スライム退治のたった一つの冴えた殺り方


 リエさんの言葉が頭をぎる。というか頭の中にミニリエさんが居て説教される。

 「スライムダカラッテユダンシチャダメ!!!」

 「解りました。解りましたから止めて下さい。」

 リエさんのアドバイスと書類の甲斐あって王都を囲む巨大な壁の門番さんに怪しまれる事は無く郊外に出る事に成功した。


 王城で暴れたのはセーラー服の異世界から来た可憐な少女。

 でも、今の私は何処からどう見ても可憐な町娘。


 「変装状態では滅多な事では八坂さんだと解りません。クエストの時は町娘スタイルの方が良いかもしれません。」

 アイデンティティー的にはセーラーの方が良いけど、流石に背に腹は変えられない。

 という訳で、可憐な町娘と可憐な少女はスライムを探していた。




 のだが、

 「いっぱーい。」

 「みたいね。」

 王都の壁から少し歩いた所ですぐさま見つかった。

 スライムは割と臆病な性格で好戦的ではない。しかも、あのゲル状の体であるが故に岩や木の隙間によく隠れる。

 要は見つかり辛い………………………筈なのだが。


 プヨ

  プヨプヨ?

             プヨプヨプヨプヨ!

  プププププーヨプーヨ!        ププポ?

    プププププププププププヨ?         ポヨポヨ?

     ププ!      プププププププププププププポヨン

                            ポヨンポヨンポーン


 そこら中の草むらにプヨプヨゲル状の塊が跳ね回っていた。

 ギルドの依頼通り、よりどりみどりのバイキングorビュッフェスタイルだった。

 「ナニコレ?」

 「凄いね。」

 そこらの草むらを跳ね回るスライムの狩りを始めた。



 「粉!」

 パチーン!

 「砕ッ!」

 パァン!

 「投ッ!」

 パチャン!

 スライムが瞬く間に弾けていく。

 クエストの討伐証明はスライムの核。私がそこら中のスライムを投げつけて地面に叩き付けて倒した所をテミスちゃんが核を回収して麻袋に放り込む。

 この辺に居るウィーケストスライムは人間の頭ほどの大きさの水色のゲル。

 特徴はスライムの中では特に弱く、打撃でも倒せる。

 動きは鈍いので簡単に捕まえ、叩き付けられる。

 パァン!

 握りつぶしてもイケる。

 「はい、テミスちゃん。」

 手の中に残った核をシェリーちゃんに渡す。

 「お姉ちゃん、やっぱり凄いね。」

 「ふふーん。私って故郷でも強い方だったんだから。」

 ただ、このスライムって生き物は結構トリッキー。

 なにせ目が無い。しかも関節が無い!

 打撃は出来ても関節技が使えない。

 しかも目が無いし関節も無いから動きの予想が出来ない!

 これがもし、手強いスライムだったらこうはいかない。

 バチーン!

 投スライムでスライムを仕留める。

 「気を付けなくっちゃ………………ネッ!」

 異世界の生き物は私の予想を超えている。

 油断したらお仕舞なのは私だけじゃない。気を付けなくっちゃ。

 パァン!

 スライムが爆発するように弾け飛ぶ音が木霊した。

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