『道具街災厄の破壊』
その日、道具街は混沌と狂騒、それと執念の炎その他諸々のロクでも無い何かに包まれた。
バキン!
金属がぶつかり、砕ける音が聞こえる。
ギャー!
同時にそれと対応するようにして悲鳴も響き渡る。
ゴン!
さっきとは違う金属が何かにぶつかり砕ける音が聞こえる。
ギエェェェェ!
またしても別の声がその音にシンクロして悲鳴を上げる。
『道具街災厄の破壊』
今日起こった事件の名である。
これは、王都最高の職人達の集まる道具街で職人達に語り継がれる『炎獄事件』・『王都殲滅未遂』に並ぶ三大事件の一つとなった。
中でもこの件は『最悪の経済被害』という意味で極悪であり、50億エルという途方も無い額が一日にして瓦礫と化した。
「クッソー!次はコイツで如何だ!」
屈強な鍛冶職人が見事な装飾の施された戦槌を担いでやって来る。
その先にはこの場に相応しくない街娘。
「喰らえやぁ!」
男は迷う事無く街娘に戦槌を振り上げ、叩き下ろす。
ガチィン!
男は振り下ろした線槌が弾かれた反動で後ろに吹っ飛んでいった。
その手に持っていた戦槌は見事に砕かれていた。
「だから言ったでしょ。私はこれが有るから良いって。」
街娘こと我らがヒロイン(?)八坂八華がバールを振り回してそう言った。
八華が不用意な発言をした結果、職人達のプライドが燃え上がり、彼らは何を考えたか?
自分の工房から一番良い武器を取って来た。
そして八華の武器を見せる様に要求し、それと自分の自慢の武器をぶつけ合って壊し合おうと提案してきたのだ。
自身の最も良い武器をぶつけ、バールを叩き壊し、前言をブッタ斬りつつお客にしようと考えていたのだろうが…………。
先程から八華の足元には壊れた武器の残骸が増えるばかり。
まぁ、そう言う事だ。
「それよりも!この辺でこの子に似合う防具とか装飾品って無い⁉
私はそれを探しに来たんだけど!因みに上限は60万エル!」
道端に落ちていた木箱に乗っかり、テミスちゃんを肩車してゾロゾロ道を覆う様にやって来る職人の群れにそう言った。
「おういいぜ!」
「それも同時に片付けたらぁ!」
「武器はあの娘に!そのちっちゃい嬢ちゃんには最高の防具を!」
「俺様の武器を見やがれ!」「ほざけワシのがアレを叩き折るんじゃぁ!」
「ホラホラホラ!スクラップにしたらぁ!」
「あの……お姉ちゃん?これ、不味くない?」
テミスちゃんが引きつったような顔で私にそう訊いて来た。
「ダイジョブダイジョーブ。
個々の皆プロみたいだし、多分出し惜しみ無しでやってくれる筈よ。」
「お姉ちゃん?私が言っているのはそう言う事じゃ無くて……………」
「オラァ!」
バキン!
テミスの叫びは無慈悲に砕かれる武器の最後の断末魔に掻き消されていった。
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