えていないかい?」
おじさんの問いに対してテミスちゃんは黙って首を振る。
「ごめんなさい。全然覚えてない……………………ごめんなさい。」
蚊の鳴くような声で謝る。
俯いているけど、多分涙目だ。
如何しよう?
テミスちゃんを誘拐犯から奪還した時みたいにローラー作戦を仕掛けたい。
けど、そもそも探す対象が解らなければ探す意味が無い!
「ま!良いよテミスちゃん!これは所謂勉強代ってヤツにしよう!
これからの冒険で騙される可能性を私達は考えられた訳だし、幸い破産はしていない。いい勉強!
あとで詐欺師には地獄を見せるとして……今日はお風呂に入って寝て、明日騙された分以上に稼げば良いわ!」
そう言ってテミスちゃんをちょっと強引にお風呂に連れ出した。
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