最強装備
私は老人が歩いていくのを見た後、職人の一人に耳打ちした。
「あれって誰?」
「知らんのか?この道具街最高の職人、デリードさんだ。
鍛冶だけじゃない。この街の最高の逸品を見たけりゃあの人の工房に行けばいいと言っても言い過ぎじゃ無い。
まぁ、この街以上の職人街なんてこの国にゃ無いから………」
「実際の所、この国最高の職人さん?」
「あぁ。ただ、作る物こそ特級だが、本人が認めた相手にしかそれを渡さないから金じゃ買えない。
あの人の作ったものを見たのは、オレは初めてだ。」
他の職人もそれが聞こえて来たのか話に加わって来た。
「それだけじゃない。あの赤いの、何だか解るか?」
「…………布じゃないよね?動物の………革?」
質感からしてそんな感じだけど、じゃぁ何かと訊かれると、私の知る生き物の革にあんな鮮やかな赤で滑らかなものは存在しない。
「あぁ、ドラゴンの革だ。
しかもただのドラゴンじゃない。あの鮮やかさ、しなやかさ、滑らかさ。多分アレは『ロード』の革だ。」
「『ロード』?」
「正式名『グリーンドラゴン』
名前からお察しできるだろうが、同じドラゴンを喰らって生き、その血を浴びて赤くなるっていう、トンでもドラゴンだ。」
「その中でも特に赤が鮮やかな…つまり一番強くて狂暴な奴が『ロード』と呼ばれる。
存在は特級の災害。だが、もし材料になるなら、特級品間違い無しだ。
あのポンチョ。間違い無くそこらの鎧なんか目じゃねぇくらい強い。」
「しかも、デリードさんのお手製だ。その素材をこれ以上無い、最高の仕上がりにしてるだろう。」
「お前見たか?革をポンチョにしたのに縫製の跡が全然見えねぇ。」
「糸も多分『ワールドネスト』のキングアラクネ辺りの糸でも使ってんだろ?」
「あれなら、王都が消し飛ぶ攻撃が来たとしてもあの娘だけは無傷で居るだろうぜ………。」
「面白いモン見せて貰った!」
「あぁ、あのデリードさんの手仕事が見られたんだ!」
「オゥお前ら!なんかこの娘に持たせられるもの………」
「鈴は如何だ?」
「おぅ!良いんじゃねぇの⁉」
職人達が目をキラキラさせてそれを私に向ける。
「オゥ嬢ちゃん。これ持ってきな!」
チリン
「これ………鈴?」
手渡されたのは小さな鈴。
表面に細かい装飾がされた金色の鈴。音が綺麗…………。
「これは『職人の鈴』ってもんだ。」「職人達から信頼されたヤツだけが渡して貰える鈴だ。」「もしなんか面倒なモンを職人にこさえて欲しいなら。」「職人の近くで鳴らすか見せるかしてみな。」「モグリでなけりゃぁ最高の仕事を」「お前さんに見せてやるさ。」
リーン
良い鈴の音。
本当に良い音がした。
「ありがとね。じゃぁ、私も行って来る。」
「あぁ」「気を付けて」「なぁ」「羨ましいなぁ……俺も行きて―‼」
職人軍団の作った道を歩き、テミスちゃん達を追いかけて行った。
リーン
歩く音と共に鈴のキレイな音が響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます